パトカーのピーポーに集まって行くピーポー

 ピーポーピーポー


 パトカー、緊急出動です。午後3時、白昼堂々ナイフで人を刺しまくっている人がいるようです。


 ピーポーピーポー


 住宅街にサイレンが鳴り響きます。この音が、たくさんの人の耳に入ります。


 ゾロゾロゾロゾロ、ゾロゾロゾロゾロ


 おっと、人々がパトカーに集まって行きます。これはどういうことでしょう。


 ブーンブーン、ブーンブーン


 おっと、車たちもパトカーに集まっていきます。これじゃあパトカーは動けません。あっという間にパトカーは身動きが取れなくなってしまいました。


 パトカーが到着しなかったので、犯人は人を刺し放題です。グサグサグサグサグサグサリ、あっという間に1000人くらい刺し殺してしまいました。1000人くらい刺し殺したら、犯人はナイフを自分の腹に刺して自殺しました。きっと、満足したのでしょう。


 それにしても、パトカーが素早く現場に到着していればこんなことにはならなかったはずです。なぜ人々はパトカーの周りに集まり、パトカーは身動きが取れなくなってしまったのでしょう。パトカーの周りに集まった人々にインタビューしてみました。


「あなたはなぜパトカーの周りに集まったのですか?」


「だって、ピーポーピーポーと呼ぶものだから。」


 なるほど。どうやらパトカーに集まった人々はサイレンのピーポーを英語のpeopleと間違ってしまい、自分が呼ばれているものだと考え集まってしまったようなのでした。これは、仕方ありません。


 このようなことを防ぐためには、どうすれば良いのでしょう。再発防止委員会で様々な意見が発せられました。


「サイレンの音を無くせばいいのではないか。」


「いや、それではパトカーが信号で止まらなきゃ行けないし、到着が遅れてしまうよ。」


「そもそも警察を無くせばいいのではないか。」


「そんなことしたら、治安がめちゃくちゃになるよ。」


「あなた、さっきから人の意見を否定ばっかりして。あなたもなにか意見を言うべきじゃないですか。」


「あなたこそ、さっきからめちゃくちゃなことばっかり言って。議論する気があるのかね。」

 

一触即発。人々は手に汗握りました。このままだと再発防止委員会内で殺人事件が起こってしまいそうです。沈黙に、包まれました。と、そこで、隅っこに座っている帽子を深くかぶった男がいいました。


「サイレンの音を変えれば良いのではないですか。」


「おお、素晴らしい、素晴らしい。」


 人々は感嘆しました。救世主の登場に、大喝采、大喝采。


 この方向で議論を続けた結果、サイレンの音をタンポポにすることに決まりました。タンポポは呼ばれても集まりませんからね。


 今日もどこかで、パトカー走る。


 タンポポタンポポ、タンポポポポポ。


 みんなの安全守ります。


 タンポポタンポポ、タンポポポポポ。


 完

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