ボックスティッシュ人間・ジョン

 ボックスティッシュが街を行く。トコトコトコトコ街を行く。


「きゃあかわいい〜。」


「ボックスティッシュが歩いているわ〜。」


 パシャパシャパシャパシャ


「は?かわいくねぇよ。きめぇよ。」


 お、酷い言葉が聞こえてくるぞ。


「きもいかもしれないけど、かわいいわ。きもかわいいわよ。きもかわよ。」


 お、なんだか褒められているな。嬉しいな。嬉しいな。


 トコトコトコトコ街を行く。トコトコトコトコ街を行く。


「かわいいわあ!!かわいいわあ!!」


「素敵!!素敵ぃっ!!」


 いつの間にか、人々の群れが出来ている。すごい群れだ。すごい、すごい。


 ピピーッ!!ピーッピーッ!!


 これは警察が笛を吹く音。警察が笛を吹く音だ。


「このあたりでボックスティッシュが歩いているとの通報を受けた。知っているものは手をあげなさーい。ん、人だかりが出来ている。あれか、怪しい怪しい。ちょっと退けなさーい。退けなさーい。」


 ワーワーワーワーワーワーワーワーワーワー


 人混みに穴ができ、警察が入ってくる。


「君、ボックスティッシュだね。」


 凛々しいイケメンの警官が声をかけてきた。


「........。」


「君、ボックスティッシュだね?」


「.......。」


「答えなさい!!」


 怒鳴ってきた。怖い。


「ちょっと待ちなさい!!ほれ!!ほれ!!」 


 後ろからなんかしわがれた声が聞こえてきた。若い警官を押し除け、眼鏡をかけた白髪の老人がやってきた。


「ちょっと、なんですかあなたは。」


 動揺する警察官。


「私はこういうものじゃよ。」


 手帳を取り出すおじいさん。警察手帳?みたいだ。


「なになに、『警視庁鑑識課 カン・シキシキ』ですとな。これはこれは、失礼致しました。」


 顔を引っ込める警察官。虫眼鏡のようなものを取り出し私を観察するカン・シキシキ。


「ふーむ。これはボックスティッシュではないなあ。おそらく人間だろう。」


「そ、そうなんですね!!それは失礼致しやしたー!!!」


 タタタタタタタタッ!!


 慌てて走り去る若い警官。そう、その通り。私はボックスティッシュ人間・ジョン。そして、ボックスティッシュ人間・まさみを探している。今まで全くヒントを得られていなかったが、得られるかもしれない。この老人なら、この老人なら何かを知っているかもしれない。


「あの、あのすみません。ボックスティッシュ人間・まさみを知りませんか?ボックスティッシュ人間、ボックスティッシュ人間・まさみ。」


「あぁ、まさみか、、、。」


 遠い目をする、老人。


「そうだっ!!」


 突然何か思い出したのか、こちらを見つめる。太くて白い眉毛、老人独特の、力強い目。


「西へ、西へ行きなさい。」


 そういうと、カン・シキシキは後ろを向き去っていった。カンフー仙人のような、濃厚な趣があった。


 西へ行こう。


 私はそう決めた。西へ、西へ歩いてゆく。一人孤独に歩いてゆく。


 トコトコトコトコトコトコトコトコトコトコ


 しばらくゆくと、ドラッグストアがあった。なにか、感じる。第六感が、唸っている。入店。


「いらっしゃいませー。」


 店員の元気な声。私はボックスティッシュ売り場へ一直線。様々なボックスティッシュが並べられている。この中にボックスティッシュ人間・まさみがいるかもしれない。しかし、わからない。どうなのだろうか。店員さんに聞いてみよう。


「ボックスティッシュ人間・まさみはありますか?」


「そこになかったらないですね。」


 完

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