第13話私と隊長のふたりが叙勲される
1944年 6月中旬 ロンドン近郊
「今日も迎撃に出ずっぱりでしたね。何回出撃しました」
「3回緊急迎撃で出撃したな。まあ、3回で合わせて8機のP51を落としているからよしなんだろなぁ。ユキあんたは」
「私はP5110機とTa152を4機ですが・・・。肝心のB助をやれていないからどうにも」
「そこは高射砲部隊とモスキートの連中の仕事や。ウチらは戦闘機を掃討するのがあれやからな」
「ですが。例のジェット基地を破壊したのが効いたようですね。あれから未だにジェットの目撃情報がありませんが・・・」
「そうやな。で、ユキ。聞いたか。どうやらうちらのドイツ攻撃も中止するみたいやで」
「どうして。夜間の無差別爆撃でしょ」
「そうなんやけどな。奴らP61やウーフーという高性能夜間戦闘機を投入してきてなランカスターじゃあ空飛ぶカモの状況らしいで」
「そうですか。こちらもジェットが欲しいですね。もしくは空対空誘導弾や地対空誘導ロケット弾があれば・・・。英軍のレーダー網と通信技術でどうにかならないかなぁ」
「どうやろうね~。そういえばフォンブラウン博士が精力的にやりだして3000キロ飛ばせるロケットを作ったみたいやな。あと、ロケット弾や地上発射型迎撃ロケットの性能も向上していると整備長からきいたがね~」
「そうですか」
そして私たちは機体を整備班長に引渡し整備よろしくと言ってピストに向けて呑気に歩いていると後ろからランドローバーに乗った向井たちが慌ててやってきていた。
「隊長。大変です。司令から今すぐピストに来いとのことです」
「なんやろうな。おい。向井。乗るぞい」
「ええ。あ、瑞雲少尉も同じくです」
「わかったわ。じゃあお邪魔するよ」
そんな感じで私たちはランドローバーの後部に乗ってピストへと向かった。そしてピストでは司令が待っていた。
「来たか。君ら二人に叙勲の通知が来ている。英国空軍より戦功多く。その上先の特殊作戦で敵航空基地を爆破し隊員まで連れ帰った功績をたたえてビクトリア勲章が叙勲されるとのことだ」
「ビクトリア勲章ですか。それってどれくらいすごい勲章なの」
と私がのんきな質問をすると司令が答える。
「そうだな。勲3等金鵄勲章に匹敵する勲章だ。言っておくが勲3等なんざ記憶にある限りでは生きている軍人ではだれも受賞したことがない代物だ。どんなに戦功を上げても概ね勲5等か勲4等前後だからな。それだけ評価されているということだ。名誉に思え」
「はあ。そうでありますか」
「なんだ。その間の抜けた返事は」
「その。実感が湧かなかったので」
「そうだろうな」
そんな感じで私たちは第一種軍装に着替えて空軍差し向けの乗用車に乗り込みロンドン市内の王宮へとあんないされそこでイギリス国王直々に叙勲をうけることになったわね。
周りをみると例のSASの隊員やモスキートの乗員たちも叙勲されていたようね。
そして式典後のセレモニーでエリザベス王女と一緒にお茶をご馳走になったけれど私個人としてはこのお茶を末端の兵士にやればとも思ったりしていたわね。
まあ、彼女が戦後イギリス女王陛下となるとはその時は思いもしなかったけどね。
そして叙勲式典が終わったあと私たちは原隊復帰し再び戦闘に駆り出されると思いきや・・・。私たちケルビム隊は後方に下がることになったわね。
まあ、モルトやスコーン達が戦死しローズヒップ達も怪我で後送されちゃったしね。
残っているのはダージリン、アッサム、セイロン達だからね。戦力補充の為と思いきや待ち受けていたのはとんでもない事だったわね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます