第10話
「まさくんと学校生活が送れるなんて、夢みたいだ」
「おれもうれしいよ、湊兄ちゃん!」
「…まさくんに何やってんだこの野郎!」
「もう、うるさいなぁ。…じゃあ、まさくん。転校初日だから、職員室に寄ってから行くんだよ?」
耳元で囁かれた優しい声にくすぐったく笑って返したまさき。先に行っていたたまきがいつまでたってもついてこないまさきに後ろを振り返ったら、天敵ともいうべき幼なじみに抱きしめられている光景があって。たまきは思わず怒鳴った。足早に近づいてきてべりっと2人を引きはがす。そのまままさきの手をひき、校内へと向かう。
引きはがされたことに若干不満そうな顔をしつつも、犬居湊は小さくため息をつくと。ぱちんと1つウインクをして、笑顔でまさきに手を振った。まさきもずるずるたまきに引きずられるように歩きながら、離れていく犬居湊に大きく手を振った。
たまきが行ったのを確認して、その後姿を見ながら犬居湊のもとに他の生徒会役員が集ってくる。
「会長、さっきの生徒は…」
「あぁ、伏御まさきくん。今日から編入する咲玉藩からの転校生です」
「伏御ってことは伏御たまきの縁者ですか? 会長も面識が?」
「はい。たまきくんの甥っ子で彼が溺愛している子ですよ。たまきくん関係でなにかあったなら、まさくんを呼ぶといいです」
「甥っ子…って甥っ子!? 伏御たまきが叔父さんってことですか!?」
「そうですよ、伏御飴細工工房の女将さんは若い時にまさくんのお父さんを生んだので。僕もまさくんのことは弟みたいに思ってますし」
全体的に可愛い子なので変なのに狙われないか心配なんです。気にかけてあげてくださいね? 爽やかなのにどこか威圧感の漂う笑顔で犬居湊から言われた生徒会役員たちは、はいっと運動部張りの大きな声で答えた。
満足したのか、やわらかな笑顔に戻った犬居湊はもう一度腕時計を見て、集まっている生徒会役員たちの顔をぐるりと見まわした。
「予鈴2分前です、門を閉めて僕たちも教室に戻りましょう」
生徒たちのお手本となる生徒会役員が、朝のHRに遅刻したのでは示しがつかない。朝の挨拶運動をしていたから遅れたという理由は納得されるだろうが、それでは格好がつかない。
頷いてもう登校してくる生徒がいないことを確認し手早く校門を閉めた生徒会役員たちは、駆け足で校内へと入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます