シーンG
■シーンG
水面に、電話で話をしているハルカが浮かび上がった。
「兄さん? どうしたの?」
電話の相手は彼女の兄だった。
「お前、最近無理してないか?」
「……やっぱり私、疲れてるかな」
ハルカの兄は、声からでも妹思いの性格が伝わってくるような優しい声をしていた。ハルカも、そんな兄のことを信頼しているようだった。
自分には見せない姿だな、とヒロキは思った。
「だけど、ヒロキには心配かけたくなくて……。でも、離れて暮らしてみて、やっぱり私にはヒロキが必要だって、改めて思った」
「そうか……」
ぽつりぽつりと話すハルカに、兄は安心したような不安になったような返事をする。
「ヒロキには、ヒロキがいなくても大丈夫、って言ってあるんだけど」
「あのさ」ハルカの言葉を遮り、少し間を置いてから気まずそうに兄は言った。「言いづらいんだけど……」
「どうかした?」
兄は言うか言うまいか迷っているように感じられたが、やがて意を決したように切り出した。
「その、ヒロキくんさ、昨日車に撥ねられて、病院に運ばれたらしいんだ」
ハルカの顔から血の気が引いたのがわかった。受け入れられない、という気持ちが露わになっている表情をしていた。
「えっ……?」
ハルカの驚きと悲しみと不安が入り混じった声とともに、水面が波紋を描き、映像は消えていった。
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