お正月のサンタ
ピンポーン!!
クリスマスの夜、チャイムが鳴る。
ガチャリッ
「メリークリスマース!!」
ちゃんちゃんちゃ〜ん♫
ちゃんちゃんちゃ〜ん♫
ちゃんちゃんちゃんちゃんちゃんちゃ〜ん♫
白いもふもふ髭と赤い帽子、服に身を包んだおじいさんが立っている。後ろに背負ったラジオからは、クリスマスのテーマ、赤鼻のトナカイが聞こえて来る。これは、サンタだ。サンタだ。サンタだ。
「あなた、サンタですね。」
「サンタです。」
サンタであった。すごいなあ、サンタに会えるんだなあ。しかし、トナカイが見当たらない。どこにいるんだろう。質問してみることにしよう。
「トナカイはどこに置いてきたのですか?」
「トナカイは駐車場に置いてきました。」
サンタは即答した。へえ、そうなのだな。駆除されないか心配だ。対策は取っているのだろうか?
「トナカイは駆除されちゃうかも知れませんが、それは大丈夫ですか?」
「大丈夫です。その時はタクシーを使って帰ります。」
へ、へえ。そういう大丈夫なのか。意外と事務的なのだな。トナカイとの絆とか、そういうの、無いんだな。まあ、サンタも職業なのだろうし別におかしくはないか。それくらいの方が、安心かもしれない。サンタにとってトナカイはただの乗り物なのだ。しかし、だったら最初からタクシーを使えばいいのでは無いかね。
「だったら、最初からタクシーを使えばいいのでは無いですかね。」
「タクシーは高いんだ。」
あちゃあ。それならまあ仕方ない。
「それにトナカイは美味しいんだ。毎年クリスマスが終わったら食べるんだ。」
そうなのかあ。それならまあそうなんだなあ。
「とりあえず、メリークリスマース!!」
パーーン!!
サンタはポケットから取り出したクラッカーをパーン!!とぶちまけた。うるさいなあ。でも、クリスマスだし、いっかあ。
「やったあー!!ウキャキャキャキャ!!ウキャキャキャキャ!!」
私は喜んだ。クリスマスだし、喜んだ。
「ウキャキャキャキャ、ウキャキャキャキャ!!」
サンタも喜んだ。サンタも嬉しいんだな。でもなんか、機械的だ。なんか深いトラウマが隠れているような、そんな笑い方だ。
「君にプレゼントをあげよう。ウキャキャキャキャ、ウキャキャキャキャ。」
なにやらごそごそポケットをいじり、取り出した。カードみたいなものだ。クリスマスカード?だろうか。
「ありがとう!!ウキャキャキャキャ、ウキャキャキャキャ。」
貰う。嬉しいな。クリスマスプレゼントだ。開いてみると、文字が書いてある。
『あけましておめでとう。今年もよろしく。』
なんだこれえ、年賀状みたいじゃないかーー!!
「年賀状みたいじゃない、かーーー!!!クリスマスなの、にーーー!!!」
私は大声で叫ん、だーーーー!!!
「あ、クリスマスとお正月は合体したんです、よーーーー!!!!」
サンタも叫び返してきた。そうか、合体していたのか。これは初耳、驚きであーる。
「そうだったんですね。知らなかった。」
「そうなんですよ。今年からなんですがね、ハロウィンが強くてなんかクリスマスとかお正月が以前よりも注目されなくなってきてしまって....。まあしばらく前から悩んでたんですけど、いろんなことがあってまあ、今年から合体契約を結んだんですよね、、、はい。」
サンタはどんどん萎んでいく。今にも泣き出しそうだ。
「ああ、それはそれは色々なことがありましたよ。もうね、最初は会話でね、解決しようと思ったの。もうちょっと静かにしてくれませんかってね。妖怪達にいったらね、知るか、そんなの自由だろ、とか言われて、、。まあその通りなのだけど。それでうちの爺ちゃんとかが怒っちゃって、妖怪に喧嘩をうっちゃったのよ。もう全面戦争になっちゃって。でも、勝ち目はなかったの。だって妖怪だもの。フランケンシュタインとか、ドラキュラとかいたの。骸骨以外みんな強かった....。それで、生き残ったのは私だけ。はははは、ははははは。だからもう合体するしかないなって、こまさんとか凧さんとかに頼んだのさ。みんな優しくてさ、感謝、感謝だよ.....。」
サンタはもう、涙を抑えきれなくなっていた。僕はどうすればいいのかわからず、ただ、立っていた。
「ねえ、ラブホテルに行かないかい?クリスマスなんだしさ。ラブホテルで鞠ついて、駒を回して遊ぼう。ねぇ。」
支えてやらなければいけない。私はこのサンタを支えてやらなければいけないのだ。
「はい、行きましょう。」
三時間の休憩パックで入る。途中の百円ショップで、鞠と駒を買った。ははは、こんなことになるなんてさ。
立派な部屋だ。とっても立派。サンタと一緒のラブホテル。お正月感はないけれど鞠と駒があれば、大丈夫。
鞠をつく。
ポンポンポンポン、ポンポンポンポン。
一方サンタは駒を回す。
シュルルルルルルルルルルルーーーー
鞠をつく。
ポンポンポンポン、ポンポンポンポン。
サンタは駒を回す。
シュルルルルルルルルルルルーーーー
永遠に、近づいていく....。
完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます