プレイボール

 プレイボール!!


 ワーワーワー!!フーフーフー!!


 アァ〜〜〜〜〜、アァ〜〜〜〜〜


 第138回甲子園、決勝戦。目の前にはキャッチャーがきゃっちゃり座り、バッターがばったり立ち、ピッチャーがぴっちゃりとキャッチャーを見ている。ピッチャー、プロ注目のプロ・チュウモ君、フラミンゴのような投球モーションに入り、一球目を投げる。


 ズドーン!!


 ストライーク!!


 私は球の位置を確認し雄叫びをあげる。次もストライク、次もストライク、三振、バッター、さようなら。


 1番バッターがバッターボックスから出て行く。つぎのバッターがバッターボックスで立ち上がるのを確認。むにゅ、なにか腰のあたりに違和感。手をやると、替えのボールを入れている袋がパンパンに膨れている。これはどうゆうことだ。確か袋に入れていたボールは四つ。余裕があったはずだ。こんなになるはずがないのだけどなあ。そんなことを考えているうちに2番バッターはもうバッターボックスの中。


 プレイ!!


 キリッ、と発声したその時。


 ボフンッ!!


 替えのボール入れが爆発し、あたりにボールが転がった。一体どういうことだ。


 ターイム!!


 私はタイムをかけ試合を中断する。がやがやがやがや、突然のタイムに球場は騒めく。うーむ、ぱっと見、転がっているボールは10個以上あるようだ。どういうことだろう。4個しか入れなかったはずなのに。地面に転がっているボールたちを眺める。すると突然ホームベースあたりを転がっていたボールが近くのボールにくっついた。ひょひょっ。そして振動、こすれ合い始めた。ひょさひょさひょさっ。なんだ、なんなんだ、これは。


 ボンッ!!


 謎の音とともにボールとボールの間に新しいボールが発生。ぎゃあ、どういうことだ。ボールに聞いてみよう。


「ちょっとボールさん、これはどういうことですけえのお。」


「あなたがプレイボールっていうものだからね。プレイボールになろうと思って、人間でいうプレイボーイ的なね。だからいろんなボールとセックスしてボールを産んでるのよ。」


 ほう、なるほど。了解した。では早速タイムの理由を球場に説明しなければ。


「え〜、只今のタイム、替えボール袋の中でボールがボールとセックスしボールをたくさん産んだため、袋が爆発した事によるものです。セックスするボールを他所にやって再開します。」


 うお〜!!すげえぜ!!そんなことあるのかよ!!やば〜!!


 沸き立つ甲子園球場。


 これ、誰も苦労せずボールが産まれてくるんだから高校球児たちはボールを買う必要がなくなる、つまり無料でボールを手に入れることができるじゃねーか。みんなもっと気楽に野球することができるぞ〜。すげえ!!すげえええええ!!!


 わあ〜わあ〜すげえ〜きゃあ〜革命よ〜〜〜すんごいわ〜〜〜きゃあ〜きゃっきゃ〜〜



 甲子園球場は湧いたが、ボール製作所の社員たちは泣いていた。誰かが得をする時、誰かは損をしているのだ。


 完



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