玄関ホール
人気配は無いのに、寂れた様子はない。
非常に行き届いた手入れに舌を巻く。
『うちの使用人も結構執拗に掃除に来ますが……ここは、もっとすごいんですかね』
「その使用人は他の用事があったんじゃないかしら?」
ランスロットは、何が?と返したが、ルッフェは、その問に答えなかった。
慇懃無礼な戦闘狂の美青年。
顔立ちの良さは、貴公子然としているのである。
年頃の少女が興味を惹かない訳がない。
「罠の類はなし……本当に『住処』かも知れないわね」
『『棲家』では無いんですね』
さっきの軽口とは打って変わって、緊張感を漂わせるランスロット。
ルッフェも「何も無い」ことに関して警戒心を傾注した……
「精神力が無いから、走査が……」
『今しますか?
正直、出る気がしないんですが?』
「……法術に精神力融通する魔法なかったけ?」
『自分にかけても変わりませんよ?』
意外に不便な体である。
夢魔であるルッフェは、他人の精で生命力と精神力を維持している。
しかし、この体になったお陰で、普通に食べ物を食べても命を繋ぐことができるようになった。
もともと、半分人間だったので、食事で体力を回復させることができたのだが……効率が悪かったので、男性の精を定期的に補給する必要があったが、必要はないのだ。命を繋ぐことには……
しかし、精神力はそうはいかなかった。
これは、なぜか完全に精に依存しており、寝ても回復しない。
この体になって、男性と融合したにも関わらず、回復しない。
今でこそ、夢の中の行為で補給できるが、融合当初は、意識を維持するギリギリの領域で生活していた。
うっかり、気絶してしまった時にランスロットと意識を共有させる方法を知って、精神力を補給。
強姦される前に意識を回復し、撃退したという経験がある。
ま、この時の話に興味がある奇特な方もいないだろうから、割愛するが……
閑話が長くなったが……
ルッフェの魔力感知は、今視界内に限定して発動させている。
電探のように空間を走査するより神経を使わないのだが……
死角があるので、緊張感は何時もより強い。
「視覚の魔力感知も精神力を使うし……あなたに変わったほうが良いかも」
『良いんですか?』
「その前に……ね?」
『ね?って……ここでやる気ですか!?』
「ここが玄関ホールでしょ?
外から見た感じだと、この横に応接間、正面がホール。
客間は2階……」
と、つらつらと新しい羊皮紙に間取りを書いていく。
『よく、わかりますね?』
「外装や庭園を見て、貴族的な屋敷だから、間取りなんかは予想できるわよ」
そんなもんですか?
と、ランスロットは言った。
「ま、ここに罠がないなら……ここにも無いでしょう?」
そう言って、寝室を指差した。
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