第22話 行ってらっしゃい
『兄ちゃん、珍しいね。失敗するなんて』
……ん、まぁな。
『学校で習ったよ!『猿も木から落ちる』ってヤツでしょ?』
ハハッ、そんなとこ。でも取り返しのつかねぇ失敗だ。
『そうだよね。命は一人一つだもん。でも兄ちゃんは優しくて強くてカッコいいから、次は失敗しないもん!』
そうだといいな。兄ちゃん、そろそろ仕事に行かねぇと。
『そうなの?気をつけてね!ボクもきっと兄ちゃんみたいになるから!』
ならねぇ方がいい。オレは良い兄ちゃんになれなかったから。
『そんなことないよ!兄ちゃんはいつだって誰かのために怒れる人だもん!いつだって正義のヒーローだよ!』
……そっか。そうか。なら兄ちゃん、頑張るからな。
「次こそ本物のヒーローに」
薫はそう呟いた。そして、写真の向こうの弟に手を合わせて玄関を出た。誰もいなくなり、しんとした部屋の中で、細くたなびく線香の煙が、薫の背中に手を振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます