#62 けんじゅう
イヌワシさんは、セルリアンの絨毯から少し離れた場所に私を降ろしてくれた。
「あ、あの、私は何をすれば?」
私が自分を指差しながら問いかけると、イヌワシさんは何故だか楽しげな様子で、
「セルリアンをどうすれば良いか考えといてくれ! 博士より賢いんだろ?」
と一言答え、ものすごい速さでセルリアンの元へと飛んで行ってしまった。
「えっ、ちょっと……えぇー…」
野原に一人ぽつんと取り残された私は、イヌワシさんの背中を見ながら、少し考える。
そもそも、セルリアンとは何なのか。
博士に色々と説明はしてもらったものの、フレンズにとって脅威であるということくらいしか理解できていない。あとは、どこかにある石?を壊せば倒せると聞いた覚えがある。
セルリアンの上空に辿り着いたイヌワシさんは、私のいる方向を指差しながら、ハクトウワシさん達に何かを話している様子だった。瞬間、その場にいたフレンズ達が、一斉にこっちを向いた。
私は、思わず目をそらす。
が、フレンズ達はすぐに散らばり、またセルリアンの退治を始めた様子だった。
どのフレンズも、セルリアンの上空を飛びながら、必死に対抗している。蹴ったり振り落としたりと、戦い方はそれぞれ違っていたが、フレンズの手にかかったセルリアン達は、次々に結晶となって消えていった。
「…すごい……」
思わず、感嘆の声が漏れる。
私がいなくとも、このままフレンズ達が順調に戦えるのなら、いずれセルリアンは全滅するのではないか…?
そう考えもしたが、あの場にいるセルリアンの数は本当におびただしかった。倒しても倒しても、一向に減らない。このままでは、フレンズ達の体力が先に尽きてしまうことも懸念される。その意味も含めて、博士達は私をここに連れてきたのだろう。
だが。
私には、どうすれば良いのか分からない。
「何をボーッとしているのですか」
「うわぁぁっ?!」
突然背後で声がして、私は飛び上がった。
やはり博士だ。良い加減、音を立てずに飛んでくるのも止めて欲しいのだが…。
「何か思いつきましたか? あのセルリアンをどうにかする方法を」
博士に続いて飛んできた助手が、私に疑問符を投げかけた。
ここは正直に答えるしかない。
「いや…さっぱり」
すると、博士はいつも通りの平然とした顔ぶりで、少し胸を張ってから言った。
「どうせそうだろうと思ったので、最終兵器を持ってきたのですよ」
「さ、最終兵器?」
響きは良いが、博士のことだ。悪い予感しかしない。
「なのです。もちろん、使うのはフーカですよ」
「私が!? どんな兵器なの…?」
すると、博士がそれを私に差し出してきた。
「えっ、ちょっと、これって…!」
兵器を見た瞬間、私は驚愕した。
それは紛れもなく、拳銃だった。
「な、何でこんな物騒なもの、博士達が…」
これを受け取ったら、私は銃刀法違反で…いや、ここは夢の世界の中だったか。
驚きつつもそれを受け取ると、小さな割にはずっしりとした重みが伝わってきた。
「ほ、本物っぽい…」
「もちろん本物なのですよ。この状況で偽物などを出している余裕はないのです」
「それをセルリアンに向かって撃てば、石に当たろうが当たらまいがセルリアンは消滅します。まぁ、アスカは確実に石を打っていましたが」
「えっ、あ、アスカさんが使ってたの!?」
「はい。なので、フーカでも使えるかなと」
「いやいやいやいや、私は射的は苦手で…」
小さい頃に、地元の花火大会でやった射的を思い出す。一発も当たらずに泣きわめく自分が脳裏に蘇った。
「関係ないのです。これはフーカにしか使えないのです」
「な、何で?!」
「アスカが、これはヒトにだけ使う権利があると言っていたのです」
「ま、まぁ、そうか…。いっいや、でも、私はまだ子供で…!」
「良いから、これで参戦するですよ」
「えーっ?!」
私は、その秘密兵器(?)を慎重に持ちながら、セルリアンの絨毯へと向かった。
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