記念艦編 (戦前、戦中編)

第11話 戦艦土佐が処分される

退役し記念艦として保存が決まった私ですが、ワシントン軍縮条約の影響で建造中止になった船もいるわけですよ。


八八艦隊計画に基づいて建造され、進水した巡洋戦艦赤城、天城、戦艦加賀、土佐は条約に基づいて建造が中止され赤城、天城が空母に改造が決まったのですが生憎と天城は先の大地震の際に竜骨が折れるという大損傷を負ったのでそのまま廃艦となりその変わりとして加賀が空母への改造が決定されたわね。

そして土佐については残念ながら新型砲弾の実験台としてその生涯をおえることになりそうね。まあ、私の私見だけどあれほどの巨船を破壊するなんて惜しいわね。あれなら弾薬、燃料補給艦や工作艦などの支援艦艇の母体として使えるものをね。

まあ、人が決めた事ゆえに私たちが言っても詮無いことね。


そして隠居している横須賀郊外の一軒家に長門がやってきたわね。

「三笠姉さま。長門まいりました。今日はそのとうとう土佐の処分が決まりましたことを伝えたくて」

「そう。やはり廃艦ですか。せめて補給用の艦艇として転用できればとおもったのですがどうやら東郷元帥閣下と宮様の老いぼれた頭脳ではそのへんの事まで気が回らなくなってしまったようですね。私たちの頃からすでに情報と補給を制した者が戦に勝つのが定石となっているのにも関わらずわたしの戦いがあまりに完璧すぎた故に十年一日の如き戦術研究ですか・・・。ところで土佐はなにか私たちになにかいいませんでしたか」

長門に質問すると彼女は口ごもる

「その・・・。少々言いにくいのですが。姉さまが宮様や神様とともに対馬で散るべきであったとか。色々と言っています。我が帝国も長くないとか凧もどきの飛行機によって我々戦艦は駆逐されてしまうなどと言っているようです」

「そうですか。たしかに今の東郷閣下たちの様子をみればそれもやむなしですね。まあ、飛行機が次世代の女王というのは私も否定はしません。今はまだよちよち歩きのお子様でもあと10年、20年したらどうでしょうかね。私たちは恐竜的な進化をしてしまった感じがするのも事実ですのでね。長門。土佐にたいしては彼女の要望を可能な限り全て叶えてやりなさい。それが死にゆく者へのせめてもの手向けというものです」

「わかりました。まあ、毎日お風呂に入りたいとか美味しいものが食べたいなどの要求なので手配いたしましょう」

それから数日後再び長門がやってきたわね。

「土佐をヤったのですね」

「そうです。艦隊決戦のための新型砲弾のデータ収集のためとはいえ。果たしてそのような砲弾が使われるのか私も些か疑問が沸いてきましたよ。私なりに米軍の戦闘パターンというのを考えてみたのですがどう考えても艦隊決戦が起こるとは思えないのです。理由はいくつかあります」

私はその理由を尋ねてみた。

「なぜでしょうか」

「そうですね。まず第一にアメリカというのは冒険的な行動を行うにしても大量の物資を如何に補給するかです。そのためには太平洋には無数の島々があります。それを利用して大量の補給用艦隊や補給用の集積所としても使えるでしょう。そして我々の商船団を狩ってしまえば島国の我々は戦わずして日干しですよ。弾薬、燃料の尽きた艦船なんかただの鉄屑ですから。私が米軍ならばそうしますよ。ほんらいなら島を確保するための陸戦部隊の拡充や長期戦に対応した大型タンカーや弾薬補給船や修理整備を行う船が大量に必要になるのですがどうも赤レンガの阿呆どもは分かっていない節がありますね。その処刑後に金剛から土佐が残したノートを読ませてもらったのですのでおそらく彼女のノートどおりになるならば我々は無用の長物となると思います。ですがせめてそうなるとしても精一杯やろうと思います」

それを聞いて赤レンガの無能ぶりを思い知ったわね。その後海軍などの大軍縮を言う議員先生とも邂逅したわね。まあ、娘の金剛と懇ろになっている兵隊の親父さんだそうですが・・・。それは後に話しましょうかね。

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