第3章 (5)~(8) 仲間集めだ! でも、フランシス一味も集まってきたよ……
思った以上のボリュームとなっていますが、まだもう少しお付き合いください。
―5― 求めよ、さらば”現れん”
・ 怪しすぎる侵入者(男)が、レイナとジェニーの女2人だけの部屋に窓より侵入しようとしていた。レイナがこの世界にいざなわれてから、生きた心地もしない目に遭うのは何回目となるだろう。またしても絶体絶命かと思いきや、ジェニーのホラーヒロインばりの大絶叫によって、同じ宿の者たち(ルークたち含む)のほぼ全員が眠りから覚める。
・ レイナとジェニーの部屋に駆け付けたルーク、ディラン、トレヴァー含む者たちが見た侵入者の容姿は、一言で言うと「長身で燃えるような赤毛の超絶美形」であった。どこかで聞いたような容姿の描写に加え、平民であるはずなのに妙に品があり(侵入者なのに)毅然とした立ち振る舞い。おまけに、この侵入者と知り合いであるらしい宿泊客の女性が「ヴィンセント」と侵入者の名を呼んだ。
・ そう、たずね人の1人である「ヴィンセント・マクシミリアン・スクリムジョー」が都合のいい漫画のような展開ではあるも見つかった。いや、”求めていたら現れた”のだ。
・ ヴィンセントに今までの経緯を説明するルークたち。だが、ヴィンセント自身もアポストルからの手紙に名前を書かれるような心当たりはないと……ヴィンセントとは一旦別れ、次にいくアレクシスの町で待ち合わせることで、取りあえず話はまとまった。
・ 数日間、降り続く雨――レイナたちをこのリネットの町に留めていた雨はようやく止んだ。朝、一人で宿の外へと出て、雨上がりの匂いに胸を切なくし、元の世界へと思いをはせていたレイナ。と、その時、一難去ってまた一難。人形職人のオーガストがレイナの前へと現れた。
―6― 動き始めた刺客たち
・ 後ずさったレイナに、当然のごとく近づいてくるオーガスト。彼の瞳は獲物を狙う残忍な獣の瞳ではなく、ただ愛しい女を見つめる男の瞳であった。ただし、レイナをというわけではなく”愛しいマリア”というわけだ。レイナは、マリア王女の魂は、完全に消滅はしていないことを聞かされる……というか、オーガストの持っていた鞄の中より(人形の首だけとなっていた)マリアの声をしっかりと聞いた。
・ オーガストに両手首を掴まれ、甘いポエムを吐かれ続けるレイナだったが、ルークが助けに来た。見るからに文化系のオーガストと見るからに体育会系のルーク。拳を交えたらどちらに軍配があがるのかは明らかであるにも関わらず、オーガストはルークを挑発してきた。けれども、ルークはオーガストを殴りはしない。
・ 睨み合う彼らの元に、小さな足音が近づいてきた。重たげなバイオレットのローブに身を包んだ少女・ヘレンの登場。少女といっても10代半ばではなく、明らかに10才未満。なんと彼女は対象者の影より、強烈な酸のようなものを発するという攻撃の使い手である魔導士でもあった。
・ ヘレンの酸攻撃を持ち前の運動神経で間一髪かわしたルーク。だが、近くに民家より眠りを邪魔された一般人のおじさんが登場し、ただの喧嘩中であると思ったルークたちを注意する。ヘレンの次なる殺意は、無関係のおじさんへと向いてしまった。
・ もう少しでヘレンの影の魔術に殺(や)られるところであったおじさんを物陰から突如飛び出てきた黒髪の青年――”ダニ〇ル”が間一髪救う。おじさんも”ダニ〇ル”もどちらも無傷であったが、”ダニ〇ル”の甲高い絶叫によって、近隣の住民たちが目を覚ます。
・ 当然、宿の中にいたディラン、トレヴァー、ジェニーも外へ駆け出てくる。”ダニ〇ル”はルークたちに何か話があるらしい。けれども、見ず知らずの者を自分の命を顧みずに助けた勇敢さと、人と話をすることに慣れていない様子に、レイナやルークたちはアンバランスさを感じずにはいられない。
・ 時を同じくして、遥か上空に浮かぶ神人の船にて今の一シーンを見ていた、魔導士フランシスと少年魔導士ネイサン。いろいろコメントをするフランシスの隣で、くすぶる情熱(というか単に目立ちたがりの刺激フェチ)にウズウズとしているらしいネイサン。フランシスは、そんな彼に「次にあなたが彼らの元に行ってみますか?」と問う。ネイサンはもちろん輝く笑顔で了承。だが、ネイサン一人で向かうのではなくて、チームワークの強化のためにフランシスが最近雇った超武闘派レディ、ローズマリーとともに行ってもらうことに――
・ 上機嫌で部屋を出ていったネイサン。フランシスは、同じ部屋の中に、”空気と同化するがごとくに気配を消し、先ほどからずっとこの部屋にいた魔導士サミュエル・メイナード・ヘルキャット”へと話しかける。ちなみにフランシスは彼の存在に気づいていたが、ネイサンは全く気付いていなかった。実はこれからレイナやルークたちが向かう先――ジェニーの家には、魔導士アダム・ポール・タウンゼントがいる。実はこのサミュエルと魔導士アダムは昔馴染の関係であるらしい。サミュエルが彼の人生で認めた魔導士は、フランシスとあのアダム、彼自身の3人だけでもあると。さて、力技のように魔術を使う少年魔導士・ネイサンに、魔導士アダム・ポール・タウンゼントはどう対峙するのか、とフランシスはほくそ笑んだ。
―7― ダニエルと名乗った青年
・ レイナたち”6人”を乗せた荷馬車は、雪解けの道を走り、ジェニーの祖父アダムがいるアレクシスの町へと向かっていた。荷馬車には、レイナとジェニー、ルーク、ディラン、トレヴァー、そしてあの黒髪の青年ダニエル(サブタイトルにもあるし、もう伏字にしておく必要はない)も乗っていた。
・ 敬語がデフォルトのダニエルがルークたちにこうして同行している理由。それは、彼はなんとあのフェロモン美男子・ヴィンセントと非常に関係が深い者であるらしい。そしてルークたちがダニエルが側につけば、ヴィンセントも自分たちと行動をともにすることを保証すると……
・ ダニエルとヴィンセントの関係は良く分からなかったが、刺客(魔導士ヘレン)も登場してきたことだし、いつまでもリネットの町にとどまっているわけにはいかないと、アレクシスの町へと取りあえずダニエルも連れていくことに。
・ 地形的に、元ヤ〇ザ風のおじさんが操る荷馬車を走らせることができる場所まで来たレイナたちご一行は、ここからは歩いてジェニーとアダムの家にまで行くことに。アダムへと続く道は、足元も悪く、言葉通りの獣道であった。
・ その獣道を歩きながらの話をするうちに、様々なことが判明する。尋ね人であるアダムは絵に描いたような頑固者らしいということ。そして、ジェニーはまだ赤ちゃんだったころに、アダム以外の家族全員を事故で失ってしまったため、2人きりの家族であるということ。
・ そして、彼らの話題はニューフェイスの青年・ダニエルへと移る。ダニエルの名前は、”ダニエル・コーディ・ホワイト”であると。レイナはその名前を覚えていた。アリスの町の領主夫妻の長男と同姓同名であるダニエル。単なる同姓同名じゃなくて、なんと本人。ダニエルは貴族――いや、”元・貴族”であったのだ。徐々に縮まっていっていたはずの彼との距離に、生まれながらの身分差という目に見えぬ亀裂が生じてしまった。だが、何やら自ら貴族の身分を捨てたらしいダニエルは、もう自分は貴族ではないし、今まで通りで(元貴族だからといって敬わなくても)構わない旨をルークたちに告げる。
・ 歩みを進めるレイナたちであったが、何やら自分たちが向かっている方向より尋常ではないほどの冷気が流れてきていた。アダムがいるであろう家が見えてきたものの、この不気味な冷気があの家より発しだされているのは明らかであった。まさか、悪しき魔導士たちが先回りをしてアダムの家に奇襲をかけ、決してあってはならない事態が起こってしまったのでは?
・ 恐る恐る家の中へと足を踏み入れるレイナたち。家の中は一層冷たく、そして薄暗く、まるで巨大な冷凍庫のようであった。しかも、それだけではない、部屋の中央のひらけた空間に白い布を胸までかけられて、まるで死人のように寝息もたてずに横たわっている者がいたのだから……
―8― 矢継ぎ早に生じる謎と2人の刺客
・ 白いシーツを”平らな胸”にまでかけられて、死人のごとく横たわっている者。まさか、悪しき者たちに殺害されたアダム・ポール・タウンゼントでは……とレイナたちは、最悪の想像をしてしまった。けれども、窓を開け、薄暗かった部屋の中に太陽の光が差し込むと、横たわっている者がアダムであるはずがないことが判明。横たわっていた者は、グレーの髪のまだ”年若い青年”であったのだ。
・ このグレーの髪の青年は、レイナはもちろんルーク、ディラン、トレヴァーも面識はなく、ジェニーも知らない者であった。しかも、この青年には脈がなく明らかに亡くなっており、さらにそのうえ、青年の両手首にあった腕輪に彫られていた文字より、ダニエルがその知識から推測したところによると、”この青年(フレデリック)は200年前以上に生きていた者では……”と。ジェニーの祖父アダムの姿は見えず、そのうえ200年前に生きていたとしか思えない青年の”新鮮な死体”がある。一体、これはどういうことであるのか?
・ とその時、青年の胸にまでかけられていた白いシーツが風に飛ばされ宙を舞う。どうやら、シーツの下は全裸であったらしい青年の裸体にジェニーが悲鳴を上げ、レイナの手をとって家の外へと逃げ出すというお約束の展開に。
・ ジェニーの家に取り残されたルークたち4人の前に、”彼女の悲鳴を聞いたらしい老人”が家の奥より駆け付けてきた。この老人こそ魔導士アダムであった。アダムは見知らぬ4人の青年が家の中に勝手に入り込んでいることに驚くも、アダムはこの家へと向かってくる”本当に悪しき者たち”の気配に気づいた。
・ その”本当に悪しき者たち”に気づいたのは、アダムだけではなかった。ジェニーとともにもう一度、家の中に戻ろうとしていたレイナは、板のようなものの上に乗り、冬の青空を風を切って飛んでいる2つの人影をはっきりと見ていた。どうやら、少年らしき影と豊満な女性と思われる2つの人影。フランシスでないのは明らかだ。
・ 何やら魔導士であるらしい少年の方の影は、手の内に稲妻のような”気”らしきものを溜めたかと思うと、ポイッとまるでゴミでも捨てるようにアダムとジェニーの家へ向かって放り投げたのだ。
・ 大爆発。鼓膜が破れてしまったかと思うほどの爆発音と地響きが、ルークたちが残っている家を震源として発せられた。レイナとジェニーはとっさに身を伏せたため大怪我をすることはなかった。けれども、震源地となった家の中にいたルークたちは……
・ ルーク、ディラン、トレヴァー、ダニエルは、危険を察知したアダムが咄嗟にはった気のバリアにて守られ無事であった。空へと浮かんでいた攻撃主の少年は、もちろん喜び勇んで奇襲をかけに来た少年魔導士・ネイサン。ネイサンは自分からアダムへと自己紹介する。ネイサンは自身の魔導士としての力を強烈なまでに信じ、あまりにも軽くポップにその力を使おうとしていた。彼の狙いは、ルークたちというよりも自分と同じ魔導士であり、相当の実力者だと噂されているアダムの方であるらしかった。
・ そう、ルークたちの相手はネイサンとともに奇襲をかけてきた長身で筋肉隆々の超武闘派女性・ローズマリーであったのだ。
―9― 頑固じいさんと凍った騎士(1)
・ 両手に剣を持ち、ルーク&ディランへと凄まじい跳躍力で飛びかかってきたローズマリー。何とか彼女の刃を防ぐことができたルーク&ディラン。でも、ローズマリーは彼らの腕にビリビリとした痺れが伝わってくるほどの怪力の持ち主であった。
・ ローズマリーは次なる刃をトレヴァーにも向ける。ルークたちと同じく、なんとか彼女の刃を防ぐことができたトレヴァーではあったが、彼女に金的蹴りをされそうになり隙が生じてしまい負傷。ダニエルは機転を利かせ、ロープでローズマリーを拘束しようとするも、ローズマリーにどつかれる。要するにルーク、ディラン、トレヴァー、ダニエルの4人とも、ローズマリーにフルボッコ。
・ 一方のアダムとネイサン。ネイサンは、アダムに馬鹿にしたような口をききつつも、自分の背中に回した片手でわずかな時間のうちに気の塊を練り上げていたのだ。パワー系ネイサンの2発目の気の攻撃。無邪気に荒らし破壊したこの地に、滅びへ向けて2度目の気を全力投球したネイサン。
・ レイナとジェニーは、真っ青になって駆け付けてきたルークとディランに覆いかぶさられかばわれる。そして、アダムの防御の気によってレイナたち全員がしっかりと守られ、死者は出なかった。
・ アダムの反撃により、木の板に乗って宙に浮かんでいたネイサンはその木の板という足場を真っ二つにされる。(ちなみにフランシスは木の板などなくても宙へと浮かんでいたが、ネイサンは木の板に乗ることによって宙へと浮かぶことができていた)足場を失ったネイサンは、ローズマリーに”片腕で”抱きかかえられ、彼女とともに退却。
・ ネイサンに滅茶苦茶にされた家のかろうじて残っている床部分で、ローズマリーにもみくちゃにされた青年たち4人の手当を行おうとするレイナとジェニー。アダムは外傷もないが、やはり年甲斐もない荒業を行ったためか相当に体力を消耗したらしかった。燃え残っている床には、青年フレデリックの死体も横たえられていたままであった。しかし、その時、信じられないことが起こった。明らかに死んでいたはずの青年・フレデリックがなんと、そのグレーの瞳を開いたのだ!
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