セルリアンとパークガイド
#61 さいしゅうへいき
ログハウスの入口の前で、アキちゃんとウグイスさんがこちらに向かって手を振っていた。
二人はかなり気が合うようで、しばらくハウス内でじゃぱりまんを食べながらお喋りを楽しむつもりらしい。確かに、二人共清楚で礼儀が正しいし、口調も似ているので、何か通ずるものがあるのだろう。
博士と助手は、セルリアンを倒すための「秘密兵器」を持っているらしく、それを取りに倉庫へ向かった。すぐに追いつくのです。…と言っていたので、どんな兵器なのか気になったが、その場では聞かないことにした。
「そう言えばフーカ、ウグイスの俳句は聞いたか?」
私を抱えたイヌワシさんが、真っ直ぐ前を見たまま聞いてきた。
「え? 俳句…?」
私が首を傾げると、イヌワシさんは驚いた様子でちらっと私を見てから、「聞いてないのか?!」と声を上げた。
「いや、全然知らない…。ウグイスさんって、俳句詠んでたの?」
「知らないって……ウグイスの俳句は、かなり定評があるんだぜ?」
「そうなの?! 聞けば良かった…」
「ま、またどこかで会えるだろ」
「そうだね…」
紹介が遅れたが、現在私をセルリアンのいるコースまで運んでくれているのが、レースに出場するイヌワシさんというフレンズである。
博士が私の運び役を募った際に、自分から買って出てくれたらしい。
とてもありがたいのだが、私と特別に話したいことでもあるのだろうか?
「それにしても、フーカって本当にアスカそっくりだな」
「あ、それ、よく言われる…」
「最初にフーカを見た時はアスカなんじゃないかって思ったが、違うみたいだな!」
「…もしかしてイヌワシさん、それを確かめるために私の運び役を?」
「あぁ! だって気になるじゃねぇかー!」
「そういうことか…」
「苦笑いもアスカそっくりだな!」
「私はフーカだからね…?」
「分かってるって!」
何というか、気前の良さそうなフレンズだ。私の運び役を担当してくれた理由があっけなく分かり、安心はしたが。
「それでセルリアンなんだが、コースの中腹の広場で大量発生してて、倒しても倒しても収集がつかないんだ。今は、出場する奴と運営する奴が何人か集まって対処してる」
「なるほど……その大量発生してるセルリアンは、簡単に倒せるの?」
「一匹一匹は小さいからな。倒すのは簡単なんだが、なかなか減らない」
「どんどん増えてるってこと?」
「いや、そういう訳でもないんだ。ただ単に数が多過ぎて……あ、ほら」
イヌワシさんが、目線を下に落とした。
私も一緒になってその方向を見る。
見た瞬間、鳥肌が立った。
芝生の広場と思われる土地に、青くて丸っこい物体がごろごろと転がっていて、まるでビニールシートが敷き詰められているようだった。
そのビニールシートの上を何人かのフレンズが飛んでいて、丸っこい物体を地面に叩き落としたり、蹴り飛ばしたりしている。
唖然とする私を横目で見ながら、イヌワシさんは得意気に言った。
「な、すごいだろ?」
そこ、楽しそうに言う所じゃないと思うんだけど…。
「ハカセ、本当にそれを使うのですか?」
イヌワシ達を追いながら、ジョシュはハカセが持っている「秘密兵器」を見ながらハカセに問いかけた。
「いえ、使わせる、のです」
平然と答えるハカセに、ジョシュは目を丸くする。
「まさか、フーカに…?」
「はい」
「ハカセ、それはちょっと待つのです」
「何故ですか? アスカはこれを使いこなしていました。フーカも使えるに違いありません」
「アスカも言っていたではないですか。ヒトもフレンズと同じで、得意なことが違うと。フーカはアスカほど…」
「アスカは何と言ってこれを我々に渡したか、覚えていますか?」
ハカセに言葉を遮られ、ジョシュは黙り込んだ。
「『これはすごく危険なものだから、賢いハカセ達に任せるね。他のフレンズには、絶対に持たせないで。これを持つと、絶対に誰かが死んじゃうから』」
「ですがハカセ」
「まだ終わっていません。『ただ、もしもこの先、信頼できるヒトがここに来たら、特別に使わせても良い。オッケー?』。………似ていましたか?」
「全く似ていないのです」
「…まぁ、それはさておき、ハカセ的にフーカはかなり信頼できる存在なのです。なので、これは渡しても良いかと」
「……ハカセがそこまで言うなら、仕方ありませんね」
ジョシュは表情一つ変えず、『最終兵器』を見つめながら答えた。
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