#64  ひとやすみ

 青い絨毯は、あれからしばらく経って消滅した。

 どのくらい時間がかかったか分からない。私はただひたすら、セルリアンに銃口を向けてレーザーを連射していた。

 他のフレンズ達も、時間を忘れてセルリアンを倒すことだけを考えていたのだろう。気がついたらセルリアンは全滅していて、日も暮れていた。

 私は銃をすぐに博士に返した。このまま持っていると物騒で仕方がない。後で博士に聞いた話だが、あの銃から発射されるレーザーにはサンドスターを消滅させる物質が含まれているらしく、レーザーに当たったフレンズもセルリアンと同様、サンドスターを失い、元の動物の姿に戻るか消滅してしまうのだという。

 サンドスターを失ったフレンズは、フレンズの頃の記憶を失ってしまう。それは逆でも同様で、動物がフレンズ化した瞬間、動物だった時の記憶はほとんどなくなってしまうらしい。ただ、前にアリツカゲラさんが「少しだけ覚えている」と言っていたので、完全に失われる訳ではないのだろう。

 

 博士は私をすぐにログハウスまで送ってくれた。それも、博士達の住むログハウスではなく、アリツカゲラさんのいるログハウスにだ。先日、シャワーを浴びた後の私の機嫌が良かった事を覚えていてくれたのだろうか。

 博士達は、セルリアンが大量発生した事態についてしばらく話し合うそうだ。多分、話し合いを博士のログハウスでするのだろう。

 

「お疲れ様でした〜。大変だったでしょう〜?」

 アリツカゲラさんの暖かい出迎えに、私はまたお世話になります、と頭を下げた。アリツカゲラさんは、そんなにかしこまらないで下さいよ〜、と、手を横に振る。

「あ、あの、帰ってきて早々申し訳ないんですけど、お風呂に入っても…?」

「あ〜、どうぞどうぞ〜! タオルもありますので、良ければ使ってくださいね〜」

 相変わらず、とてもフレンドリーで優しいフレンズだ。私はお言葉に甘えて、すぐにお風呂に入った。

 久々に浴びるシャワーは、とても気持ちが良い。正に至福の時間だ。何だか某有名漫画のしずかちゃんになったような気分だが、私は別に一日に何度も入るほどお風呂が好きな訳ではない。家にいた時は、一日入らないことなど日常茶飯事だった。

 だが、疲れた後に入るお風呂の心地よさは格段に違う。引きこもって以来しばらく感じていなかった達成感を感じる。

 お風呂から出てほくほくになった私は、それからしばらく、じゃぱりまんを頬張りながら、アリツカゲラさんと談笑した。

 これはチャンスだ。壁に写真が貼り付けてあることだし、アスカについて何か情報が掴めるかもしれない。

 そう思い、早速話題を変えてみる。

「そう言えば今日、またアスカさんにそっくりだとイヌワシさんに言われました。私とアスカさんって、もしかして何か特別な関係でもあるんでしょうか?」

「アスカさんとフーカさんが、ですか…?」

「そうです」

 話題が突然変わり、アリツカゲラさんは一瞬驚いた様子だったが、すぐに話に乗ってくれた。

「うーん、確かにそっくりなんですよね〜。顔も声も…。ただ、関係と言われても、思い当たることはないですね〜…」

「やっぱり、そうですよね…」

「あっ、なら…」

 しばらく曇った表情をしていたアリツカゲラさんが、ぽんと手を叩いた。

「アスカさんのこと、知っている限り詳しく教えてあげましょうか〜?」

 穏やかにそう聞いてきたアリツカゲラさんに、私は頭を縦に思い切り振った。

「はいっ、ぜひ、お願いします!」

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