先導


翔真「…………!」



シュトラス(顔つきが変わった…フッ…『眼』を使ってどうにか対策を講じているようだが…いくらその眼で見えていようとそれは一朝一夕で使いこなせるようじゃない…見せてもらおうか…!)


翔真(まず見るべきは奴の能力の範囲…!地面の形や硬度を操り自在に操作すると言っていたけど…それが地面に体を触れさせている必要があるのかどうか…!)


翔真(借りに答えが前者だったとして、俺を殺したければ俺の足元の地面を操作すればいい…それをしないのはアイツの能力の適応範囲に限界があるから…!それを意識して視る…!)キュィィィィイ...



翔真(視える…!アイツの能力の範囲は体の触れている部位から大股3歩分くらい…!


でもそれだけじゃ足りない…。アイツは地面のコンクリートを固め硬度を上げた手を作って能力範囲の外側にいる俺に攻撃を仕掛けた…


そして俺に飛ばしてきた飛礫…!あれがダイヤモンド並みに硬度を上げられていたのなら俺の腕なんか簡単に折れていたはず…。確かに痛かったけど…。地面から離れたものの硬度は元に戻るのか…?)


翔真(となると奴の能力のポイントは


能力発動、持続には体が地面に触れている必要がある

能力範囲内で一度操作したものは、地面に触れた状態のままなら範囲外まで操作できる

地面から離れたものは操作できず元の状態に戻る…


つまり飛んでくる飛礫にはそこまで警戒は必要ない…何より…)スッ...


落ちている鉄パイプを拾い上げる



翔真(視えてる以上打ち落とせばいいだけの話だからな!)ブンッ


シュトラス「さぁ…騒ぎを聞きつけた人間に来られても困るからな…そろそろ終わりにしようか…」


翔真(後はあの手をどうするか…!俺の読みが正しければ…!)ダンッ!!!


シュトラス「なっ…!何を考えてる…!?」


シュトラス(こっちに向かって突っ込んでくる…!苦し紛れの特攻か…!?)


翔真「うぉぉぉぉおっ!!」


シュトラス「ふんっ!!」バッ!!!


ズドドンっ!!


翔真(飛礫っ…!!でも!)カン!キン!


シュトラス「打ち払ったっ!?」


翔真「視えてんだよ!!全部な!!」ダッ!!!


シュトラス「くっ…!!防御だっ!!包め!!」


ゴゴゴゴ



翔真(そうくると思ったよ…!お前は身の危険を感じたら周囲の地面を固め身体を包んで防御するってな…!!)


キュィィィィィンッッ


翔真「どれだけ硬かろうが、最も脆い部分が物質には存在する…」


翔真「この眼なら特に脆い位置でそれを視ることができるはず…!!」


俺は見据えた弱点に向かって鉄パイプを突き立てた。



翔真「いっけぇぇえ!!」


ザクゥッッーー!!!



バラバラバラ...


シュトラス「莫迦なっ…!!今のは『ソーシャルアダマント』で出せる最高硬度で張った防御壁だぞ…!それが鉄パイプ一本で…!!」


カランコロォンッ!!!


翔真「うぉぉぉぉぉぁぁあ!!!」




シュトラス「よっ…よせぇっ!!」



ドゴォァァアンッッ!!!!!




シュトラス「ゴパァッ……!!!」





翔真「なんだっ……!?」



シュゥゥゥゥゥゥゥ……



完全に虚を突かれ、無防備になったヤツにトドメをさそうと拳を握った俺だったが

その頭上にまた新しい何かが降り立った。


凄まじい音を立てヤツが固めていた地面がいとも簡単に砕け散る。



翔真「何が…」


立ち込めた砂煙りが引いていく

そして、その降り立ったものが正体を現した


倒れた土使いの能力者の傍らに立つのは大きなキャスケットの帽子をかぶった髪の長い少女。


手には刃も柄も何もかもが真っ黒に染められた、見たこともないような大きな剣を持っていた。


でもーーー。


俺はその子を知っている。

何故なら…



翔真「東雲……円香……?」


シュゥゥゥウ....


円香「……私の獲物は…渡さない…」

シュルシュルシュルッ!!!!


翔真(……!?)


真っ黒な剣の形を成していた『それ』は形を変えて東雲の両足を覆う。


バチバチバチッッ!!!!


ドゥンッ…ーーー。


一瞬にして姿が消える。東雲が地に足をつけていた場所が瓦礫を飛ばし、抉れる。


翔真「やべっ…!!」キィィィイ


ドゥッドゥッドゥッ!


猛烈な蹴りの連続。かろうじて『眼』を使って捉え、避けつつも、蹴りが空を切るその音が、『当たればただではすまない』ということを容易に連想させた。



円香(……!!避けられてる…!?)ドゥッ!!ドゥッ!!


翔真「ちょっ…ちょっと待ってくれっ…!!俺はただっ…!!」シュッシュッ



円香「だったら…!!」


シュルシュルッ!!!パチ...バチィンッ!!!


翔真「…黒い…鎌…!?」


円香「逃すわけにはいかない!」



翔真(っ…仕方ねぇっ…!!)


ドロッ...


翔真(鼻血っ…!?これは…なれない力を使って体が追いついてないのか…!?)


円香「ふぅんっ……!!」ビュォッ!!


『待ちなさい円香』


円香「……!!」ピタッ...!


『その子は本当にこの件について関係ないわ。むしろ被害者…といった方がいいのかしら…』


円香「で…でも…!!」


『その子の左目を見てみなさい…分かるでしょ?彼が今どういう状況に置かれているか』


円香「……くっ…」



翔真「たっ…助かった…?」


円香「……」シュルシュルッ!!!


黒い鎌の形状をしていたものが形を崩して東雲の帽子に戻っていく



円香「君…」


翔真「へ…?」


円香「ボスから電話…出てくれる?」スッ...


翔真「………はい」


『こんばんわ。いきなりだけど…君…持ってるわね』


『持ってる』。その言葉だけでなんのことを言っているのかすぐに分かった。


『その様子じゃまだ何もわかってないみたいね…。いいわこのまま放っておいても貴方、死ぬだけよ。もうじきそこにも人が来る。騒ぎになる前に、今隣にいる子と来てくれる?』


『円香は怪我人の子達とターゲットを連れてね…』










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