第25話 終戦

昭和20年8月5日 横須賀


「三笠姉さま。最早この国は詰みです。私がふがいないばかりにこのようなことになってしまい面目次第もございません」


「いえ。長門貴方はよく戦いました。しいて言うならば私があの時いえ。最早それは言っても詮無き事。こうなってしまってはせめて最後は堂々としましょう」


私がそういうと長門は項垂れて私のもとを去ったわ。彼女も頭に包帯を巻いていたわ。そして横須賀の方も米軍の空襲により、多数の船がやられたわね。私の同期だった敷島も直撃弾を食らって着底状態となってるわね。最早海軍どころか日本自体組織的抵抗は不可能ともいえる末期状態となってるわね。


そして翌日広島に新型爆弾が投下されたというニュースを聞き同月9日には長崎で同じことが起きたそうね。そして10日にはソ連が参戦してきたわね。ことに至っては四面楚歌と言える状況になったということね。


そして14日に私の元に米内提督と鈴木貫太郎氏が訪ねてきたわ。


「二人がわたくしの元にきたということは例の宣言を受諾するという事でよろしいのですね」


「そうなる。三笠殿。そのなんだ残念であるが、少なくとも国が亡ぶよりもたとえ屈辱を味わおうともという事を陛下の決断なされた。すでに翌日放送する音盤の録音は無事に完了した。で、政府や皇室はすでに鏑木侍従長たちが終戦に向けて工作中だ。

海軍の方もすでに陸戦隊が皇居や首相官邸に回っている。これがしくじれば日本は本当の意味で消失となる。三笠殿。貴殿には栄光と凋落を見せてしまったようですまなかった」


それを聞いた私は言う。


「いえ。それは仕方ありません。我らは道具です。人の手によりすべてが動きますので」

「そうだったな。では三笠殿私はこれで失礼する。達者でな。積もる話は米内のやつがあるそうだ」

「はい。鈴木さんもお元気で」


で、鈴木さんが去ったあと米内氏と二人きりとなった私ですが。

「いやはや。あの時、連合艦隊司令長官にしてくれると言った。そして首相にも慣れたがまさかこの年齢になってまでこき使われるとは思わなかったがな」


「不服でしたか」


「いや。そうではない。ただ、こうなると判っていたならばだな。だが、お互い神ならぬ身だ。未来を知らぬもしかたないな。そのなんだわしもこれが御国に対しての最後のご奉公となるだろうな。わしの命数も残りわずかだろうしな」


「そうですね。その多分これが最後になるでしょう良い余生をお過ごしくださいませ」

で、私と米内はこの夜最後の酒盛りをしてましたわね。


翌日の12時にラジオから陛下のお言葉によりポツダム宣言受諾をし停戦となったという放送が流れたわね。私や動ける皆は整列してその放送を聞いたわね。


そしてその直後厚木で反乱騒ぎが起きたそうだね。私もあとで知ったけれど高槻という航空兵も厚木で終戦を迎え、その反乱には参加せずその情報を連合艦隊司令部に伝えたそうね。


そして、8月30日にGHQ総司令であるマッカーサー元帥となる人物が厚木飛行場に降り立ったそうね。そして9月2日に降伏文章調印式がミズーリで行われたわ。


そしてその際に私は例の宝刀を長門に託したわね。


「長門。例の菊一文字をミズーリに渡しなさい」

「姉さまそれは。かつて陛下から賜れた。由緒ある一振りでありますが」

「だからこそです。我らは最大限譲歩しますという意思表示です。長門そのケガした身でありながらこのようなことを申し訳ない」


「いえ。伊勢たちは皆動ける体ではなく、鳳翔では荷が勝ち過ぎてる。故に動ける私が最適ということになりますね。なんというか土佐が言っていたことが本当になりましたな」

「そうですね。長門。貴方には苦労を掛けるわね」

「いえ。それは問題ありません。私も総旗艦でありました。ならば最後まで堂々と行こうと思います。おそらく私もいずれ処刑される身でしょうが大姉さまだけは何とか生き延びさせますので」


そして長門はそう言って調印式に出席したわね。

その後連合国艦隊による裁判が行われましたね。そして長門達は皆解体や標的艦として処刑されたわ。

私は私で管理されるものもなく。戦後の物資不足により私の数多くの艤装がはぎとられ船内では連合軍将校のダンスホールとして散々使われたわね。



そして私はそのまま朽ち果てる覚悟をしてましたよ。




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戦艦三笠の回想録 テンマP @taku2639

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