ナスナ山
ナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナスナス
広大な砂漠で、一匹のナスが鳴いている。砂で覆い尽くされた視界にポツリと浮かぶ、紫。旅人の落し物か、はたまた置き去りにされたのか。助けを求めて鳴いているのか、自らの不遇を嘆いているのか、それを知るのはナスのみだ。
さらさらさら〜
ナスに、砂が集まって行く。自然の風に煽られたように、軽やかに艶やかに集まっていく。きっと砂たちは、ナスが、スナスナスナスナ、と鳴いているように聞こえたのだろう。ナスナスナスナス、ではなく。しかし、私からするとナスはナスナスナスナスと鳴いている。どう考えても、ナスナスナスナス、と鳴いている。恐らく砂以外の森羅万象はナスナスナスナス、と鳴いていると判断するだろう。砂の自意識過剰さが伺える。あっという間に紫は砂の黄土色に囲まれ姿を消した。気づくと公園の砂場にできた砂山のようなものになっている。そして長い年月が過ぎ、砂山は富士山ほどの大きさに。圧力により中心は石化。岩山となった。人々はこれを、ナスナ山と名付け崇め奉った。ナスナ山は停滞せず、今でも巨大化し続けている。
しかしこれは、ナスが鳴く世界での話である。現実では、ナスは鳴かナス。
完
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