うちわの出来方
真夏のお昼時、太陽が痛い。私は交差点で信号待ちをしていた。隣には、中年の男が汗をにじませ、うちわで顔を扇いでいる。
パタパタ、パタパタ
私は、羨ましい、私もうちわを持って来ればよかった、と思った。すると、
ごろん
彼の頭が地面に落ちた。恐らく強く扇ぎすぎたせいだろう。
私は、わあ、新手の自殺かな、と思い、
「新手の自殺ですか?」
と、問うた。
頭は言った。
「違う。私は死ぬのではない、生まれ変わるのだ。」
どういうことだろう。じっと頭を眺めていた。すると、頭はどんどん薄くなっていきやがて、うちわになっていった。残った体は土偶になった。
なるほど、うちわはこのように作られていたのか。私は知らなかったことを知れて、嬉しくなった。これもまた、学問なのだ。
それ以来、私はうちわを見るたびに、消えていった命を想うようになった。
完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます