魔人

 神々がこの世界に干渉し始めた頃、ただ一柱だけ、この世界は、人間の世界だから干渉すべきではないと人類側に立って神々の横暴を止めようとしてくれた神がいた。

 暗黒邪神。

 神々に洗脳され、加護を受けた人間たちによって「悪」に零落した神である。

 その神が、封印される前に人類が神に対抗するために用意した種族が「魔人」という種族である。

 比較的カラフルな色合いの髪色を持つこの世界で、唯一、黒髪を持つ種族が魔人である。

 そして、この種族は転生を繰り返し、血脈ではなく霊的な繋がりで種族を維持している。

 七七人。

 魔人は世界で、これだけしかいないのである。

 しかし、この人数で世界と戦える戦闘民族である。

 天性の才能は……

 その瞳と膂力にある。

 その目には力の波濤が映し出される。

 動きの予測や視覚外からでも動きを捉えることができる。

 反射神経と合わせて、魔人に攻撃を当てるのは至難の技なのだ。

 そして、その膂力は、人間の平均を超える。

 ので……

 『いつも思うけど……それずるい!』

 「……僕もそう思います」

 ベッドを素手で解体する様は、まさに狂戦士さながらだった。

 こんなものに魔法は使わないが……

 ランスロット自体は、この力は恥ずべきだと思っている。

 だから、髪色を変えようと色々と苦労したのだ……

 『魔人の黒って治らないものかと思ったけど……?』

 「だから、頑張ったんですよ」

 正義聖神の信者であるランスロットにとって「魔人」であるという事実が苦しみでしかない。

 この呪いは生涯続くのである……

 こういうところでも彼と彼女は共通点があった。

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