第16話 大東亜戦争勃発せり

昭和一六年 11月 横須賀


「三笠姉さま。申し訳ありません。ついに我が帝国は米英蘭と戦端を開くことが決定しました。我々は戦いたくはないのですが向こうが在外資産凍結という行為に出た以上もはや・・・」

と長門の報告を聞いた私はいう。

「そうですか。もはや対米戦は必須ということになりますか」

「はい。我が国は回避しようと米英と交渉するもです」

「やはり。米国は経済を活性化させるべく我が国を出汁にしましたか」

「そうですね。私たちもいずれ枕を並べて討ち死にでしょうね」

「そうですね」

そんな会話をしたのが11月末でしたね。その頃にはすでに単冠湾に集結していた赤城を旗艦とした6隻の空母機動部隊がハワイ真珠湾に向けて出航していたわね。まあ、それ知ったのは後になってからでしたが。

それから数日後の一二月八日の早朝にラジオから臨時ニュースが流れ米、英、蘭と戦争状態に突入したというニュースを聞いたわね。それから連日勝った勝ったの騒ぎだったわね。私はその様子を見て長くはないとみていたわね。

そして翌年の四月に米空母から双発爆撃機による日本空襲があってそこでMi作戦となるものが発案されたそうだけどその頃には慢心があったのも事実だったわね。

そして六月にミッドウェー海戦がおこなわれ結果は4隻の正規空母を喪失というもはや壊滅的な損害を受けたと言える被害だったわね。まあその前後に超ド級戦艦の大和が就役しましたが肝心の彼女は全く戦場に役立たずだったそうだしね。


MI作戦発動前に加賀たちと会ったのが最後になったわね。その様子をおもいおこすとすれば・・・

「三笠姉さん。お久しぶりでございます」

「ええ。単冠湾出撃前夜以来ですね」

「そうですね。三笠さん。われわれはMIを攻略する計画があります。そしてこれが最後になるやもしれません」

と加賀が言うと赤城が言う。

「加賀さん。我々が負けるわけがありませんよ」

「そうですよ。私たち空母機動部隊が負けるなんて」

と蒼龍が言うと飛龍もまた。

「そうですよ。ですが私たちも連戦で疲労が来ているのも事実です。加賀さんの心配もあるかもしれません」

という。

「そうね。慢心は禁物だけど。今の軍上層部は私たちの活躍に勝った勝ったの浮かれっぷりこれはとても良くない兆候ですよ」

「そうですか。加賀貴方もしかして」

「ええ。おそらく米帝も我々を出し抜くべく奇抜な作戦を立てるでしょうね。そして我々の何人かもしくは全員消えるかもしれません。我ら空母はいわば可燃物の塊である航空機やそれの弾薬を満載した危険な船。出撃直前に奇襲をくらってしまえば行かなわれわれといえどもでしょうね。杞憂ですめばですが」

「そうですか。では今生の別れになるやも知れぬが今宵の宴を楽しんでください」

「感謝します」と赤城。

そして宴が進んだわね。まあ、加賀さんは早々と酔いが回ったといって中座したけれどね。

その様子を見て蒼龍が言う。

「なるほど。加賀さん高槻という下士官にゾッコンなんですよ。まあ、私たちや翔鶴、瑞鶴も祥鳳や瑞鳳、龍驤たちも彼の女ですがね。でも加賀さんが一番彼をしたっているのよね。羨ましいけれど。私たちはどんなに殿方になっても子供をなすことだけはねぇ~。それがある意味恨めしいともいえるかしらね」

と酔いが回りながら蒼龍が言う。飛龍もまた。

「多聞丸に私は告白したけれどあの人奥方様一筋と言われちゃってねぇ。もしも私が死ぬようなことがあれば彼だけはなんとしても活かせないとね。あの人は将来の機動部隊を率いる人物だからね」

「そうですね。今南雲氏が司令ですがあの人はむしろ水雷戦隊を率いたほうがですからね。つくづく海軍人事は愚かですよ」

とまあ軍部批判とも言えることが蔓延してましたね。


そして宴が終わり。彼女たちは出撃しましたね。そして彼女たちは二度と帰っては来なかったわね。そして高槻というパイロットは重度の火傷を負うも生き延びたと大和から聞きましたね。


この敗北を意味するところ我々はもはや攻勢には出れないということを示してますが本当の地獄はこれからになるわけです


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