番外編
第28話 番外編その1 小隊長の結婚式
1947年 12月10日 とある結婚式場にて・・・
ここに一人の花嫁が結婚式を挙げるべく控え室にいた。
「隊長も随分と美しい姿になりましたね。なんというか馬子にも衣装というやつかしら」
「なんやて~。まあ、事実やからしゃあないな。でもなウチはこう見えても元々はいいところのボンボンやったんやで。ユキにはまだ話してなかったけどな」
「それは初耳です。そういえば幾度も死線をくぐり抜けてきた間柄でしたがお互いの身の上は話しませんでしたね」
と、会話をしていると第一種礼服に身を包んだ女性が控え室に入ってきた。
「貴方もりっぱな花嫁になって私も嬉しいですよ」
「そんな。水瀬大佐も晩酌人になってもらって感謝しております。うちの両親もいればよかったんですが・・・」
「ですね。おもえば、貴方とも随分と長い関係でしたね」
「そうやな。水瀬隊長に誘われてなかったら今こうしているかどうかですもんね」
「ですが。貴方の努力の結果ですよ」
「そうやな。まあ、いい機会やからウチがどうしてこんな稼業をするようになったか言うたるわ」
そして彼女は語り始めた。
ウチは神谷晴子 18歳 大阪出身の女学生や。いや。だったというべきかな。
卒業間際に実家の事業で下手打って家が没落してしもうたからなぁ。で、どうにか青桜女学院というところをなんとか卒業したウチはこれからの身の振り方を考えていたんや。
「むー。見事に無一文か。このさい芸者か娼婦になったろうかいっそのこと」
その時ウチのオヤジの知り合いだった水瀬という女性が言ってきたんや
「あなた。女学校を卒業したのよね」
「そうなる。で、無一文に近いからカフェの女給になったろうかと算段していたんやが」
「そう。だったら軍に入らないかな。海軍では女性従者募集があるし陸さんでも似たようなのがあるよ。あれなら男も選り取りみどりの上に衣食住にも困らないからどうかしら」
とまあ、そんな甘言というか誘いにホイホイと乗ったのよね~。
まあ、入隊試験にはとりあえず学科も実技もどうにかクリアした。まあ、何とかなったというか色々とあってね。で、ほんらいなら輜重段列の部隊か通信系と思ったんやけどどこをどう間違えたのか航空兵の過程に配属されてそこで航空機の力学、気象学、構造や電信、航法などをすべてを教わったんや。で、基礎訓練が済んだウチはそのまま支那事変で機材輸送の任務についたんや。そこの中隊長がこれまたクズだったなぁ。女のあたしを見て愛人にならんかと言い寄ってきよったんや。で、まあ。無理やり女にさせられてなぁ。で、その落とし前としてやつから散々搾り取ってやったけどどうせ士官の懐なんてたかがしれているわけで、それやったらというか奴の出世のための枕をやらされたんやなぁ。まあ、その経験から男のあしらいを覚えたから良しとしないとあかんのかもな。
で、うちの転属が決まる直前にそのクズ士官が一緒に飛ぶとなった時にウチは敵機におそわれてな。で、そいつらにやつが乗った機を撃墜させてウチはそいつらを血祭りにしたけれどな。まあ、敵に襲われて迎撃中に殺られたということでお咎めなしや。
で、嫌な奴が死んだという感覚だったね。
まあ、手元に残ったのはというやつや。
それからウチは水瀬さんから士官学校を出てみないかと誘われて受験したわけや。まあ、パイロットあがりということで半年の短期講習やったけれどそれでも十分な教育やったなぁ。
で、少尉に出世したウチはそのまま福生基地に配属されてそこで水瀬少佐が司令官となる天使隊に配属されたんや。まあ、そこでユキあんたが補充兵としてきたんやな。
晴子の問いにユキが答える。
「ですね。しかし、小隊長もなかなかハードな人生でしたね。じゃあ脂ぎったオッサンあいてにしていたということかな」
「ん~。そうでもないで、士官学校のときは若い燕が選り取りみどりやったさかいなぁ。中年のテクもいいけれど若い男の荒々しさもなかなかどうして」
「そうですか。で、高槻さんとはそのそっちに惚れたのか」
「そうやな。それに話を聞いていたらすっぽりと惚れちゃってな。うちの身の上全て知った上でやで。こんな奇特な奴見逃したらアカンとおもってな。それにウチもあいつのことすきになったんでな」
「そうですか。お幸せに」
「ありがとな」
そして式は滞りなく行われたわね。で、まあ、水瀬隊長たちは大泣きしているし私も目頭があつくなっていたりだね。
まあ、そんな感じだったわね。まあ、いろいろな方から祝電がきたけれどまさか英国の女王陛下から祝電が来たというので大騒ぎになったりしていたようね。
まあ、イギリスからみたら私も彼女も国家の英雄だしね。
そうそう彼女の現在の撃墜数だけど公称390非公認で430機だそうね。私は公称395機だけどね。まあ、いかにイギリスの戦いが激しかったということの証明にもなるかしらね。
まあ、その後彼女は多数の子供たちに囲まれて英国と日本から恩給もらっていたそうね。で、その後彼女とは会う機会もなく再び会った時にはお互いに婆さんになってからになるわね。まあ、彼女は彼女なりの道をみつけたという事かしらね。
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