第2章 魔導士フランシスはやはり強敵。そして、アンバーとの別れ……

 第2章の尺をまるまる使った、魔導士フランシス(と彼に同行してやってきたマリア王女、人形職人オーガスト)との戦いの章です。しかも、真冬の夜の冷たい雪の中での……

 強大な魔導士としての力に加え、様々なオプションを身に付けているらしいフランシスは、アンバーたちのように(王国の直系の王族に仕えているような)優れた魔導士でも倒せないほどに強い奴でした。何の力も持っていない主人公・レイナは、当然、何も出来ません。

 それに加え、この章ではアンバーがマリア王女に殺されてしまいます。



―1― 青き月が隠れし夜


・ ”上空に浮かんでいる船”――通称:神人(かみびと)の船で朝日を眺めているオーガストは、傍らにいる愛しいマリア王女に胸を高鳴らせ、股間を膨らませつつも、”この船の恐ろしい真実”と”数日前に顔をあわせたフランシスの仲間たち”に恐怖を感じずにはいられなかった。

・ そして、ついに夜がやってきた。フランシスとの決着の夜となる「青き月が隠れし夜」が。この戦いには、ルーク、ディラン、トレヴァーの3人も同行。ちなみに数刻前、レイナはアンバーより”万が一の時のため”にと「苦痛なく肉体が永遠の眠りにつくための薬」を手渡されていた。

・ うねうねとした気味の悪い触手のような靄とともに、魔導士フランシスたちがその姿を現し始め……



―2― 弄ばれ、嬲られる正義(1)


・ 相変わらず余裕綽々で慇懃無礼なフランシス登場。魔導士カールとダリオが先手を打ってフランシスに攻撃しようとするも、フランシスに見破られ、ダリオが負傷。フランシスは白い2匹の超大蛇を気で練り上げて、得意気にレイナたちを囲み攻撃してくる。魔導士たちに、反撃の隙を与えるつもりはないようだ。

・ フランシスは雪でレイナたち全員を押し流した。この時、レイナは、隣にいたアンバーがフランシスが操っているであろう深紫の邪悪な手に掴まれて、攫われていくのを目撃した。

・ フランシスは、レイナ(マリアの肉体)は雪で押し流しつつも”ちゃんと保護”していたらしく、わずかな時間気を失っていたレイナはすぐに目を開けることができた。皆を助けようと懸命に雪を掻き分けるレイナであるが、マリアとオーガストにつかまってしまった。



―3― 弄ばれ、嬲られる正義(2)


・ 物語の視点は、雪に押し流されたものの、何とか目を覚ますことができたルークへと変わる。幸いにして、彼には戦闘不能になるほどの大きな怪我はしておらず、ディラン、トレヴァー、そしてカールやダリオとも合流することができた。そんな彼らの前に、フランシスが魔術をかけた”ジョセフ王子の人形”が現れ、攻撃してくる。ルークたちはあの人形は自分たちに任せて、カールとダリオにはジョセフ王子やレイナたちの救出を優先するように伝え、剣を手に無数のジョセフ人形へと向かっていく。

・ その頃、つかまってしまったレイナはやはり、マリアに狂気に溢れた言葉で虐められていた。マリアの中には人間としてあるべきものが最初からないのだと再認識するレイナ。だが、とらえられているレイナの元に”本物のジョセフ王子”が助けにきたのだ。



―4― 風の棺に運ばれし者(1)


・ またしても物語の視点が変わる。次なる視点はアンバーへと。フランシスに拉致されたアンバーは、フランシスが作り上げた空間の中に”招待”されていた。その空間における教会の中には、何やら不気味な棺があった。そして、その棺の中には錆びた剣と漆黒の手枷と足枷が……

・ ヌウッと姿を見せたフランシスに身構えるアンバーであるも、フランシスは攻撃をしてくるわけでもなく、相変わらずクドクドと長い話をし始める。その長い話を要約すると、フランシスは魔導士の力を”後天的”に手に入れたらしい。その力に加え、不老&空中浮遊の特性を持つ神人(かみびと)の力まで手に入れている証拠を彼女に見せる。

・ フランシスは、「すべてが終わるまで、自分の計画に必要な道具である、あなたにはここにいてもらう」といった趣旨のことをアンバーに告げる。けれども、そんなフランシスの隙をつき、アンバーはなんとかこの空間より逃げ出すことに成功し始めていた。



―5― 風の棺に運ばれし者(2)


・ 一方、ジョセフに捕まったマリアは金切声で喚き、暴れ続けていた。王国一高貴な兄妹による兄妹喧嘩が、レイナの前で展開されていた。ジョセフがマリアの首を折って、彼女を殺そうとしたが、生身の人間ではなく”人形の体”にいる彼女を殺すことはできなかった。

・ その時、突如生じた空間のひび割れより、アンバーが転がり落ちてきた。彼女は、”フランシスが作り上げた空間より逃げ出すことができた。アンバーの無事脱出に加え、離れたところではルークたち3人もジョセフ人形を無事に倒すことができており、事態は好転し始めたかのようであったが……

・ フツフツと静かな憤怒をたたえているフランシスが、アンバーとレイナ、そしてマリア王女までも自前の不気味な2本の触手でそれぞれ掴み上げ、拉致する。奴いわく「場所を変える」とのことで、レイナたちはどこか別の山の中へと連れてこられてしまった。



―6― 風の棺に運ばれし者(3)


・ 絶体絶命。アンバーは、フランシス保有の不気味なアイテムである棺の中に囚われてしまって身動きができなくなってしまう。ついに、フランシスはマリアの中にいるレイナを追い出し、本来のマリアの魂を戻そうとする。

・ マリアの肉体とレイナの魂が今にも分離されんとした時、アンバーが反撃。そのうえ、アンバーはフランシスによる戒めを破壊し、棺の中から脱出する。アンバーによる瞬間移動によって、レイナとアンバーはフランシスたちより逃げようと……

・ だが、あと少しのところで、フランシスに追いつかれてしまった。レイナは木に縛り付けられ、アンバーは負傷させられたうえに、全裸にまでさせられてしまう。アンバーを犯そうとするフランシス、大嫌いな女が犯されようとしている光景に恍惚とし始めている倒錯した性的趣味のマリア、恐怖とおぞましさに泣き叫ぶレイナ。

・ けれども、フランシスがアンバーの肌に触れようとしたその時、ジョセフが現れ、フランシスに右ストレートをくらわせたのだ。



―7― 風の棺に運ばれし者(4)


・ 魔導士たちが力を合わせて行った瞬間移動によって、ジョセフ、カール、ダリオが、レイナとアンバーがとらえられていた場所へと駆け付けることができた。フランシスをその拳でぶっ飛ばしたジョセフだけでなく、カールやダリオもガチギレし、フランシスを叩きのめそうとする。

・ フランシスは、雪の上に自分たちを取り囲む直径十数メートルの炎の円を即席で作った。この炎の円の中で、奴はジョセフ、カール、ダリオと男としての決着をつけようとする試みらしい。一方、レイナ、アンバー、マリアの女たち3人は完全にその戦いの蚊帳の外へと置かれてしまった。

・ だが、フランシスに「大人しくしておけ」といったマリアが隠し持っていたフランシスの錆びた剣で、動くこともやっとであったアンバーの左胸を不意打ちで刺したのだ。ジョセフの腕の中で、アンバーは息を引き取り、19年の生涯を閉じた。



―8― 風の棺に運ばれし者(5)


・ 犬猿の仲であり、なお兄の思い人でもあるアンバーをついに殺すことができたと、無邪気な少女のように狂喜しているマリア。ジョセフが死んでしまったアンバーの名を呼び続け、冷たくなりゆくアンバーの肉体を揺さぶり続けているのも、彼女の残酷欲のボルテージを高めていっていた。

・ その時、事切れたはずのアンバーの肉体が光に包まれ出したのだ。アンバーは、アポストルとなった。彼女は”この世を守る大きな存在”(つまりは第1章でゲイブくんに手紙を託した存在のようなものに)となってしまった。本来なら土へと返るはずであった彼女の肉体は、その清廉な魂とともに風へと運ばれていった。

・ 自分の計画に必要な”道具”であったアンバーを亡き者にされてしまったフランシス。堪忍袋の緒が切れたフランシスは、マリアを”魂ごと”八つ裂きに。雪の上に、バラバラになったマリアが散らばった。その魂すら、永久に消滅させられそうになっていたマリアであったが、人形職人オーガストが走り出てきて、彼女の魂のひとかけら(人形の頭部)をフランシスより奪い逃走した。

・ 青き月が隠れし夜は明けた。フランシスは一時退却を表明し、消えた。止まることのない涙をぬぐいながら、帰還の道筋へと進むレイナ、そしてカールとダリオの元に、アンバーの最期の地に1人残ったジョセフの吠えるような慟哭が響いてきた。

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