夢魔

 ルッフェという少女は今年で一六〇歳になる永遠の十七歳の少女である。

 冗談はさておき、夢魔の存在はその精神性にあり、夢に現れる姿がそのまま実体となった姿で、この姿はおそらく、今取り憑いているーー

 「寄生してるの間違いでは?」

 『融合してんだから、共生してるが正解よ!』

 共生した聖騎士ランスロットの意識による所が大きかった。

 『へんたーい!』

 「……女性の体をまじまじと見る機会なんて、ほとんどないから乳母や使用人……あと、幼い頃に一緒に遊んだ従姉くらいだ」

 『普通に生活してて、使用人の裸を見る機会なんてないと思うわよ?』

 「母が使用人だったからな……使用人部屋に行く機会が多かった……」

 『そう……』

 なので、精神年齢がそのまま容姿にあらわれることが多い。

 「160年生きて、十七歳?」

 「うっさい」

 容姿は、みな一様に整った美形。魔族特有の金色の髪をしている。

 瞳も金色か濃い茶色をしている。

 闇の眷属である魔族は地下世界に階級社会を構築し、下に行けば行くほど背徳的で醜くくなる。

 そして、最下層には魔王と呼ばれる「色欲」「強欲」「憂鬱」「憤怒」「怠惰」「虚飾」「傲慢」を極めた魔族がアンニュイに佇んでいる。

 「現在の魔王は怠惰すぎて、脅威にならないと聞いたことがありますが……」

 「人間の郷に来るような魔族は、人間よりもまともな連中よ?

 ときどき、クズが出てくるけど……」

 容姿の整った魔族。人間とあまり変わらない「常識」を持つ魔族だけが、地底階級王国から出てくる。

 人間に比べれば、驚く容姿だが……性格は非常に良く。

 聖堂でも修行する魔族がいるくらいである。

 犯罪を犯すような魔族は「悪魔」と言い換えるのが普通である。

 『魔女モルガンがいい例ね……』

 彼女の母親であるが……どんな悪魔なのかは調べがついていない……

 悪魔であることは、確かなのだが……

 魔族の話はここまでにしよう。

 夢魔は、種族的な特徴として「闇視」と「睡眠が不要」「夢見る力」は説明したとおりである。

 また、魔術的な才能が豊かで、人間の魔術とは違う体系の魔術を使う。

 ルッフェは、ルーン魔術を使う。

 人間の魔術で無理やり彼女の魔術を解釈するとこうなる。

 「指先の『晶術』で大気中の『魔素』に干渉する」

 『晶術も空術も威力が違うでしょ?』

 人間の使う魔術の解説は割愛する……いずれ、それだけで話を構成することもあるだろう。

 『ただの『完全幻術』よ?』

 夢に干渉する力の応用である。

 以前、盗賊を消し炭に変えたことがあったが、あれは「幻覚」を強化したに過ぎない。

 物理的な攻撃じゃないために……

 『あんたとの初手……全然効いてなかったのよね』

 「精神防御は神聖騎士の基本ですからね……」

 なので、幻術とわかってしまえば抵抗も容易いのである。

 今の状況も、本来なら「起こり得ない」状況なのであるのは理解していただけただろうか?

 世界法則に幻覚を掛けたような状況なのである。

 「だから、禁忌指定されて邪悪認定されて……騎士号剥奪された……

 名誉回復のために『聖魔霊剣』探索のクエスト(使命)を受けた……

 もう、あらゆる意味で君のせいだな」

 「うっさい!『悪魔』に同情したあんたが愚かなの!ばか」

 精神年齢が容姿に現れるというが……

 ときどき、彼女は容姿以上に幼いことがある。

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