傘、邪魔

 傘を持って電車に乗っていると傘が邪魔だ。


「おい邪魔だ!」


 と叱りました。


 バババババッ!!


 人々は私を避けていきました。私の周りにスペースが出来ました。これは、勘違いされているに違いない。


「ごめんなさい。私は傘に言ったんです。皆さんに言ったのではありません。怖い思いをさせてしまってごめんなさい。」


 と言いましたが人々は戻ってきません。


「お前も謝れ!」


 と再び傘にキレました。傘は何も言わずただそこにいるだけです。本当に邪魔だ。


「謝れ!!」


 どんどん人々が離れていきます。全部傘のせいだ。


「お前のせいで、みんないなくなっちまっただろうが!!」


 ボキィーッ!!


 私は膝で傘を折り曲げました。もう傘は傘ですら無くなってしまったのです。


「はっはっはっ、なんなんだお前。ついに傘でもなくなったな。なんなんだ。なんなんだ本当に。」


 この車両にはもう誰もいなくなっていました。


「なんなんだ。なんなんだお前は本当に....なんなんだ....。」


 私は傘だったものを抱きしめて泣きました。


 完

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