動物園デート

 あはたはあ


 たか子さんと隆くんは、動物園にデートに来ています。さんさん太陽、楽しい楽しいデートです。ああ楽しいな、ああ楽しいな。


 ツンツーーン


 おお、ツンツーーンしている。あれは、キリンだ。首がツンツーン、しているキリンだ。


「お、キリンがいるぞ。首が長くてすごいぞ。すごいぞ。」

 

 隆くんが興奮して言いました。楽しそうです。興奮していて素敵です。


「いいえ、あれは高層ビルよ。」


 花子さんが言いました。


「え、違いますよ。あれはキリンですよ。」


 隆くんは言い返します。


「いいえ、あれは高層ビルです。高度に発達した高層ビルです。」


 花子さんは冷たい。冷たく突き放します。


「あれは高層ビルではありません。まず建造物ではありません。」


 隆くんは優しい。優しく諭します。


「いいえ、あれは高層ビルです。」


 花子さんはダメです。


「じゃあ、次行かない?」


「いいよ!!」


 パオーンパオーン


 象さんが悠々と歩いています。かっこいいです。鼻がパオーンとしていて、とっても、かっこいいです。かっこいいなあ。鼻が長くて、パオかっこいいです。


「象さん、かっこいいなあ。パオかっこいいねえ。」


 隆くんは喜んでいます。興奮しています。喜んでいます。すごく、幸せそうです。


「いいえ、あれは高層ビルです。」


 花子さんは言いました。なんてこった。


「いいえ、あれは象です。高層ビルではないです。鉄筋コンクリートで出来てはいません。」


 隆くんは諭します。


「いいえ、あれは高層ビルです。」


「次、行きましょう。」


「はい。」


 カワウソのコーナーに来ました。


 スイスイスイ〜〜スイスイスイ〜〜


 カワウソが泳いでいます。楽しそう、涼しそうです。カワウィィです。


「カワウソが泳いでいるね。楽しそうだね。カワウィイね。」


 隆くんは相変わらずです。


「いいえ、あれは高層ビルです。」


 なんてこった。


「高層ビルが泳いでいる。すごい、すごい。なんだこれ、なんだこれ。」


「ああ、高層ビルかもしれないな....。全部、高層ビルなのかもしれない.......。」


 隆くんは悟り、動物園を後にしました。花子さんとはそれっきり会いませんでした。一方花子さんは、建築学部に入学し、この日のカワウソを手掛かりに、潜水艦型高層ビルを発明したのでした。


 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る