玄関先にて……

 扉の前に立つ少女は、まず観察した。

 ドアノブ、蝶番、鍵穴と付いているものは趣味のいい彫刻で装飾されてはいるが、普通の扉に見えた。

 『開けないんですか?』

 「開けるわよ」

 と、手袋取り出して手にはめる。羊皮の柔らかい手袋である。

 とりあえず……

 「(聞き耳っと)」

 声を建てずに扉に耳を当てる。

 扉の向こうに動くものはない。

 罠の有無を調べ始める。仕掛けがあるとしたら、扉の向こうだろうか……

 反射神経には自信がある。

 が、何かあったときに避け損なったら死ぬかもしれない……

 長命の種族であっても、事故死はするのである。

 「罠はないわね」

 しかし、拍子抜けするほどあっさりと決めつけた。

 『早いですね?魔術ですか?』

 「私の魔術は、基本的に『対人』よ?

 一応、観察と推理。

 まず、蝶番。魔術で、強化されてるからサビが浮いてないでしょ?

 こういうとこにはわざわざ罠は仕掛けない。

 開ける前に『魔力解除』をかけるから、開けて発動するタイプの罠はこれで半分は大丈夫よ」

 『他人の家を勝手にいじっていいんですか?』

 「こんなところに付与魔術掛けてるってことは、長く開けるってことだから、大丈夫でしょう?」

 『……良くはないでしょう?』

 「緊急事態!」

 ドアノブと鍵穴にも罠がないことを説明する。

 「ま、生活空間に罠仕掛けるのは、ばかのすることね」

 『僕の知ってる魔術師は自室の扉にクロスボウ仕掛けてましたが?』

 「それでどうしろと?

 ばかのすることよ。

 少なくても様式美、美意識を持つ魔術師みたいだし……場所はともかく、まともな施設かもしれないわね……」

 最後に油断は出来ないけど……と、付け加えた。

 馬鹿かどうかはともかくとして、脳の神経が導火線か綱線でできてる連中である。

 「さ、びっくり箱を開けましょうか?」

 『慎重にぃって!』

 無造作にルッフェは扉の取っ手に手をかける。

 「鍵はかかってないから、罠を調べたのよ?」

 まだ、ここまでは慎重だった。

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