第3話
それからなんとはなしに、彼女を気にかけるようになって見ていると。
なんともギャップが面白い子だ。ちょっと天然で、子供っぽい。どんくさいところがあるけど男前。と思ったら強がりで。
恋愛対象外だけど、からかうと面白くて、いつの間にか見かけたらついかまってしまうようになっていた。隣の琴音ちゃんにはいつも睨まれた。俺みたいなのが、大事な親友にちょっかいかけるのが許せないようだ。
そんな咲ちゃんにあだ名をつけた。──ぼこちゃん。
俺が女たちといちゃついているところに出くわす度に見せる彼女の態度が、なんとも
「まんだまんだ、おぼこいなぁ」
その時の従姉妹は中学校にあがるかどうかくらいの少女だったのだけれど、『おぼこい』という言葉はなんとも咲ちゃんにマッチしていて、呼ぶたびに吹き出しそうになる。呼ばれた本人はぷうっとむくれて怒るんだけど、その様子がまたおぼこいものだから笑えてしまう。
「お、ぼこちゃん」
通りかかった咲ちゃんに初めてそう声をかけたとき、彼女はきょとんとして首を傾げてきいてきた。
「……なんですか? それ」
「君のあだ名」
「なになに、それどういう意味?」
俺の左右にいた女たちが口をはさむ。
「あんまりおぼこいから」
「おぼこいって?」
「さぁ?」
とぼけてみせる。
「んもうっ。樹ったら、訳わかんな~い」
「可愛いあだ名だろ?」
甘えた声でいう女を横目にそう咲ちゃんに声をかけると、彼女もおぼこいの意味を知らないようでなんとも言えない顔をしていたが、次に会ったときには言葉の意味を調べてきたようでぷりぷり怒って言った。
「変なあだ名をつけないでくださいよ~」
「可愛いじゃないか」
「可愛くないです! それにそんなに幼くないです!」
「自覚なしか」
「自覚ってなんですか! ……琴もなんとか言ってよ~」
斜め後ろを振り返って親友に助けを求めるも、いつもクールな琴音ちゃんまでも笑いをこらえている。
「もう、琴まで! ひどいよ~」
「くっくっくっく……」
こらえきれずに俺が笑い出すと、ジト目で睨まれた。
だけどこのあだ名は、呼ぶ度に彼女があまりにも否定して嫌がるので、しばらくしてやめにした。
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