第35話

「交渉成立、ですね。……それでは、始めましょう」


 アストレアさまはそう言って微笑むと、近くに立てかけていた杖を手に取って数回床をコンコン、と叩く。

 すると、それを合図にするようにして張りつめた冷たい空気がふわっ、と緩み、まるで目を覚ましたかのようにお城のあちこちから物音が聞こえてきた。


「えっ? これって……」

「さっきまでこの周辺に、『無音』の結界を仕掛けていました。あなたたちとここで話し合った内容を、他の人に聞かれるわけにはいきませんから」

『…………』

「でも、たった今それを解除しました。まもなくここに、城の者たちが駆けつけてくるでしょう」


 その言葉の通り、複数の固い足音が部屋の外から響いてきたかと思うと、扉の向こうでノックの音。それに対してアストレアさまが応えると、室内に何人かの兵士らしき人たちがぞろぞろと入ってくるのが見えた。


「失礼します。お呼びですか、アストレアさま……えっ?」

「……ふふっ、大丈夫ですよ。ここにいる二人は、フェリシアやカシウスと同じアースガルズからやってきた、私の客人です」


 私たちの姿を見るなり、反射的に身構えようとした兵士さんたちを制するように、アストレアさまは手をあげて笑いかける。それを見て彼らも表情に戸惑いを残しながら、腰に下げた武器から手を放していった。


「アースガルズからの、客人……? こんな時間にですか?」

「えぇ。……申し訳ありませんが至急、王との謁見の場を開いてください」


  × × × ×


 それからあたしたちは、1時間ほどたった後アストレアさまとともに王宮内を移動して、さらに広い部屋へと案内された。


「うわぁ……!」


 ここは、謁見の間。この国の王様が誰かと会うための部屋だと、さっきアストレアさまが教えてくれた。

聖女の間よりもさらに大きく、見上げると天井がはるかに高くて暗闇に包まれている。ただ、周囲には煌々と無数の灯りが置かれていて、少し薄暗いけどこの場に居並ぶ人たちの顔はおぼろげに確かめることができた。


「…………」


 出口付近には兵士さんたちが直立して控え、玉座に続く赤いじゅうたんの両側にはそれぞれ5、6人ほどの人たちが並んでいる。

その人たちは、歴史や美術の教科書に載っているような古めかしい衣装を着こんで……その背後にいるあたしとエンデちゃんを品定めするようにじろじろと視線を注いでいた。


「……あの人たちは、誰ですか?」

「このイスカーナ王国にて政事を行う官吏と、大臣の方々です」

「か、かんり……?」

『国王の仕事を補佐する、役人のことですよ』


 首を傾げるあたしに、エンデちゃんがそっと頭に直接響く声で教えてくれる。さらに、正面の玉座には白いひげを生やしたおじいさんが座っていて……その人は固い表情を浮かべながら、アストレアさまに向き直っていった。


「どうしたのだ、アストレアよ。急に話とは、何かあったのか?」

「はい、陛下。緊急の報告とお願いがあって、誠に失礼の極みながらお時間を頂戴いたしました」


 そう前置きしてからアストレアさまは、深々と頭を下げる。そして再び顔をあげると、険しい表情のまま言葉をつないでいった。


「……明け方近くに、魔物たちの大規模な攻勢がこの城に向けて行われます」

「なっ……? それは、まことか!?」

「はい。残念ながら、これは『予知(サキヨミ)』によるものです。これまでの襲撃とは違って勢いが苛烈なため、この城と兵士たちの被害は避けられないかと思われます」

「……っ……!」


 その話を聞いた途端、玉座の前にいた人たちは驚いた表情で顔を見合わせる。それから慌てた様子を隠そうともせず、口々にアストレアさまへ尋ねかけてきた。


「聖女アストレアっ……その被害とは、どれくらいの規模になるのですか!?」

「魔物の襲撃は、この前行われたばかりだ……! ゆえに、しばらくはないと申していたではないか!?」

「こんな時に、騎士団長のフェリシアと使い手のカシウスが不在とは……! なぜ、一人だけでも残しておかなかったのだ!?」

「っ、……」


 役人さんたちが問いかけるトーンはどんどん大きくなって、次第にアストレアさまを問い詰めるような厳しい口調へと変わっていく。

 しんと静まり返っていた夜の城内は、不安と苛立ち、混乱が嵐となって吹き荒れて……そんな中あたしは、ただ立ちすくんで経緯を見守ることしかできなかった。


「――静まるがよい」


 すると、玉座に座っていた王様が落ち着いた、威厳のある重い声でそう告げる。それを聞いた役人さんたちは息をのんで口をつぐみ、かしこまった表情で次の言葉を待つように姿勢を戻した。

 言葉を発したあと王様は、軽く呼吸を整えて背中を後ろに預ける。そしてアストレアさまに目を向けると、口を開いていった。


「数日先は予想しえても、それ以上となれば些細なことでも変化が起こりうる。……常々そなたが申していたことゆえ、致し方なかろう。むしろ、よくぞ事前に明日のことを教えてくれたと、我らは感謝すべきだろう」

「……ありがとうございます」

「して、願いとはなんだ? まずは申してみよ」

「この城下の街にて暮らす、住民たちの避難です。今すぐに近くの砦へと避難を行えば、彼らの被害は最小限に食い止めることができるでしょう」

「……ふむ」


 それを聞いて王様は目を伏せると、大きく息を吐き出す。

長い沈黙。広い室内が重い空気に包まれる……そんな中で王様は顔をあげて静かに立ち上がり、部屋の隅に控えていた大柄な兵士さんに向き直っていった。


「こうなっては、是非もなし……リシャール! フェリシアの帰還までそなたが騎士団を率い、防戦の指揮をとるがよい! そして一部の兵を避難民につけて、文官はその補佐を行うのだ!」

「はっ……! 第五騎士団は避難民の護衛、及び誘導の任に! 残った者は魔物の襲撃に備え、所定の持ち場へ向かわせます!」


 その号令とともに、場の空気が一変する。半分くらいの人たちが足早に謁見の間を後にして、残った人たちも覚悟を決めたような表情を浮かべながら話し合いを始めていった。


「……エンデ、めぐるさん」


 と、呆然と成り行きを見守っていたあたしたちに、アストレアさまが声をかけてくる。そして緊張をほぐすように微笑をたたえながら、静かに言い聞かせるような口調で言った。


「さっき、話したとおりです。あなたがたも、住民の避難に同行して……そして無事に、安全な場所へ送り届けてください」

「わ、わかりましたっ!」

『…………』


 緊張した空気に圧倒されたせいか、返事の声が少しだけ震えてしまう。それと対照的にエンデちゃんは落ち着いた様子で、アストレアさまを見つめながらこくん、と無言で頷き返した。


「ではお二人とも、あちらの騎士に同行してください。彼は避難する住民たちの警護を行う第五騎士団の団長、ウォーカーです」

「おぅお嬢ちゃんたち、よろしくな!」


 豪快な声に振り返ると、そこには背の高い男の人がいた。

傷だらけの甲冑を着ていて、頬にはまだ治りきっていない大きな傷がある。目元にクマがあるのがちょっと怖いけど、……なんとなく葵先輩の屋敷で会った執事さんに雰囲気が似ていて、頼りになりそうな感じだった。


「第五騎士団は、少し前に起きた魔物との戦闘で大きな被害を受けたため、あまり兵の数がありません。……いざという時には、よろしくお願いします」

「は、はいっ……、?」


 そう答えてからあたしは、……はたと、違和感に気づく。

 『よろしくお願いします』……? それって避難民のことをあたしたちに任せる、ということだから……つまり――。


「あ、あのっ、……アストレアさまは、どうするつもりなんですか?」

「ここに残ります。先ほどあなたたちに申し上げたとおり、この城の結界は私がいないと消えてしまいますからね」

「そ、そんな……!」


 アストレアさまも一緒に避難すると思っていたあたしは、それを聞いて呆然とその場に立ち尽くしてしまう。

 この人がいなければ、お城の守りは弱くなってしまう……それは、確かにその通りかもしれないけど……でもっ……!



「私は大丈夫です。だから、安心してください」

「け、けどっ……このままだとアストレアさまが危険だって、エンデちゃんも……!」


 食い下がるあたしに、アストレアさまは困ったように苦笑をもらす。その顔を見ていると、なんだか自分が聞き分けの悪い子供になった気分だ。

 でも……だからといってここで素直に、はいそうですか、と答えるわけにはいかない。この人の安全を守ることが、あたしの役目なんだから……!


「……っ……」


 もうすぐ日付が変わる……ううん、もう変わったかもしれない。だったら、いつアストレアさまが殺されてもおかしくない……。


「え、エンデちゃん……っ」


 思い余って、あたしは隣に立つエンデちゃんの顔を見る。……だけど彼女は口元を引き結び、あたしの肩に手を置きながら首を左右に振っていった。


『時間がありません。今の私たちに出来ることは、一刻も早く住民たちを安全な場所へと避難させることです』

「……。う、うん……」


 ……その表情を見て、あたしは理解する。おそらくエンデちゃんは、さっきアストレアさまが交換条件として「住民の避難」を持ち出した時、このことを予測していたんだろう。


「(だからさっき、あんなにも反対したんだ……)」


 その彼女が、引き下がってアストレアさまの指示に従うと決めた以上、……説得できる言葉はもう見つからなかった。


『……結界もそうですが、あなたさまの警護は万全と考えてよろしいのですね?』

「えぇ、もちろんです。私のことは、この城の警備兵がしっかりと守ってくれます」


 そう答えてアストレアさまは、手にしていた杖をぎゅっと握りしめて……あたしたちを納得させるように穏やかな表情で微笑んだ。


「めぐるさん、エンデ。……みんなのことを、守ってくださいね」

『……わかりました』


 エンデちゃんは静かに、射貫くような強い視線でアストレアさまを見据えながら、……険しい表情を崩さずに頷く。そして、


『すべてが無事に終わったら、……どうか、お忘れなく』

「はい、もちろんです」

「……そろそろいいか、お嬢ちゃんたち?」


 その時、背後から声をかけられてはっと顔をあげる。するとそこには、さっき紹介された強面の騎士さんが立っていた。


「もうすぐ住民たちの誘導が始まる。あんたたちの手も、貸してくれ」

「は、はいっ!」


 ……そうだ。こうなった以上やるべきことは一つだけ。

みんなも、アストレアさまも……全員助けてみせる。そのためにも、今は自分にできることを頑張らなきゃ……!


  × × × ×


「押さないで~! 大丈夫、まだ時間はありますから! 荷物は最小限でお願いします!」


 あたしたちは騎士さんの説明通り、住民の人たちを避難させるため順番にお城の出口へと誘導していった。

 みんな荷物を手に持って、大通りに列をなしながらゆっくりと進んでいる。さすがに、それぞれの表情は暗かったけど……慌てず騎士さんたちの指示に従ってくれているのが、せめてもの救いだった。


「……あ、おばあさん! お荷物落としましたよ!」

「あぁ、ありがとうねぇ……」

「いえ、これくらいは――って、ごめんなさい! そっちは通行止めになってるんです!」


 この城下街に住んでいる人はどれだけなのか知らないけど、……見たところチイチ島の人々と同じか、それよりも少し多い感じだ。

 その全員を避難させるのは、すごく大変なことだと思う。……まして、今は夜。みんなの不安が会話の端々から伝わってきて、あたしは胸が締め付けられるような思いだった。


「ねぇ、おかあさん、これからどうなるの……?」

「大丈夫よ。きっとまた、戻ってこれるわ」

「しかし、いつになったら戻れることやら……」

「仕方ないさ。命には変えられない」


 その言葉を、あたしはできるだけ聞き流そうと努力してみたけど……やっぱり、辛い。


「(こんな時、すみれちゃんならどうするのかな……それに)」


 これからやってくる魔物の襲撃が、どれくらいのものかはわからないけど……もしここにすみれちゃんがいたら、どれほど心強かったか。

 あたしの力で、その脅威に対抗できるんだろうか……? そんな不安と怖さばかりが胸の中に浮かんできて、全身が押しつぶされそうだった。


「…………」


 ふとあたしは、少し離れた場所でたいまつを片手に黙々と人々を誘導するエンデちゃんを見る。

 あたしを如月神社で助けてくれた、無数の光の槍……あれを生み出した彼女の力があれば、アストレアさまだけじゃなくてこの国のみんなを救えるかもしれない。

 そんなことを、思ってみたけど……。


「(……駄目、だよね)」


 エンデちゃんは、自分の世界……エリュシオンを救うために、この世界に来た。だから住民の人たちを守るために魔物と戦って、と彼女に頼るのは筋違いだと思う。

それに……お願いをしたところできっと、エンデちゃんも――。


「きゃあっ……!」


 その時、悲鳴が聞こえてあたしは顔を向ける。すると人混みの中で、女の子が地面に倒れているのが見えた。

 ……周りに目を向けても、お母さんらしき人の姿がない。きっとこの混雑の中ではぐれてしまったんだろう。


「うっ、うううっ……!」


 倒れたまま、すすり泣く女の子。それを見てあたしが、近寄ろうと足を踏み出しかけたその時……髪を撫でるように、つむじ風がひらめく。

 何だろう、と思って立ち止まると、あたしの目の前を艶やかな長い髪が舞うようにすり抜けていった。


『……大丈夫です。この程度なら、すぐに治療できます』

「……っ……」


 それは、エンデちゃんだった。

 あたしよりも早く女の子のもとに辿り着き、小さな体を両手で抱き起こす。そして、涙の浮かぶ目元と頬についた泥汚れを自分のケープで拭い、同時に手のひらを血のにじんだその子の膝の上へとかざしていった。


「あっ……?」

『急ぐ必要はありますが、怪我をしては意味がありません。……これで、大丈夫でしょう』

「ぐすっ……あ、ありがとう、お姉ちゃん」


 女の子がお礼を告げると、エンデちゃんは穏やかに頷く。

 ……優しそうな笑顔。でも、それはたいまつの明かりが揺らいだ瞬間に消えて、そこには怖いくらいに険しい横顔が戻っていた。


「アニー! こんなところにいたのね……!」

「お母さんっ……!」

『合流できてよかったですね。……せめて、少しでも遠い場所に逃げてください』

「う、うんっ……ありがとう、お姉ちゃん」


 女の子は笑顔でそう答えて、お母さんらしき人はエンデちゃんにぺこぺこと頭を下げると、その子を抱きかかえながら避難の列へと戻っていく。

 そしてエンデちゃんは、地面に置いたたいまつをゆっくりと拾い上げながら、その二人が人混みに消えるまでじっとその場に佇んでいた。


「(エンデちゃん……)」


 さっきまで、少しだけ思っていた。エンデちゃんは、エリュシオンを守るためならこの国の人がどうなってもいいのかな……って。

 でも、違った。エンデちゃんもきっとあたしと同じ気持ちで、みんなのことを守りたいと思ってくれてたんだ……。


「……エンデちゃんは、優しいね」


 あたしはそう言ってエンデちゃんに近づき、その背中に声をかける。彼女がどう思ってるのかはわからないけど、……せめて、一言謝りたかった。


「誤解しちゃって、ごめんね」

『…………』


 だけど、彼女は考え込むように黙ったまま……じっとたいまつの火を見つめながらぼんやりとしている。

 まるで心がどこかに行ってしまったように、あたしの言葉に気づいてない様子だった。


「……エンデちゃん?」

『……ぁ……』


 もう一度呼びかけると、ようやくエンデちゃんは顔をあげてあたしに振り返ってくれる。ただ、やっぱり何か気がかりでもあるのか……浮かない表情をしていた。


「どうしたの、エンデちゃん。心配事?」

『…………』

「やっぱり、アストレアさまのこと? だったら――」

『あ、いえ。あのお方のことは、もちろん心配なのですが……その』

「……? 他になにかあるの?」

『先ほどのお話に出てきた、フェリシアとカシウスというお名前が、ちょっと……』


 フェリシアとカシウス……?

 そういえばアストレアさまが、そんなことを言ってたような……。


「知ってる人なの?」

『珍しい名前ではないので、同じ呼び名の別人かもしれません。……ただ、カシウスの名までもここで聞くことになると、もしかして――』

「きゃあああああーっ!」


 すると突然、エンデちゃんのその言葉が、大きな悲鳴にかき消される。


「な、なにっ!?」

「魔物だ! 魔物が出たぞ!」

『……っ!』


 それを聞くや、エンデちゃんはたいまつの灯りを頼りに一目散に声のした方向……避難列の先頭へと向かって駆け出した。


「あ、待って!」


 あたしも慌てて、その背中を追いかける。

 列の先頭は、すでに壁の向こう側に出ていた。それを確かめてからあたしは開かれた木の扉の間を駆け抜け……暗がりの中で立ち止まる、エンデちゃんの背中を見つけた。


「エンデちゃ――、!?」


 声をかけようとして、……はっと立ち止まる。

 月明かりに照らされた砂丘をなぞるように、うごめくいくつもの大きな影。

目をこらして見ると、それは熊のような、それともライオンのような、ゴリラのような……パッチワークのバケモノが、何十……ううん、何百という単位で、こっちに向かってきていた。


「(如月神社を襲ってたのと、似てる……!?)」


 細部は違うけど、雰囲気はそっくりだ。

 どうして1000年前のヨーロッパに、現代に出たバケモノが現れたのかはわからない。でも、やることはわかってる。


「(この前は、負けちゃったけど……!)」


 あたしの後ろには、避難しなきゃいけない人がたくさんいる。

 弱音を吐いてる暇なんて、ない……とにかく、みんなを守ってみせるんだ!


『どうして……』


 その時。エンデちゃんが、ぽつりと呟く。その横顔には驚きと戸惑いが、ありありと浮かんでいた。


『魔物には知性がないはずなのに、待ち伏せなんてありえない……! それにアストレアさまも、襲撃は夜明け後だと……!』

「エンデちゃん!」

『……っ!』


 あたしが叫ぶと、小さな肩がビクリと跳ねる。そして、


「今は考えてる場合じゃないよ! あいつらを倒して、みんなを避難させなきゃ!」


 そう言ってあたしは、『ローズ・クラッシャー』を取り出して構えた。

 ここに辿り着いてみんなを襲う前に、あいつらを全部倒してみせる……っ! その覚悟を秘め、あたしは武器を握る手に力を込めていった。


「エンデちゃん、力を貸し――えっ?」


 その時……視界の中に入ってきたものを見て、今度はあたしが目を疑う。そして、声を失うどころか呼吸すらも忘れて、その場に固まってしまった。


「なっ……!?」


うそ……ありえない。

 魔物の群れの中から、悠然とした足取りで歩み出てきたのは……一瞬、人と見間違えるようなシルエット。だけどその背中から生える翅と尻尾のような塊が、そうでないことを示して異様さを際立たせている。

 ううん、……それ以上にあたしは、「あの姿」を知っていた。

 短く切りそろえられた髪に、赤いセクシーな衣装。背後に無数の化け物を従えながら、炎によって照らし出されたその鋭い瞳を、血のように真っ赤に染め上げた「それ」は――。


「荻野目、先生……メアリっ……?」


 ゼルシファーの復活を企み、それが失敗したあと自ら命を絶った 元・聖チェリーヌ学院中等部の養護教諭にして、悪の組織を束ねる幹部――。

 そこにいたのは間違いなく、あのメアリだった。

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