第19話イギリス本土撤退戦 前編

1945年 5月 3日リバプールにて


今の状況ははっきり言えばもはや絶望的とも言える状況ね。

空軍だけで言えば敵爆撃機のコンバットボックスを打ち破る為の迎撃機は残り少なく航空用燃料も事欠く有様、で、高射砲、地対空誘導弾部隊のほうも弾薬が尽きて無用の長物となり。敵に渡る前に爆破処理されて撤退という状況ね。で、最後の防衛ラインとしてカーライル~ポーツマスを貫く南北ラインをどうにか守護しているじょうきょうだね。まあ、日本の機甲部隊が機動防護戦を行って、英陸軍との共同作戦でどうにか持たせている状況よ。そして5月10日を持って英本土を放棄、撤退するという決定がくだったわね。


そして女王陛下とその旦那であるフィリップ殿下もまたその船団に乗り込みシンガポールないしは英領コリアのソウルか香港で再起を図るという英国政府の決定がくだったようだ。

なお、首相たちは撤退後降伏するらしいという情報もあるね。ただ、これでイギリス本土を奪還するのにものすごい資源が必要となることが確定でもあるわね。

まあ、国土や土地はいずれ奪還できるけれど。それを守るのも取り戻すにも多数の血が流れ命が消えていく。消えた命は二度と戻らない。私たち戦闘機パイロットもそうだけど、技術を習得するのに数年の年月と莫大な費用を注ぎ込むけれど、戦争であっけなく損耗していくからね~。たとえ、撃墜数がゼロでも機材を壊しまくっても生きて基地に戻れるやつが本当の勇者なんだろうね。まあ、多数の敵機を撃ち落として生き延びれるなら尚良しなんだけど・・・。


そして、私たち第一小隊は撤退する部隊の援護のために最終日まで出撃しその後リバプール沖合2キロに待機している空母機動部隊と合流し内地へと引き上げることになるそうだ。


整備班の連中は出撃後基地を爆破しトラックに分乗して船に乗り込むという段取りだそうだ。で、砲も艦橋も据え付けられていないで仮設の島形艦橋と甲板にギッシリと戦車や試作のジェット機が入ったコンテナが据え付けられていた。そして舷側には大量の高射砲と機関銃がハリネズミのごとく並べられた状態だった。まあ、世界の七つの海を支配した大英帝国ももはやという有様だよ。


そして5月4日から9日まで私たちの部隊は迎撃任務に従事していたわね。まあ、ダージリンたちはバンガードに乗艦し女王陛下のお付となるそうね。まあ、イギリスの連中は空母着艦技能を持ち合わせていないし機材ももはやね~。


そしてイギリス最後の夜となった。

「いよいよイギリスでの最後の夜やな。今日の晩飯はなんやろね~」

と隊長の神谷大尉が言う。

「多分、いつものフスマ入りの黒パンとジャガイモとニシンのごった煮じゃあないでしょうかね~。それでも食えるだけマシといえばマシなんでしょうが」

「そうやな。イギリスに来た頃はビーフシチューやらローストビーフ、ポークなんかがいっぱい食えたんやけどなぁ」

「ですね。まあ、アメリカの威力というやつでしょうね」

「そうやろうな。でも、情報によるとカナダが五大湖工業地帯すべてと大規模鉱山を確保したという話もあるで。こりゃあいずれ我が軍やイギリスにフォードやらGMのトラックや車がゾロゾロかもしれんなぁ」

「ですね」

と言いつつ私たちが食堂に入るとそこには驚くようなご馳走が用意されていた。

「おお~。遅かったな。いよいよ最後の出撃だ。腹を壊さない程度に食って英気を養ってくれ。エールもモルトもあるぞ」

「そりゃあ豪勢な食事やんか。ってことは決死の作戦っちゅうことになるなぁ」

「ですね。以前の時もそうでしたね。ですが今は目の前の食事に全力を尽くすだけですよ」

「ごもっともや」

という感じで私たちは最後の晩餐と相成った。


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