ベッド下の男
今日も終わった。寝よう。
私はベッドに腰掛けた。
ガサゴソ、ガサゴソ
ベッドの下から音がする。なんだろう。のぞいてみると、知らない男がいた。ちなみに私は女だ。
「どうしてここにいるのですか。」
「あなたが眠った後、襲おうと思っていました。」
「いつからここにいるのですか。」
「生まれてこのかたずっとです。」
彼は嘘をついている。なぜなら昨日部屋の掃除をした時は、ベッドの下に何もなかったからだ。しかし、昨日部屋の掃除をしたあとに生まれていたとしたら、この男は嘘つきではない。
「あなたは何歳ですか。」
「20歳です。」
やはりこの男は嘘をついている。
グ〜〜〜〜〜
男のお腹がなった。お腹が減っているのだろうか。
「ご飯にしますか。」
私は聞いてみた。
「お願いします。」
私はベッドから立ち上がる。困っている人がいたら助けてあげなさいと、おばあちゃんも言っていたからな。男もベッドから出てきた。見ると、少し痩せてはいるが、いたって普通の男だ。とても嘘つきのようには見えない。私は、白米を与えた。男はとても美味しそうに食べ、私に感謝した。食べ終わると、お腹がいっぱいになり気持ちよくなったのか、寝てしまった。
私もお腹が減ってきたな。なにか食べたい。白米は男にあげた分で全部だった。男を食べようかな、と思ったが、やめた。嘘つきを食べてはいけない、と、おばあちゃんも言っていたからな。じゃあお母さんを食べよう、と思ったが、お母さんは昨日お父さんに食べられていたのを思い出す。お父さんはお母さんを食べたくせに、お母さんを食べていないと言っていたから、お父さんも嘘つき。困ったな、食べられない。
すると、おばあちゃんが入ってきて言った。
「嘘つきを食べてはいけないというのは、嘘だ。」
私はおばあちゃんを食べた。きっと、おばあちゃんは食べられたくなかったのだろうな。お父さんもこの男も嘘つきだったので、あのままいくと食べられるのはおばあちゃん一択、おばあちゃんは100%食べられることになっていた。でも、嘘つきを食べてはいけないというのは嘘、ということで、私はおばあちゃんもお父さんもこの男も食べることができるようになったのだ。つまり、このときおばあちゃんが食べられる確率は1/3になっていた。でも私はおばあちゃんを食べた。だって、近くにいたんだもの。
その後私は男に襲われた。嘘つきも本当のことを言うのだな。でももしかしたら、あのときの発言は嘘で、あのあと私を襲う気になったのかもしれないぞ、私は考えた。それ以前に、20歳というのが嘘で、本当は昨日生まれたばかりなのかもしれない。でも20歳と言った時点で、嘘つきなのは変わらないか。
完
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