「普通の家庭で生まれ、普通の教育を受け、普通の友達を作り、普通の高校に通う普通の子供。それを僕は一番恐れている育児過程だとおもっています。例えば…そうですね…三年前の事件。あれがいい例ですよ。「天川紅、菅野直人」容疑者達の殺害事件。自分達の親含め七人を殺害していますからね。まぁ。そうですね。結論を言ってしまえば僕はその真相を確かめたいんです。でも迂闊に捜査を進めるわけにもいかなくて。ええ、守秘義務が課せられているみたいなんです。何か彼らは重大で、そして、政府すら隠蔽したがっている事実を隠したまま死んでしまったみたいでね。メディアは真相に一番近い人間に話を聞きたいわけですがそのキーパーソンでさえ行方不明。僕はチャンスだと思いましたよ。貴方さえ見つけて全てを吐かせて仕舞えば、この記事は世間をはためかす大スクープになる。そして僕は大儲け。唯一三年前の事件の生き残りなんですから全てを知っているはずです。お話しして下さい。拒否権はありませんよ。」

菅野秋人さん。と。

暗くて何も無い部屋に無機質に響いた旧名。

恐らく断ればまた口が鉄の味で埋め尽くされるのだろう。考えるだけで味覚は錯覚する。

伏せていた顔をあげるとがめつい鉄アレイを握る男が笑った。