第15話 三笠が特別観艦式に参列する
昭和15年 10月
中国戦線が泥沼の戦いになり、その上英国、米国などの石油禁輸措置などの経済封鎖が発動され対米戦もやむなしという状況に日本が追いやられているになっていた。
私は日々の研鑽を怠らず読経と食料確保のための農作業を衣笠山の麓の庵で過ごしていたわね。
そんなある日長門たちがやってきたわね。
「三笠姉さまお久しぶりでございます」
「そうね。ところで長門たち一同がきたのは何ゆえに」
「はい。先に特別観艦式を行うので三笠姉さまにはぜひとも出席してもらいたく参上しました」
私は長門に対して返事をしたわね。
「私はもはや隠居の身。公式の場には出席は致しませんと言ったはずですが」
「そこを曲げてお願いいたします。対米戦ももはや止むなしという状況となっている昨今です。今の艦艇たちの姿も最後となるでしょう。その陣容を三笠姉さまには見てもらいたくお願いに上がりました」
そしてふと見ると長門以下平伏していたのを見て私は言う。
「わかりました。貴方方がそこまで言うならば私も参列致しましょう」
「ありがとうございます。これで我ら一同心置きなく戦えます」
そして観艦式が行われたわね。加賀たちは参加できなかったのですが空母赤城を筆頭とした空母艦隊。戦艦長門を筆頭とした戦艦部隊。そして重巡に率いられた水雷戦隊や間宮以下の補給、整備部隊も一同にならび私も拝謁いたしましたが壮観なものでした。
そして観艦式が終わり時局はいよいよ退っ引きならぬものになってきました。
そして16年の4月ごろ米帝はついに我が国の対外資産凍結という戦争行為をしてきましたね。その頃連合艦隊司令長官の五十六さんが私のもとにやってきました。
「お久しぶりですね。五十六さん」
「ああ。三笠も健康そうで何よりだ。三笠も新聞を読んでわかるだろうが米国はどうやら我が国を戦争に引きずりこみたい腹のようだな。まあ、三国同盟なんて破滅に導く同盟を組んだ陸の阿呆どももあるがそれよりも腹立たしいのが艦隊派の愚か者どもだ。奴ら今の戦の本質をまるでわかっとらん。三笠には悪いがかの戦いであのふたりを殺さなかった影響だな。いや。パーフェクトに勝ちすぎたのが。いや。過ぎた事を言っても始まらん。ワシなりに戦争回避する手を打っているのだが。それよりも空母部隊を第二艦隊ないしは第一艦隊に混ぜて新たな機動部隊を計画してるが軍令部の阿呆どもがそれを承認しない。こまったもんだよ」
「そうですか。たしかに今にして思えばタブーを犯してでもあのふたりをネルソンと同じく戦場で殺るべきでしたね。まあ、神ならぬ身ですので私も」
「確かにな。生きた神ほど危険な存在はないのも事実だしな」
「そうですね」
そして山本長官と別れましたね。そして運命の12月8日がきました。
ラジオから臨時ニュースが流れ米国、英国、オランダ、と交戦状態に突入したと伝えられて連戦連勝の報道がなされているようですが、私自身はこれはまずいことになっていると感じていましたね。
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