改札
「僕は駅の改札を上手に抜けたんだよ。誰より上手に抜けたんだ。そして気づいたらここにいた。ただ気づいたらここにいたんだ。」道端で酔っているおかしな男に絡まれないよう、みんな目を合わせずに去っていく。見向きもせずに通り過ぎていく。「どうしてあんなに上手に、上手に改札を抜けたのに僕はこんなところにいるんだろう。ねえどうして、どうして僕はこんなところにいるんだろう?」男はさらに大声で喚いた。土器になったタコみたいな顔色。ゆらゆら、ぐるぐる宙に浮かんでいる頭は視点の定まらない目玉のようだ。誰に話しかけるわけでもなくただ叫んでいる。水に浮かんでいるよう。今にも沈んでしまいそうである。「ねえどうして、どうして?僕は誰よりも上手に改札を抜けたのに。どうして?」
蝉みたいに電話が鳴った。
ジジ...ジジジ.....
男はポケットからそれを取り出し、耳に当てる。
「はい...。もしもし...。はい。はい。でも私は改札を上手に抜けましたよ。はい。はい、はい....。」
どおん!!
突然携帯が爆発し、男の頭は無くなった。首から下だけになった男。黄ばんだ半袖Yシャツに黒いズボン....。男はそれでも先ほどのように、今にも沈んでしまいそうな動きを一人続けるのだった。
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