第73話

 話は少しだけ、過去にさかのぼる。……私が快盗天使の新しい戦闘スーツ形態、『エレメンタルフォーム』の開発を始めた時のことだ。


外国のおとぎ話には、決して折れることのない聖剣や炎などをまとった武具が多く登場する。それらを構成する物質は『魔法金属』と呼ばれ、現代科学においては再現が不可能な「失われた技術」か、あるいは誇張や虚偽による「ありえないモノ」として存在自体を否定されてきた。

……それでも、昨今の波動エネルギーの研究によって「例外」となる物質が発見された。それが、『アスタリウム』だ。

私はキャピタル・ノアと神無月財閥の支援の下でその結晶の合成と精製に成功し、度重なる試行錯誤の末に『ブレイクメダル』をつくり上げた。それは紆余曲折を経て『天ノ遣』の血を引くめぐるとすみれの手に渡り、2人がツインエンジェルBREAKとして活動を行うにあたって大きな働きをはたしてくれた。


それと同時に、私は遥や葵お姉さまのために『アスタリウム』の波動エネルギーを用いた新スーツの開発も進めていた。リリカ・アスタディールさまが聖杯の力を失った現状では、私たちが『天ノ遣』として活動するためには波動エネルギーを自律的に補充できるシステムが急務だったからだ。

……ただ、試作型スーツには様々な機能面で『ブレイクメダル』を用いた新スーツに劣り、開発は難航した。さらに、その運用データから別の「問題点」を見つけた私は、その対処にどうしても踏み切ることができなくて……2人の許しを得て、いったん実用化を見送ることを決断した――。


 にもかかわらず、その開発案を再び掘り起こそうと考えたのは『ブレイクメダル』の実験中に謎の組織の襲撃を受けたことが原因だった。

なすすべもなく遥と葵お姉さまを敵の戦闘員たちに連れ去られ、私自身もとっさに使用したメダルの力でハリネズミに姿を変えて脱出するしか術がなかったという、最悪の事態。現状の力不足を痛感させられるには十分すぎる敗北の結果に、私は悠長に構えていた自分の考えと姿勢を改めることにしたのだ。


「(敵の勢力は、私たちの想定を越えた規模と速度でどんどん強化されている。その脅威に対抗するためには、私たち自身もさらに強くならないと……!)」


 『ブレイクメダル』を得てツインエンジェルBREAKとなっためぐるとすみれは、新たな戦力として想定以上の活躍で応えてくれて、おかげで囚われの身となっていた遥と葵お姉さまを救い出すことができた。……だけど、メダルを巡って暗躍する敵の動きにはまだまだ得体のしれない奥深さがあり、2人の頑張りにだけ頼るのはリスクが高すぎる。

 そう考えた私は、心身の傷を癒すために静養する遥たちの警護を唯人お兄さまと長月に託して単身イタリアへと渡った。そして、キャピタル・ノアで波動エネルギーの究明と分析を進めている筆頭司祭、ジュデッカさまのもとを訪れた……。


 × × × ×


「……なるほどね。波動エネルギーを各属性セグメントに特化して集積させることで、その増幅レベルを一時的に引き上げる、か。確かにこれが実現すれば、現状のブレイクメダルに匹敵する効果を得ることが可能になるわね」


 タブレット端末の液晶画面に映し出された私の設計図と分析データを、ジュデッカさまは視力補正バイザー越しに読み進めていく。

 彼女はとある事情で視力を失ってしまっているのだけど、そんなことが気にもならないくらいに私はその見識と洞察の深さを信頼し、それ以上に尊敬している。それになにより、当主リリカ・アスタディールさまの後見人という多忙な身にもかかわらず私のために時間を作ってくれるその優しさが、とてもありがたかった。


「あの、どうでしょうか? 持続力の低さはまだ改善されていませんし、勢いに任せて組み上げたシステムなので、気づいていない問題点があるかもしれませんが……つかさおばさ、ジュデッカさまのご意見をいただけないかと」

「ふふっ、水臭いわねぇ。ひとりで進めるには心もとないから手伝って、って言ってくれるほうが私は嬉しいんだけどな~」


 そう言ってジュデッカさまは、明るくおどけた口調で私の頭をぽふぽふ、と撫でてくれる。

 ……他の誰かにこんなことをされたら、きっと子供扱いしないで、と反発を覚えただろう。だけど、この人だと照れくささと同時に心があたたかくなって、ちょっとだけ甘えたくなってしまうんだ……。


「偉そうな言い方になってしまうかもしれないけど……これだけの内容を、よくも短期間でまとめたものだと思うわ。ここまで基礎が構築されていればあとは些細な修正を加えるだけでしょうし、うちの研究員たちの手を借りれば、それほど時間をかけずに開発を行うことも決して不可能じゃない。持続力についての課題も、私が今研究しているシーケンサーを転用すれば何とかなるかもね」

「っ、それじゃあ……!」

「えぇ、もちろん。全面的に協力させてもらうから、一緒にやりましょう」

「あ……ありがとうございます!」


 視力補正バイザーを外し、にっこりと微笑みながら頷いてくれるジュデッカさまの返答を聞いた私は座っていたソファを飛び上がる勢いで立ち上がると、心からの感謝を伝えるべく深くお辞儀をする。……この人が見える、見えないの話じゃない。そうしないと、私の気が収まらなかった。

 盲目のハンデを背負いながら、波動エネルギーの研究では世界的権威を持つ科学者――ジュデッカ・ジェナイオさま。この人の賛辞はどんな採点の結果よりも嬉しくて誇らしく、そして彼女のバックアップは何よりも心強いものだった。


「それにしても、クルミの発想の柔軟さと着眼点の鋭さには毎回驚かされるわね。遥ちゃんと葵ちゃんには申し訳ないけど、今すぐにでもうちの研究所に招いて私の代わりを務めてもらいたいくらいだわ」

「そ、そんな……! 私なんてつかさおばさ、じゃない、ジュデッカさまの知識と経験には遠く及びません! いつも自分の足りないところに気づかされてばかりで、もっともっと勉強しなきゃ、って……」


 それは嘘でもお世辞でもなく、本心からの正直な思いだ。そもそもジュデッカさまが自分の研究内容を惜しみなく、かつわかりやすく公開してくれているおかげで私は応用を自在に考えることができるのだし、この人という目標があるからこそ、私は勉強のすばらしさと楽しさを常に持ち続けていられるんだ。

 聖チェリーヌ学院に籍を移して以来……私は波動エネルギーについての論文をいくつも書いてきた。そしてありがたいことに、学会でもそれなりの評価をいただく果報に恵まれていたけれど、それは陰日向に支えてくれるこの人の応援があってのものだと、私はいつも言葉にする何倍もの感謝の念を抱いていた。


「(……と、いけないいけない)」


 褒めちぎられたおかげで舞い上がって、「もう一つ」の相談を忘れるところだった。私は軽く咳払いして気を静めるとソファに座りなおし、彼女からタブレット端末を受け取って別フォルダに格納していた開発レポートを画面に表示させていった。


「……それと、ジュデッカさま。実はこの新スーツの開発データを集めている時に、少し気になるものを見つけたんです」

「? 気になることって……なに?」

「これなんですけど……どう思いますか?」


 私の質問を受けてジュデッカさまはバイザーを改めて装着し、レポートファイルの内容に目を走らせる。そして何かに気づいたように動きを止めると、タブレット端末を操作して「ある」部分の数値を拡大しながら訝しげに口を開いた。


「……エレメンタルフォームの蒸着の瞬間に、エネルギー波形の乱れがあるわね。最終的な蒸着率とパルス波形は安定しているから、さほど心配するところではない。……でも」

「この数値って……『虚数』ですよね」


 やっぱり私の気のせいではなかった、と密かに安堵を覚えながら、私は新スーツの開発で偶然見つけてしまった「問題点」を言葉にする。それを聞いたジュデッカさまもバイザーを外し、あごに手を置いて何かを考え込むようなしぐさを見せた。

 『虚数』――それを2乗することで「-1」となる、現実世界では存在しえない……はずの数値。電子工学やプログラミングなどでは計算上発生することがあるものの、物質を用いた研究データで出現するなんて決して「ありえない」ことで、その多くは計測データのミスとして処理されることが多い。

 でも、波動エネルギーが最も増幅されるこの地点で発生している以上――単なるエラーと片付けるわけにはいかなかった。


「波動エネルギーが、瞬間的に虚数空間を発生させている……ということなんでしょうか?」

「可能性としてはゼロどころか、かなりの確率でそう判断してもいいと思うわ。ただ、これを理論的な文言で置き換えるのだとしたら、それは――」

「……『反物質』、ですか」


 口に出してみると、その言葉の意味の重さがじわじわと全身にのしかかってくるようで……私はつい、ため息をついてしまう。

 反物質――わずかな質量で莫大なエネルギーを持つとされるが、それゆえ既存の科学ではその構成を完全に説明することができない幻の物体だ。もはや幻想か魔術によるものとみなしたほうが理解も早まるかと感じるくらいに、従来の常識を覆すほどの存在感がある。

 波動エネルギーを究明しようと科学を極めようとすることで、逆にそれが否定してきた魔術の肯定へと近づく……その矛盾を思うと、なんだか皮肉めいたものを覚えずにはいられなかった。


「……アスタリウムは本来、魔術学の衰退とともに消滅するはずの存在だった――」

「えっ? わっ、ったた……!」


 ぽつり、とふと漏らしたジュデッカさまの言葉に、私は弾かれたように顔をあげる。そのあおりで手に持っていたタブレット端末をあやうく取り落としそうになってしまったが、なんとか両手で抱きかかえて息をつき、改めて彼女の顔を見ながら尋ねかけていった。


「それって、アスタリウムこそが『反物質』――科学の概念とは相反する物質、ということですか?」

「というより、波動エネルギーの存在自体が私たちの文明にとって異質な存在なのよ。その力を柱にすることでアスタディール家の権勢を支え、キャピタル・ノアだけでなく全世界の安定と調和を図ろうとしているのだから、私たちはつくづく救われないわね」

「…………」

「だけど、一つだけ言えることがあるわ。この小さな「異常値」こそが、波動エネルギーを現実に持ち込むことによって生まれる副産物。そして、私たちの世界と、異世界――エリュシオンにおける常識と非常識を一変させるだけの力を持った存在なんでしょう。もっとも、それが私たちの環境にどんな変化をもたらすのかまでは、さすがにわからないけど……ね」

「……はい」


 ジュデッカさまの言葉を受け止めながら、私は自分が向かおうとしている先に存在する「モノ」に畏れを感じて、思わず身震いする。

 かつて、自分自身の追い求めた理論が世界を滅ぼす技術へつながることに気づかぬまま、研究を進めた科学者がいた。彼は後日になってその罪深さに恐れおののき、何よりも大切にしてきた科学に対する関心を失ってしまったのだという。

 嫌悪、僭越感、そして失望……私ごときがおこがましいかもしれないけれど、その想いの一片を意識せずにはいられなかった。


「(本当に私は、このまま波動エネルギーの研究を進めてもいいんだろうか……?)」


 ひょっとすると私は、神ですら扱いかねるような恐ろしいものに手を出そうとしているのかもしれない。私にとって科学は、今でも楽しいものには違いなかったけれど……進めば進むほどに自分が禁忌の境界を少しずつ越えようとしているのでは、という不安と疑念を感じるのだ。

……空調が行き届いて、少し寒いくらいのはずの室内がやけに暑く感じる。息苦しさが胸の中を覆い、乾いた喉に飲み込んだ唾が引っかかって思わず、むせこんでしまった。

 ――と、その時だった。


「――面白いじゃない。つかまえてみなさい、クルミ」

「えっ?」


 その呼びかけを受けて私は、いつの間にか下がっていた視線を戻してジュデッカさまを見つめ返す。彼女はいつもの優しげなものだけではなく、どこか不敵さを感じるような笑みを浮かべながら続けた。


「科学はね、神に対する敬虔な想いを忘れることなく、絶えず神に近づくことを試みる学問なの。だから今は、思う存分あなたの信じる道を突き進んでみなさい」

「い……いいんですか? もしかしたら私の進めてる研究が、この世界にとって悪い影響をもたらすことだって――」

「その責任を取るべきなのは、実際にあなたの発見したものを使用する本人よ。たとえば、刃物は日々の暮らしを便利にすると同時に、誰かを傷つける凶器にもなる……でも、それを恐れていたら何もできなくなっちゃうでしょう?」

「…………」

「大切なのは、相手を思いやる優しさ。それさえあれば、もし世界のどこかで不幸なことが起こったとしても……ひとは必ず、過ちに気づくわ。だから私たちは、信じましょう。私があなたを想っているように、人間の英知と性善を……ね」

「つかささん……っ……」


 思わずもう、そう呼んではいけないと戒めてきたはずの名前を口にして、……私は、差し出されたその人の手をぎゅっ、と両手で握りしめる。

 ……この人と出会えて、本当に良かった。これからどんな大きな壁にぶつかっても、私はひとりじゃないと自分を励まして、頑張ることができる――。

私はそんな確信を、もらった勇気とともに心の底からかみしめていた。


「これからも迷うようなことがあったら、いつでも私に言ってきなさい。私はずっとあなたの味方で、これからも後ろから支えてあげるから」

「っ、はいっ……!」


 × × × ×


「(だから、私は進む……! いつもどこかで見守ってくれる、あの人のためにもっ!!)」


 岩の巨人たちに向けて投げ放ったネコ型ボムは石床を跳ねて転がり、その中の1体――サロメがその肩に乗っているボス級の手前で動きを止める。そして次の瞬間、ボムの球体の内部から長いブレード状の5つの羽が放射線状に広がり……つぶらな瞳に模した起動ランプから輝きがひらめくや、それは回転を始めてふわり、と宙に浮かび上がった。


「さぁ行きなさい、テンペストボムっ!」


 私の呼びかけと同時に、ヘリコプターのような回転翼と化したボムは周囲の空気を巻き込みながら、一気に飛翔する。それによって生み出された気流は渦となり、やがて竜巻状にまで発展すると中が闇に閉ざされた暗黒へと染まって、辺り一面に激しい突風をまき散らしていった。


「な……なにをする気っしょっ? そんな風ごときで、私のつくり出したゴーレムたちを倒せるとでも――、っ!?」


 虚を突かれたとはいえさほどの脅威ではないと判断したのか、サロメは余裕をことさら誇示するように鼻をふん、と鳴らして嘲り笑いを浮かべかける。――が、その瞳はすぐさま大きく見開かれたものへと変わり、さらに愕然と表情を凍り付かせたまま口元を震わせて、左右に視線を振り放ちながら動揺をあらわに叫んでいった。


「ど、どうなってるっしょ! ご、ゴーレムたちが……なんで!?」


 彼女の言葉を裏付けるように、ボムから放たれた烈風を受けたゴーレムたちはその身体や手足に大きなひびを走らせて、1体、また1体とその場に崩れ落ちる。そして、ただの物言わぬ瓦礫と化したその巨躯は瞬く間に砂塵へと帰し、跡形もなく消え去って――。

 残った巨人は、サロメがその肩に乗った1体のみとなっていた。


「い……いったい何をしたっしょ! あの扇風機みたいなボム1つで、どうしてゴーレムたちが!?」


 今起きたことが信じられないと言いたげに取り乱しながら、サロメは私に向かって声を張り上げる。その反応を毅然と受け止めながら、私は言葉を返していった。


「……あの黒い嵐は、あんたがつくり出した「魔術」を打ち消す力よ。錬金術師を自称するあんたなら、その正体がわかるでしょ?」

「っ! それってつまり、反物質エネルギー……! まさかお前も、『魔界の力』の定理を解き明かしたっしょ!?」

「そういうことよ! さぁ遥、葵お姉さま! とどめをお願いします!」

「「了解(です)っ!!」」


 私の合図に答えて、疾風を身にまとった遥は飛び蹴りを、葵お姉さまは雷の矢をそれぞれサロメの乗る巨人目がけて容赦なく放つ。2人の攻撃は岩の胸元を粉々に砕き、空気を震わすほどの轟音と咆哮を残して巨人は爆発した。


「んきゃぁぁぁあっっ!!」


 反撃をするどころか身を守る余裕もなく、サロメはもろくも崩れ去る巨人に巻き込まれる格好で地上へと落下する。その際、身体のどこかをぶつけたのか「ぎゃんっ!」と悲鳴が聞こえて、砂煙が消えたあとには腰をさすりながら痛みに顔をしかめるゴスロリ女の姿があった。


「どう? あんたが頼みにする巨人たちは、文字通り土に帰ったわけだけど」

「くっ……まだっしょ! まだこれからっしょ!」

「そーです、サロメさま! まだ俺が残ってます! さぁ来い、サロメ様はこの俺が命に代えても――!」


 そう言ってサロメの前には、いつの間に戻ってきたのかあのアレキサンダーと名乗った男が意気揚々と立ち塞がる。

……なぜか、圧倒的不利な状況にもかかわらず嬉しそう、というか陶酔したような表情を浮かべているようにも見えるのは気のせいだろうか。だけど、彼女はそんな献身を見せる男をわずらわしげにげしっ、と横に蹴り飛ばし、悔しげに口元を引きつらせながら傲然とした態度をことさらに見せて言い放った。


「正直言って、ここまでやるとは想定以上っしょ……! さすがは私の宿命のライバル、認めてやってもいいっしょ」

「……ご理解がいただけたようでなによりです。それではサロメさん、道を開けていただけますか? 私たちにはあまり時間がありませんので」


 そう言って葵お姉さまはにっこりと、だけど瞳には鋭い光をたたえてサロメを見据える。それに気圧されたように一歩たじろぎながら、彼女は「……ふんっ」と鼻を鳴らしていった。


「急ぐ理由は、あの小娘2人ってわけね……。あんたたちもあいつと一緒で、やり方が短絡的すぎて興ざめっしょ」

「……「あいつ」って、誰のこと?」


 サロメの言葉の中に気になるものを聞きとがめて、私は質問を投げかける。だけど、彼女は口を滑らせたと感じたのか視線をそらしながらちっ、と舌を鳴らして、強引に話を逸らすように冷笑を浮かべて続けた。


「ま……あんたたちが会ったところで、無駄なあがきだと思うっしょ。すでに計画は進んで、止めることなんて誰にもできないっしょ……くくっ」

「……? それはどういう意味なの、サロメ?」

「さて、ね。……こうなったらこっちも、奥の手を使わせてもらうっしょ」


 そう言ってサロメは、宝石のような輝きを持つ「それ」を懐から取り出す。そしてそれを頭上に掲げながら、私たちには聞き取れない呪文のような言葉を呟いていった。


「……この期に及んで、何をする気なの?」

「奥の手と言ったっしょ? 最後の切り札にするつもりだったけど、手段を選んでる場合じゃなさそうだしね――来いっしょ!」

「っ? 危ない、クルミちゃん!!」


 サロメのその台詞の直後、背後から遥の叫び声を聞いた私はとっさに横に飛ぶ。すると、さっきまで私が立っていた場所に迸る電撃が駆け抜け、一瞬目がくらむかと思うほどの眩しさが視界を覆っていった。


「な、なんなの?――っ!?」


はっ、と振り返るとそこには、気配を感じさせない二つの人影が見える。私たちは接近に気づかなかったことに戸惑いつつも、すぐさま戦闘態勢をとった。

だけど――。


「なっ……!?」

「……ど、どうして!?」


ある程度近づいたことによって「敵」の姿を確かめた私たちは、驚愕に固まってその場に立ち尽くす。

そこにいたのは、かけがえのない私たちの仲間で、誰よりも信頼のおける友人……テスラとナインだったからだ――。

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