第16話 みんなの風


一分も待たなくて、上昇スピードが急に落ちた。そもそも、そよ風属性のブリーズは、その耐久力も爆発力も、戦いに似合わない。前の傷もまだ治っていなかった。このままでは、鎖のところに辿り着きっこない。


こんな時に、足元に風の流れが感じった。彼女の飛行スピードは上がった。

「何を格好つけてやがるんだよ。今のお前が何ができるのか。」側にゲールの声が聞こえた。


「この前、お前に借りがでっちまったな。手伝ってあげるぜ。」ハルズの声も。上昇スピードはさらに上げた。


「我々の英雄、上空で最後の戦いをしている。今、我々のやるべきことは、力を貸すこと、と彼女が最後まで、無事でいられること、さあ、みんな、手をあげよう。」ハスお爺さんは全土のエルフに聞こえるように、自分の力を発揮した。


故に、みんなの力が、みんなの風が、王城の上空へ満ちていた。


「頑張って」

「いけ」

「いけ」

「諦めないで」

「いけ、ブリーズ。君の望むところへ。」


「聞こえた。みんなの声、みんなの風。」まるで、ブリーズの強心剤のように、今までもない光が輝いた。





空に、閃光が閃いた。

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