味噌シールド

 いつも通り、夕飯は牛丼屋で済まそう。最近はいつも、牛丼牛丼。牛丼とサラダと味噌汁の日々。


 券売機で牛丼とサラダを購入。味噌汁は牛丼についてくる。券を店員に手渡す。今時珍しい、ハチマキを巻いたマッチョなおじさんだ。


「へい、お待ちぃ。」


 あっという間に牛丼、味噌汁、サラダがお盆に乗ってやってきた。味噌汁を飲む。最初に味噌汁を飲むのが私の中では決まり事になっているのだ。


 ズルズル〜


 しかし、入ってこない。もう一度。


 ズルズル〜


 入ってこない。なぜだろう。なぜだろう。味噌汁が味噌シールドを張っているのだろうか。そうとしか考えられない。


「すみません。味噌汁が味噌シールドを張っているのですが、どうすれば解除できますか?」


「味噌汁の気持ちになって考えるのだ。」


 腕組みしたマッチョ店員が言った。真っ直ぐ私を見つめながら。ほう、味噌汁の気持ちか。うーむ。味噌汁は、脇役だ。牛丼のおまけみたいなもの。いつもお盆の隅っこに追いやられている。


 はっ、もしかして。この扱いの酷さにショックを受け、心の壁を作ってしまったのかもしれない。ということは、味噌汁を主人公にしてあげれば良いのだ。


 ふんじゃらばー!!ふんじゃらばー!!


 パリーーンッ!!パリーーンッ!!


 私は掛け声とともに牛丼とサラダを地面に叩きつけた。マッチョ店員の方を見ると、こっちに親指を立ててグッドポーズをしている。どうやら正解だったようだ。


 私は味噌汁を飲んだ。


 ごくごく、ごくごく


 シールドは解除されていた。美味しかった。


 完

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