12 染まる
私だけには名前があった。此処の人々の中で、名があるのは私だけ。だから私は此処を出ようと思ったのです。ですがそれは叶いませんでした。みんなの中では、私には名前がないのです。貴女、君、彼女、そこの人……私は私がわからなくなりました。折角きんき?とやらを犯して付けてもらったのに。だけど不思議と涙は出なかったのです。そうして気が付きました。
私はとうに、此処に縛られたのだと。
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