かっこいい髭剃り

 コンビニで買った髭剃りの形がカッコよかったので飾ることにしました。玄関にセロテープで貼り付けるとこにしました。


 ペタペタ


「俺は髭を剃りてえんだよおー!!」


 と髭剃りは泣きました。玄関のドアに貼り付けていたので外にも鳴き声が聴こてしまっていたようで虐待をしているんじゃないか....と噂がたってしまったみたいです。児童養護施設の方がいらっしゃいました。


 ピンポーン


「あの、佐々木さん。あなたの家から日常的に泣き喚く声が聞こえるという通報が入ったんですけど。」


「は?知らねーなあ。」


「そうですか.....。うわっ!!なんだこれっ!!」


 その頃にはもうびっしりと髭剃りがドアに貼り付けてありましたのでそれはもう不気味な様子でした。


 パチッ!!パチパチッ!!


 児童養護施設の方の驚いた声を聞いて髭剃りたちが一斉に目を覚まし、そして鳴き始めました。


「髭を剃らせろ〜!!」


「髭を剃らせてくれ〜!!」


「たのむから髭を髭を〜!!」


 ドアにつけられた数百の髭剃りたちが一斉に身を震わせ鳴き始めました。


「髭〜!!」


「髭〜!!」


「わあ!!蝉だー!!蝉が虐待されているー!!」


 と、職員の方は言いました。


「セミを助けなきゃー!!」


 ビリビリビリーッ!!ビリビリーッ!!


 職員の方はドアについた髭剃りをがりがりびりびり剥がし始めました。


 がりがりがりがり、びりびりびーっ!!


「や、やめろー!!何をしているー!!」


 私が叫んでも、職員の方はやめません。


 髭剃りたちはセロハンテープの残骸を身体に残しながら、床に転がりました。


「髭を〜!!」


「髭を剃らせろ〜!!」


「毛を!!毛を剃らせろ〜!!」


 と、床で唸っています。


 ざわざわざわざわ


「毛を剃りたいんですか?」


 職員が尋ねると


「そうだ毛だー!!」


「毛だ毛だー!」


 髭剃りたちは大合唱しております。


「毛を〜!!毛を〜!!」


「ああ、そうなんですか......。」


 児童養護施設の方は黙り込みました。


「ならば私の毛をどうぞ。」


 ぬぎぬぎぬぎぬぎ


 施設の方は全裸になりました。


「うわあああああああ!!」


「毛だああああああ!!」


 髭剃りたちが蟻のよう西節の方に群がりカリカリカリカリカリカリカリカリ、じょりじょりじょりじょり。それはそれはグロテスクな光景でした。色とりどりの髭剃りに覆われた職員さん。


 じょりじょりじょりじょり、かりかりかりかり


 1時間ほど経ったでしょうか。ざわざわざわざわ。髭剃りたちが一斉にいなくなって、ツルツルの職員さんが出てきました。


「スッキリしましたありがとう。」


 職員さんは満足した様子でそのまま外へ出て行きました。

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