第2話

 シーファは夢にうなされて目を覚ました。

 チャオシーケンの臭い息がもろに顔にかかってくる。彼女は咳き込んで、顔をそむけた。揺れる視界を巡らせたが、辺りは闇に包まれ、寝台は異様に堅く、冷たかった。

 彼女は胃の腑がヒヤリとする。体を起こして辺りを確かめたいのに、チャオシーケンが尻にしがみつき、懸命に腰を振るって一向に離してくれそうにない。

 彼女は手探りでまわりの様子を確かめる。

 岩の粗く冷たい感触だけが指先に伝わってくる。

 何が起こったのか、彼女は悟り、魂が凍えていくのがわかった。

 そして、シクシクと泣きはじめた。

 チャオシーケンがハガハガと鼻を鳴らし、

「な、な、泣いて?」

 汚い舌で彼女の涙をなめとろうとするので、思わず手のひらでかれの顔をぶった。

 事態は変わってしまったのだ。

 宮廷の寝所でなら、吐きたくなっても彼女はかれに顔をなめさせただろう。

 彼女はかれの体のしたから抜け出すと、壁づたいにやみくもに暗闇の中をさまよった。

 冷たい土と岩が自分の行く手をことごとく遮っていた。

 彼女は大声で泣きわめいた。

 しかし、声はこだまになって返ってくるだけだった。

 自分は生き埋めにされたのだ。

 皇族の内情の巻き添えを食ったのだ。

 こんなことなら、いっそ死んでしまえばよかった。

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