第27話エピローグ

 1947年 11月17日 各務ヶ原飛行場


「これが川崎航空機工業が開発した超音速実験機桜花や。これは大型爆撃機に吊るされて高度6000から投下されて飛ばす代物や。理論上はマッハ1.1までは出るそうやけど今まで挑戦してきた連中は音の壁を越えられずに皆バラバラになったんや。

 ユキあんたがどうなるかわからんがウチとしては死なせたくはないね」

「そうかもしれません。ですが誰かがそれをやらないとね。何事にも最初はありますよ」

「そうやな。それじゃあ行こうか」

 そんな感じで私は与圧服に着替えて与圧面を被り酸素供給箱を持って機にのりこんだわね。日本も立ち遅れていた大型機の分野でいち早くジェットを採用したからこの大型機もジェットペラエンジンとターボファンジェットの混合機である「連山」に乗り込みそのまま高度6000にあがり私は与圧服の状態を確認しそして桜花に乗り込む。

 いつものように緊急用射出座席の導通状態を確認し酸素供給と計器、舵の状況を確認。そして補助動力装置を動かしてエンジンを動かすための圧搾空気を作る。

 そして神谷さんが風防を閉めて爆弾倉から出て行った。そして無線機のレシーバーから声が聞こえる。

「いつでも降下はいけるで。準備が出来たら言ってくれや」

「はい。いつでも大丈夫です。カウント行きます。5.4.3.2.1。降下」

 私がそう言うと機体を止めていたフックが外され高度6000から落下するもすぐさまエンジンを吹かして飛行させる。目指すはマッハを突破することだね

「現在速度マッハ0.89。これより全速試験を開始する」

 そして私はスロットルレバーを最大位置に合わせ補助ブースターロケットを作動させる。その上再燃加速装置のボタンをおしてスロットルをさらに押し込むことでエンジンは定格出力最大まで発揮していた。

「現在0.96、9.7。振動発生。舵はまだに動くマッハ0.99。さらに振動がひどくなってきた」

 そして伊勢湾上空に爆発音とも言える音がした。で、神谷さんが私をひっきりなしに呼んでいたわね。

 で、私は答える。

「大丈夫生きてますよ。どうやらマッハ計の針が振り切れちゃったみたいだよ1.0を超えたまま動かないね。速度計は670ノットを指しているよどうやら音速を超えたみたい。時速1234.8キロを超えたということになるね。燃料が危ないからエンジン出力を落とすね」


「わかったで。各務原にはもどれそうか」

「最後は滑空になりそうだけどどうにか戻れそうだよ。小牧に降りるという手もあるけれどね」

「そうか。基地に戻るまでが飛行やからな」

「そうですね」

 そんな感じで私は無事に各務ヶ原の飛行場に無事機体を下ろすことに成功した。そして報道班が私に向かってカメラを撮りまくっていたわね。

 まあ、その後世界は再び戦乱になるということはこの時の私は知る由もなかったわ。


 そうそう神谷さんですが私が音速を超えた飛行を行った直後にオメデタが発覚して

 そのまま電撃的に式を挙げたそうよ。そして彼女も予備役となったわね。私はそのまま軍のテストパイロットから予備役になるはずだったけれど時局がそれを許さなかったのよね~

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