第13話東郷閣下逝去する

昭和九年5月30日 横須賀にて

新聞の号外が出ていたので読んでみると東郷閣下が逝去なされたという記事を読んだわね。なんというかあの人もとうとう逝去なされたわけですが死ぬのが些か遅すぎた感じを私は思いましたね。


そして同年6月5日に国葬が行われることになったのですが私はその葬儀には参列はいたしませんでしたね。私は既に第一線を離れた身ですし、今となってはですが日本海沖で私もろともあの人を殺さなかったことを今にして思えば後悔していますよ。


前日に長門たちが是非とも参列をと言って来たけれど私は拒みましたね。

その様子を再現すると

「三笠大姉さま。明日東郷元帥の国葬が行われます我々としては大姉さまに参列をお願いしたくまいりました」


「ありがとう。ですが私は遠慮させてもらいます。もはや私は隠居の身。たとえこのような国葬とはいえ出れば長門。貴方方の立場を悪くさせてしまうでしょう。気持ちはありがたく頂いておきます。長門。悪いけれど私はここで彼の冥福を祈らせてもらいましょう」

「わかりました。そこまで言うならば。表向きは三笠姉さまは夏風邪にかかって臥せっているということにしておきますので」

「ありがとうね」

そして葬儀はつつがなく行われたわね。まあ遺骨などは本人の意思とは無関係に埋葬された上に本人は嫌がっていたけれど神格化されたことを思えば私の罪も相当なものと思うわね。

そして時代は戦乱の世になりつつあるわね・・・。



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