完璧主義赤ちゃん
う~ん、う~ん、う~ん
お腹を膨らませた女性がベットの上で唸っている。どうやら出産の時。さあ産まれよ、赤子、産まれよ、赤子。
うーん、うーん、うーん
額に汗をかき、苦しそうである。夫と思われる男性がその様子をベットの横で心配そうに眺めている。しかしなにもできない。何もできず悔しいのか、男性もうなっている。
う~ん、う~ん、う~ん
なかなか赤ちゃんは出てこない。
看護師はお母さんの足元で様子を見ながらお母さんにアドバイスしている(例 もうちょっとですよ。)。その様子を医師とみられる男性が腕を組みながら眺めている。頭には寝癖がぴょんと、稲穂のようにたっており、口はまるでタコのようだ。
「先生、おかしいです。お腹の中の様子を見ても、なにも変なところは無いのです。普通ならもうとっくに出てきているはずなのですよ。」
「ほんとだね。しかし、どうすればいいのか。このままでは母体にかかる負担が限界値を超え命に関わるぞ。」
「本当です。どうしたものでしょう。帝王切開に移行するべきでは?」
「いや、待て。ここはひとつ、赤ちゃんに話をつけてみよう。」
「え、どういうことですか?」
「まあ、ちょっと、黙っていてくれ。」
そういうと先生はタコのような口を膨れたお腹に近づけ、なにやら喋り出した。
「バブバブブ、バブブブブ、バブブブブ(どうして出てこないんですか、赤ちゃんさん)。」
素早く先生はお腹に耳をぴたりとくっつける。お腹からなにやら音がしてくる。
「バブバーブ、バブバブブブ、バブバブ、バブバブブ(私は赤ちゃんのまま生まれてくるのが恥ずかしい。完璧でいたいのだ。だからお腹の中で成人してから生まれたい。)。」
先生は再びお腹に口を近づけ言った。
「バビューブブブブブ、バビュブブブ。バッブブブビュビュ、ビュビュビュバブ(それは困る。お腹の中で成人なんてしたら君のお母さんの体は壊れてしまうぞ。それに、君にとって完璧であることは、君であること、つまり赤ちゃんであることなんだよ。)。」
「バビュブブブ(確かに、それもそうだ。)。」
バブー!!
生まれた。新たな、生命が。
完
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