戦士

 戦士とは、戦闘をなりわいとする職業である。

 武芸はもちろんのこと、戦術、戦略を練る頭脳。武器の性質を知悉し、かつ、戦闘時に仲間に対する指揮を取る統率力を必要とする高い人間力を必要とする職業である。

 「武器による傷がないですね」

 なので、武力のみに頼る戦士は「狂戦士」と呼ばれるし、戦術、戦略に特化した戦士は「軍師」などと呼ばれる。

 『あなたがそう言うなら、そうなのね……死因はなんだと思う?』

 武器に精通しているからこそ、その武器による傷の鑑定ができたりーー

 「外的な要因でなかったら、内的なものかもしれませんね」

 死因などを推測することができるのである。

 検死の真似事くらいは朝飯前だった。

 体のことなら、武術を修めていれば高い専門的な知識を持っていると言ってもいい。

 この世界は騎士は治安維持の任務に当たることが多いので、こういった捜査技術は必須と言っても良かった。

 「病気は無いようです」

 骨だけでわかるのか?と思ったりしたが……

 ランスロットの出した答えで明瞭になった。

 「病人なら、無意識にその部分の負担を減らそうとするので歪みが出るものですが……この骨格は、きれいに発達してます。病気がなく、怪我もないのに死んだ理由は……一つ」

 『餓死?』

 「骨は痩せていません。餓死はありえないです……多分……

 生命の魔法じゃないでしょうか?」

 ランスロットが言う。

 人間。人類の使う魔術は万能に見えて、そうではない。

 魔術を使うものが「理解」したものしか、使えないのである。

 この世界では、生死、精神、電磁波、原子など解っていないものを魔術に組み込むことはできない。

 ルッフェが「天才」と称する理由の一つは、夢魔であることで「精神」を理解していることである。

 理解しているからと言って、説明することはできないのだが……

 人間の魔術師に比べて大きな優位性を持っている。

 『生命?

 ……生命付与……

 なるほど、それでゴーレムか……

 この不自然な箱庭も生命に溢れていたし……納得だわ……

 あとは、ここの出方よね?』

 「ここが体内の中なら……今どのへんでしょうかね?」

 『決まってるわ……』

 どうやら、間に合ったらしい……

 揺れを感じて、ランスロットは反射的に飛び退くと、足吹きが今までランスロットのいた所に飛んできた。

 「なるほど……『胃』ですね……

 ここに着いたのが夜だったから、今まで動きませんでしたが……」

 『朝餉の時間には起きてくるわよね?』

 おそらく、さっきのメイドが契機だったのだろう。

 「僕を喰おうとするのか?」

 ランスロットの目つきが変わる。

 真っ黒な双眸……

 それが、ランスロットが戦闘の「天才」と自信を持って言える理由。

 ーー魔人眼。

 で、あった。

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