タクシーで酔って吐く話

 ヘイ!タクシー!


 タクシーに乗りたいので叫んだが、タクシーはやって来ない。聞こえてないからな、タクシーに。でもタクシーに聞こえてたとしても来るかな。客を乗せていたら、来ないだろうな。仕方がないのでタクシー乗り場まで行くのだ。歩いて行くのだ。


 ついた。タクシーに乗った。


「お客さん、どちらまで行きますか。」


「ほにゃらら丁目のぽにゃららどうりまでお願いします。」


「ほにゃらら」


 ブーン、ブーン、ブーン


 タクシーは進み始めました。運転手がハンドルを握っています。


「楽しいな、タクシータクシー楽しいな」


 運転手はそう呟きながら、楽しそうに運転しています。楽しそうでいいな、楽しそうでいいな。私は楽しそうな人を見ると楽しくなるので、踊りだしたくなりましたので、踊りました。


 ルンルンルン、パッパッパ、ルンルンルン、パッパッパ


 するとタクシーも楽しくなったのか、踊りだしました。


 ルンルンルン、パッパッパ、ルンルンルン、パッパッパ


 大変だ。タクシーが踊ったら、めちゃくちゃに進みそう。人を轢き殺してしまうぞ。冷静に踊ってくれればいいけど。と、思っていたら、道路もまた、踊りだしました。


 ルンルンルン、パッパッパ、ルンルンルン、パッパッパ


 大変だ、道路が踊りだしたら、街がめちゃくちゃになってしまうぞ。大変だ、大変だ。


 タクシーと道路がどちらも踊っているので最早訳がわかりませんでした。前に進んでいるのか、上に登っているのか、落ちているのか、後ろに進んでいるのか、もう、訳がわかりませんでした。ああ、何が何だかわからない、何が何だかわからない。こんなの、まともに進んでいるはずがない。そう思っていると、着きました。


「お客さん、着きましたよ。1420円です。」


「はいどうぞ。」


「毎度ありー。」


 そういうと、タクシーの運ちゃんは走り去りました。たたたった。タクシーはうちの前に置いてけぼりでした。


 ああ、なんだかんだついたな。そう思っていると、何か込み上げるものが。


 おえおえ〜


 そう、私は酔っ払っていたのでした。あのめちゃくちゃなタクシーや道路のせいで。


 うげぇ、気持わりい。私はタクシー会社に苦情の電話を入れることにしました。


「あなたの会社のドライバーさんが楽しそうにタクシーを運転するせいでタクシーや道路が踊り出し、酔って吐いてしまったのですが。」


「そうでしたか、大変でしたね。しかしタクシーや道路が踊り出したのは、本当にドライバーが楽しそうに運転していたからですか?」


「うーん、どうなんでしょう、そう言われるとわかりませんね。」


「わかりませんよね。なんで生物は海から地上へあがったのでしょうね。」


「うーん、それもわかりませんね。」


「ほんとですね。この世にはわからないことがたくさんです。ではまた。」


 ガチャリ


 私はすっきりして寝た。


 完

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