第116話
暗闇の中で漂っていたあたしの耳元に、……声が聞こえてくる。
なんて言っているのかは、よくわからない。だけどとても悲しくて、胸が締めつけられるように切ない響きだということは感じ取ることができた。
……どこかで、誰かが泣いているんだろうか。そんな胸の内で呟いた言葉とともに今まで凍りついたように動かなくなっていたあたしの時間が動き始め、視界にはぼんやりと彩りが戻ってきた。
『……起きなくても、いいの?』
意識の奥底から、あたしに尋ねかける「想い」が水面の波紋のように伝わって空間の中に広がる。
問いかけてきたのは、あたし自身だ。だから、それに応えるべき返事も考えるまでもなく決まっている。
……起きなきゃいけない、今すぐに。たとえどんなに辛くて苦しくても、それがあたしに課せられた運命だから。
ううん、……そうじゃなかった。あたしがそう「したい」から、その道を選ぶんだ。
だってあたしは、……だから。
そんな思いを抱きながら、あたしは自分自身の心を励まして、覚醒に導く。そして、光が見えた先に向かって、反射的に手を伸ばした次の瞬間――。
「……っ、……ぅ……」
目を開けると、ぼんやりとしていた視界が少しずつ明らかになっていった。
状況を確かめようと視線を動かすと、少し離れた場所に複数の人影が見える。それが自分の知ってる人たちだとすぐに理解したあたしは、横向きになった姿勢から肘をついて上体を起こした。
「っ、ぐっ……!?」
その途端に激しい痛みが全身を駆け巡り、力も全然入らなかったのでたまらずその場に倒れ込んでしまう。それでも、あたしはうずくまった姿勢からなんとか顔を上げ直し、……その先に映った光景、そして聞こえてくる嗚咽を感じてはっ、と息をのんだ。
「っ、……うぅっ……うぁぁぁっ……!!」
遥先輩が……床に倒れている誰かの身体にすがりついて、泣いている。まさか、と思って目を凝らし、それが白いスーツの男性のようだと気づいたあたしは、心臓を握りつぶされるかと思うほどの衝撃を覚えて戦慄した。
「っ、か、は……っ……」
全身がバラバラになるかと思うほどの痛みをこらえ、息をするだけでも額に汗がにじむような苦しさに耐えて立ち上がったあたしは、何度となくふらついてつまずきそうになりながら、先輩たちのもとへと歩み寄る。
どうか見間違い、勘違いであってほしい――だけど、そんな願いは数歩も進まないうちに裏切られて、あたしは白いスーツを真っ赤に染めて横たわるその人がミスティナイトだと理解する。しかも、彼の仮面は何か攻撃を受けて破壊されたのか、隠していたはずの素顔があらわになっていた。
「ミスティ、ナイト……唯人さんっ……」
声が震えて、喉にも力が入らない。自分の見ている光景がとても信じられなくて、まるで悪夢の中に取り残されたような気分だ。
『闇』の力に抗い、それを克服して過去を乗り越える術を身につけたすごい人――それがミスティナイトで、その正体はすみれちゃんのお兄さん……如月唯人さんだった。
彼には今まで、何度も助けてもらった。この謁見の間に来る前にも、ブラックカーテンの卑怯な罠にかけられたあたしたちの前に颯爽と現れて……危ないところを救ってくれた姿は本当に頼もしくて、さすが快盗天使の先輩たちも尊敬する人だと心から思った。
ううん、それだけじゃない。もしあの時……「真実」を知ったことで落ち込んだあたしを自分の素性を明かす覚悟で励ましてくれてなかったら、おそらくあたしはこの部屋にすらたどり着くことができずにいただろう。だから、この人にはどれだけお礼をしても足りないくらいの感謝の想いがあり、無事に帰ったらそのことを伝えよう……そう、心に誓っていたんだ。
……でも、それくらいに強くて優しい人が、身体中血まみれになって倒れたまま……まるで眠っているように、動かない。そして、すがりつく遥先輩だけじゃなく葵先輩も、みるくちゃんも立ち尽くして、……すすり泣いている。
その意味を悟ったあたしは、……あまりの衝撃を受け止めきれなくてその場にがくり、と膝をついてしまった。
「……あ……あぁ……」
心の中が、重く……黒く、塗りつぶされていく。
また、あの時……過去の世界で、アストレアさまを救えなかったことの繰り返しだ。助けなきゃいけない人を助けられなくて、大切な人たちに悲しい思いをさせてしまった。
……あたしには、力があったはずなのに。
たとえ正義の味方じゃなくても、『闇』の力と向き合って、受け入れて……誰かのためにできることを精一杯やろう、って心に誓ったのに……あたしは……っ。
「っ……? 気がついたのね、めぐる……!」
すると、あたしに気づいたみるくちゃんが泣きはらした顔を上げて、たたっと足早に駆け寄ってくる。
彼女も全身傷だらけで、相当のダメージを負っている様子だ。だけど、あたしにはそれを気遣えるだけの余裕もなく、……ただ力なく頷くことしかできなかった。
「みるくちゃん……ブラックカーテンは?」
「……逃げたわ。異空間へのゲートを出現させて、その中に……エリスが、その後を追いかけてくれてる」
「じゃあ、ミスティナイト……唯人さんは、……」
「……っ……」
その問いに対して、みるくちゃんは何も言葉を返してくれない。だけど、顔を背けて耐え切れずに嗚咽するその反応を見れば、確かめるまでもなく明らかだった。
……あたしが意識を失っている間に、首領のブラックカーテンは逃げた。どれだけの傷を負っているかはともかくとして、おそらくまだ健在なんだろう。
それなのに、こちらは全員が傷だらけになるほどの損害があった上、唯人さんが……。
これ以上ないくらいに、最悪の結果だ。せめてもの救いは、この場にすみれちゃんが不在でお兄さんの悲劇を目撃せずにすんだことかもしれないけれど……それすらも時間の問題でしかなく、そして事実を知った時の彼女の反応は――あたしにとっては考えるだけでも痛ましく、恐ろしすぎる悪夢だった。
「……。あたしの、せいだ……」
「めぐる……?」
「あたしが、ブラックカーテンを倒せなかったから、こんなことに……。もっとあたしに力があれば……力を、使いこなしていれば……っ!」
言葉に出すとますます情けなさが押し寄せてきて、ぼろぼろと涙がこぼれ落ちていく。
『闇』の力を受け入れる決心をして、自分の大事なものを全て引きかえにする覚悟でここに臨んだつもりが……結局、あたしには何もできなかった。それどころか、大切なブレイクメダルまで奪われてしまって……。
「……っ……!」
それを思い出したことであたしは、自分の姿がスーツから制服になっていることにようやく気づく。
今続いている倦怠感と脱力感は、メダルを失って変身が解除されたせいもあるのだろう。だけど、そんなことよりもあたしはツインエンジェルBREAKとして戦えなくなったことが悔しくて、なにより無力な自分が腹立たしくて仕方がなかった……。
『これだけは覚えておけ。……その娘がこんな状況になったのは、『天ノ遣』でも俺たちのせいでもねぇ。……お前だよ、天月めぐる』
ブラックカーテンに侮蔑まじりに告げられた言葉が、今さらになって蘇ってくる。
あいつの言うとおり……あたしは、疫病神だ。それどころか大切な人を救うこともできない、最低の役立たずだ。
だから、やっぱりあたしなんて……すみれちゃんやみるくちゃん、先輩たちと一緒にいないほうが良かったんだ……。
「ごめんなさい……ごめんなさい……。あたしのせいで……あたしがいるせいで、みんなに悲しい思いをさせて……っ……。あたしが、あいつを……倒さなきゃいけなかったのに……っ……!」
そんな後悔と自己嫌悪の想いが言葉になって、涙と嗚咽とともにあふれ出してくる。
いっそあたしなんて、この世界からいなくなってしまえばいい……それで全てが償えるとは思っていないけれど、せめて少しくらいの慰めになれば――。
そう、本気で思った……その時だった。
「……。めぐる」
「え……?」
「――っ!!」
突然……あたしの顔に横から衝撃が加わり、視線が移動する。
じわじわと感じる、鈍い痛み。顔を戻すとそこには、みるくちゃんが平手打ちを放った姿勢のまま涙を流しながら、今まで見たことが無いほど怒りに震えているのが目に映った。
「こうなったのは、自分のせい……? 思い上がるんじゃないわよ、めぐるっ!」
「みるく……ちゃん……?」
「あんた、何様のつもりなの!? 力に目覚めたからって、自分が神様みたいに偉くなったとでも言いたいわけ!? 私たちをバカにするのもいい加減にしなさい!!」
「そんな……あ、あたしは……ただ……」
決して、同情を……慰めなんかを、期待したわけじゃない。ただ、こんなにも強い口調で怒られたことが無かったあたしは怖くて悲しくて、みるくちゃんから顔を背けてうなだれる。
すると、彼女は……そんなあたしの両手を包み込むように握りながら、何度も涙声をすすり上げて続けた。
「なんで……なんでそんなに、自分を追い込むのよ! 唯人お兄様がこうなったのは、あんたのせいじゃない! 私たちに力がなかったからで、敵がそれだけの力を持っていたからよ! なのに、自分だけで責任を勝手に背負い込んで、勝手に謝って……!」
「でも……あたしは、『闇』の力があって……それを使えなきゃ、みんなと一緒にいる意味がないのに……なのに……っ」
「『闇』の力がどうかなんて、関係ないでしょう! それに、一緒にいる意味っ……? あんたとすみれは私の大切な後輩で、それだけで十分なのよ! そんなふうに自分を悪者にするようなことを考えるなんて、私は許さない……絶対に、許さないんだからっ!!」
「……っ……」
みるくちゃんは、怒りながら……泣いていた。そして、こんな状況なのにあたしなんかのために心を砕いて、一生懸命慰めてくれる。
……嬉しかった。役に立てなかったことが情けなくて悔しくて仕方がないのに、それでも心の底から感謝したい気持ちでいっぱいになって……その優しさとあたたかさにすがりそうになってしまう。
だけどあたしは、そんな弱い自分を受け入れてもいいのか……その資格があるのか、そう考えるだけでも申し訳なくて、思わず目をそらした――けど、その先でこちらに顔を向ける葵先輩と、遥先輩と目が合ってしまった。
「っ、先輩……」
「めぐるさん……このような状況になったのは、私たちの備えと覚悟が至らなかったためです。あなたのせいではありません……自分を責めないでください」
「……っ……」
「……そう、だよ。めぐるちゃんの、せいじゃ、ない……。私が、もっと……っ……」
「……っ……!!」
まだ涙もあふれ続けて、自分たちも辛くて悲しいはずなのに、……2人はあたしのことを気遣ってくれる。
その言葉がありがたくて……でも、悲しい。こんなにも素敵な人たちが支えてくれていたのに、あたしはこの人たちのために、何も……。
と、その時だった。
「っ、な……なにっ……?」
突然、床のずっと下の方から響くような揺れを感じる。地震だろうか、と思って周囲に目を向けると背後にあった扉が大きな音ともに開かれ、……その向こうから姿を現したのはテスラさんとナインさんだった。
「テスラ、ナイン……!?」
× × × ×
駆け込んできたテスラさんとナインさんに、あたしたちは残酷すぎる事実を伝える。
ミスティナイト――如月唯人さんが敵の手にかかって命を落としたことは2人にとっても大きなショックだったのか、しばらくの間声を失っていた。それでも、泣き続けている遥先輩を見たテスラさんは慰めるようにその身体を抱きしめると、険しい表情で口元を引き結んでから申し訳なさそうに言葉を切りだしていった。
「遥さん……お辛い気持ちは、理解しているつもりです。ですが今は、ここを脱出することを考えてください」
「テスラ、ちゃん……」
「……ここは、もうすぐ崩れる。留まるのは、危険」
その言葉を裏付けるようにして、地鳴りのような響きと振動が足元に伝わってくる。それは断続的に大きく、そして激しいものへと変わりつつあった。
「だ、だけど……ブラックカーテンが、まだ……!」
「えぇ、わかっています。もとよりこのまま、あの男を放置するつもりはありません。ですが、ここにいたところで何もできないことも事実。……違いますか?」
「…………」
努めて感情を抑える口調のテスラさんにそう諭されて、あたしたちはそれ以上の抗弁もできず押し黙る。
悔しいけれど、テスラさんの言う通りだろう。ただ、だからといって世界の危機も救えずに逃げ出しても、本当に正しいと言えるのだろうか……?
「(……。そうだ、「あの力」なら……まだ……)」
そんな中、ふと思い出した「あれ」のことが頭に浮かんで、あたしの心にほんのわずかな希望が顔をのぞかせる。
もし、「あの時」に託されたものがまだ残っているのだとしたら、戦うための手段はそれしかないだろう。……だけど同時に、その選択は本当の意味ですみれちゃんたちとの別れを覚悟すべきことだ。
「(それでも、選ぶべきなんだろうか……。もうここまできたら、あたしは……!)」
そんな思いをひとり噛みしめていると、ふと顔を上げた先でテスラさんの視線に気づく。すると彼女はあたしを見据え、険しい表情を浮かべながら言った。
「……めぐるさんには、まだ策がおありのようですね」
「えっ……?」
「ひとつ、聞かせてください。もし、まだブラックカーテンと戦うチャンスがあるとしたら……あなたは、どうしますか?」
「……っ……!?」
突然、脱出を提案するその一方でそんなことを訊ねられるとは思ってもみなかったので、あたしはその真意を理解できず目をしばたかせながらテスラさんを見つめる。すると彼女は、やや迷うように言いよどんでから言葉を繋いでいった。
「……敵の向かった先は、おそらく『ワールド・ライブラリ』でしょう。そこに封じ込められた自分の半身を回収し、完全体となった末に波動エネルギーを我が物にするつもりだと思われます」
「なっ……!?」
『ワールド・ライブラリ』……覚えがある。確か、魔界エリュシオンで魔王化したクラウディウスと戦って倒し、その後すみれちゃんと一緒に訪れた場所だ。一緒にいた天使ちゃんから聞いた話だとそこは全ての『平行世界』を管理する場所で、同時に魔界から人間界へと流出している波動エネルギーを管理する重要な場所とのことだ。
そこに封印された、自分の半身を取り戻す……? つまりブラックカーテンは、さらに強くなろうとしているってこと……!?
「そんな……だったらそこに乗り込んで、あいつを倒さなきゃ……!」
「ええ、その通りです。ですが、安易に乗り込んだところで今のブラックカーテンを倒すことは難しいでしょう。私たちとやつとの力の差は、もはや容易に覆すことができないレベルに達しています。……それに私となっちゃんは、悔しいですけどこれ以上の戦闘が不可能な状況なのです」
「っ、それは……?」
テスラさんが胸の内から取り出し、差し出してきた黒い塊をまじまじと見つめ、それが何であるかを理解したあたしはあっ、と声を上げる。それは、焼け焦げた中にわずかな刻印をのぞかせる……メダルだった。
「高機動形態――『アクセラモード』を起動させるためのブースターメダルです。何度も無理をさせてしまったことで、完全に壊れてしまいました。……もう、使用することはできないでしょう」
「……私たちも同じよ。『エレメンタル・メダル』がこんな状態だから、ブラックカーテンにはこれ以上太刀打ちできそうにないわ……」
そう言って肩を落とすみるくちゃんの手には、4つのメダル。それらは全てところどころひび割れてしまっていて、わずかに火花のようなものも見せていた。
「つまり、まだ戦う力が残っているのは……ここにいるメンバーの中だとめぐるさん、あなただけなのです。だからこそ、確認させてもらいました」
「…………」
その期待がずしん、とあたしの両肩にのしかかってくるように感じられて、……即答ができずに押し黙ってしまう。
ここまま、終わりたくない。優しくしてくれたみんなのためにも、まだできることがあるんだったらできる限りあがいて、食い下がりたい。でも……。
「……。だけど、あたしだってもう……ブレイクメダルが……」
「めぐるさん。もう時間がないので、率直にお聞きします。――今のあなたにとって、本当にブレイクメダルは「必要」なものですか?」
「……っ……!?」
あたしを見据えながら、テスラさんは問いかけてくる。
ううん……違う。テスラさんはたぶん、「気づいて」いるんだ。あたしがまだ明らかにしないままでいる、「最後の手段」の存在に――。
「っ……それ、は……」
「……いえ、答えてくださらなくても結構です。ただ、あなたにその覚悟があるのなら……これを、お貸しします」
そう言ってテスラさんは、自分のつけていた髪飾りを外して、中から何かを取り出す。それは、文字というよりも数字にも似た複雑な模様が刻み込まれた……虹色に輝くメダルだった。
「私たちのお父様――ダークトレーダーが、生涯の全てをつぎ込んでつくり上げた波動エネルギーの人造結晶体です。以前も私たちは、これを用いることで『ワールド・ライブラリ』に足を運ぶことができました」
「…………」
そういえば、あたしとすみれちゃんはエンデちゃんとアインちゃん……エリュシオンの巫女の力で『ワールド・ライブラリ』と魔界にたどり着くことができたけど、テスラさんとナインさんはそんな補助もなく同様に足を運ぶことができていた。どうしてなのかずっと疑問だったけれど、2人はそういうツールを使っていたんだ……。
「おそらくこの空間には、まだ波動エネルギーの残留波があるはず。それを追っていけば、『ワールド・ライブラリ』に辿り着くことができるでしょう」
「……。これを使えば……まだ、ブラックカーテンと戦える……?」
諦めかけていたあたしの気持ちに再び、輝きが宿るのを感じる。それは、とても小さくて弱いものではあったけれど、……確かな希望、そして進むべき道を指し示してくれていた。
「なっちゃんの分は、別の方に頼んであなたのパートナー……すみれさんに渡してもらう手はずになっています。ただあいにく、それを待っている時間はありませんので……現地で合流してもらうことになるでしょう」
「っ、すみれちゃんも……?」
あたしの問いかけに頷き返すテスラさんの顔を見て、迷っていたあたしの気持ちに決心の想いが組み上げられていく。
すみれちゃんに唯人さんのことを伝えるべきか……あるいはどう話せばいいのかはまだわからない。でも、彼女ならきっとこの話を聞けば、一人でも行こうと考えるだろう。
だったら、あたしにできることは――もう……!
「それから……めぐるさん。それは差し上げるのではなく、貸したものです。なので必ず返してくれるよう、約束してくださいね」
「……テスラさん」
その言葉の裏に隠された意味を理解して、私は頷く。
メダルを、返す……つまりテスラさんは、あたしたちに生きて戻ってくるように言ってくれているのだ。そのために、自分の父親の形見ともいえる大事なものを託して……。
その気持ちに、応えたい。あたしにできる恩返しは、すみれちゃんと一緒にこの優しい人たちのもとへ帰ってくることだった。
「わかりました。必ず――」
意を決してそれを受け取り、あたしは念を込める。すると身体の周りに虹色の光が出現し、それに伴って空間が歪んでいった。
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