フェネック・マジックショー

@TTT

「やめるのだ!」

 かばんとフェネックがマジックショーをすると聞いて、ゆうえんちにフレンズが集まりました。

「何が始まるんだ?」

 ヘラジカはよくわかってないようです。

「マジックのショーなのです」

 博士が説明します。

「マジックって何なのだ?」

 アライさんもよくわかってないようです。

 博士は質問に答える代わりに、助手を見て目をパチパチさせています。

 助手はすかさず答えました。

「かばん。説明するのです」

 博士たちもよくわかっていないのでは? と賢いフレンズは思いましたが、あえて黙っておきました。

「ええっと……」

「それは見てのお楽しみだよー」

 見ればわかるよー、とフェネックがかばんの説明を遮りました。

「そうですね。見てのお楽しみです」

 そう言うと、かばんとフェネックは舞台裏に行ってしまいました。

「なんだかよくわからないけど、楽しみなのだ」

 わかってないフレンズも、わかっているフレンズもショーが始まるのをわくわくしながら待ちました。

 スナネコとキタキツネは寝ていました。


 みんなでわいわがやがや、おしゃべりしながら待っていると、赤いカーテンが開いて、かばんとフェネックが舞台に登場しました。胸に赤いリボンを結んでいます。舞台にはフレンズと同じくらいの高さの箱がいくつか置いてあります。

「おまたせしました! フレンズのみなさん。マジックショーのはじまりです」

「はじまるよー」

 ぱちぱちと拍手。

「ありがとうございます。まず最初にお見せするのは――」

 だらだらだらだらだらーどん! とフェネックが言うと同時に、かばんが発表します。

「切断マジックです」

 おおー、と歓声があがりますが、勢いで言ったフレンズがほとんどでした。

 騒がしくなって起きたキタキツネがギンギツネに聞きます。

「せつだんって、何?」

「切ることよ。あなた、寝ぼけてるでしょ」

 呆れ顔で答えてあげました。

「切断……あの箱……何をするのかわかってしまったのです。我々は賢いので」

「賢いので」

 博士たちはわかっているようです。

「一体何を切断するんですの?」

 カバが聞きます。それにフェネックが答えました。

「この箱に入ったものをばらばらにするよー」

 箱は上と中と下と3つに分かれていて、横にずらせるようになっていました。それぞれがかなり横までずらせるので、中に入ったものは無事では済まないでしょう。

「そして、この箱の中にボクが入ります」

 盛り上がっていた会場が静かになりました。一部のフレンズを除き、笑顔が消えました。これにはかばんとフェネックも不安になりましたが、続行します。

 かばんが箱に入ります。首から下が箱に収まり、顔だけが見えている状態です。

「じゃあ、いくよー」

 ちょっと戸惑いながらもフェネックが真ん中の箱を横にずらします。

 その時、一人のフレンズが立ち上がって叫びました。

「やめるのだ!」

 アライさんです。

「フェネック! やめるのだ! そんな事をしたらかばんさんがバラバラになってしまうのだ!」



 

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