カラス編

問題



♯5


円香「シュバルツ…」


翔真(どういう仕組みだ…あれ)


東雲の帽子から伸びる黒い帯は再び形をかえて土使いの能力者とテル達を包み込む。

そして再度形を変え、羽を大きく生やす。


翔真「っつぅ…!!頭が…痛い…」


翔真(これは脳に負担がかかってるって証拠か…。眼帯つけておいた方が良さそうなのかな)


円香「さ、早く乗って、」


翔真「え…これに乗るのか!?」


円香「もう!人が来ちゃう!早く乗って!」ガシッ!


翔真「わっ…ちょっ!!!」



バサァっ…!!!


翔真「ま…マジで飛んでる…!」



バサッ…バサッッ…


フワァア……


円香「ありがと…。戻っていいよ。シュバルツ。中の3人だけ気をつけてね」


シュルルルルッ!!


翔真「こ…ここが連れてこいって言われた場所か…?」


円香「いや、まだだよ。ここからさらに5分ほど歩く。」




翔真「これがそうか…?ボロボロの廃墟じゃないか…」

翔真(もっと…こうアジトっぽいというか施設というか…)


円香「そ。さぁ、入るよ」




カツカツカツ....


円香「…」キィ...


翔真「パソコン…?」


円香「……」カシャカシャカシャ....


ヴゥンッ...


『よく来たね。少年。』


翔真「…ども……」


『ごめんなさいね。さっきの場所だと話を聞かれかねないから具体的な会話ができなかったのよ…』




翔真「…というと……?」

円香「さっきの現場周辺に盗聴魔3機と、その他使い魔が4機…電話回線をハックしてきたのが少なからず3件…」


翔真「えっ……!!!?」


『どれだけ君の持つその《眼》が重要な代物か分かってくれた?』


『ここもいつ特定されるか分からない…。手短にすますわよ』


『私達は非正規で活動するバウンティハンター即ち、賞金稼ぎ。なんらかの理由で公にできない事案や、正規の組織が取り扱ってくれないような事を任務として遂行する組織よ』


円香「私はその1人。そしてパソコンで喋ってるのが、元締めと任務の斡旋をする梨々子さん。」


『今回、依頼主から要求された依頼は《イビルフォーカス》の保護と、それを追う背景の調査。』


『でも依頼主本人との接触はできなかった。どこの回線が使ったか分からない裏メールと依頼は達成されてないのに成功報酬だけが送られてきてね。お金をもらった以上任務は遂行しなきゃいけない。』



『それに十中八九この手の依頼は影の事情が絡んでるし、賞金稼ぎとしては、ある程度の影のツテはメリットだからね。私達は《眼》の搜索にはいった』



『そして搜索中、能力の衝突を確認した円香が現場に向かった時、君を見つけたって訳だ。』



円香「『イビルフォーカス』って言ったってどんなのか私知らないし…まさか片目だけだとは…。ごめんなさいっ!」


翔真「話が…全然見えてこないんですけど…」


『とにかくだ。これより私達は君を「保護」する。依頼主より《眼》は見つけ次第、それを追うもの以外が持っていてくれれば、そのまま所持していても構わないという事だからね』


翔真「『保護』……??」


『さっきの現場には、まず間違いなく土使いの能力者の仲間が来ている。流石に能力者痕を消すまでの時間はなかったからね』


円香「車の事故と同じ。おまわりさんが車同士の傷や凹みを見て、どこからぶつかったかとか、どれくらい速度が出てたのかとか見るでしょ?」


翔真「ほぉ〜」


『能力者が残した特殊な痕跡を見れば誰とどんな風に戦ったとかが見れる訳。それを残さないってのも腕なんだけど、さっきの奴はもうメチャクチャ。おそらくわざと痕跡が残るように戦ってたって感じね』


『つまり言いたい事は、さっきの現場を見れば情報は奪いたい放題。これからも君のもとにドンドン刺客が送られてくるわ。一回の戦闘でもそれだけ体に負担がかかってるのに、それが2対1とかになったら凌ぎ用がない。』


円香「だから私達で保護をするの。あなたを」


『さて…ここまでで質問はあるかしら…?』


翔真「何が何だかもう…さっぱり…」


翔真「『イビルフォーカス』ってなんなんだ?」


『異能者の世界でも単なる噂でしかなかったものよ…そんな存在するかしないかも分からないから、あまり耳にすら入ってこなかったわ。』


円香「でも今回の件でそれが存在する事も、どこからかそれが流出したことも分かった。」


翔真「後は…これから俺はどうすれば…」


『安心して。今晩は円香に見張らせる。一応私の連絡先も渡しておくから』


『そして、自覚なさい…。自分は今下手をすれば世界すら動かす力を持っていることを…』

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