SFなのに超絶ハートフル、近未来なのに現代が抱える問題が透ける、戦闘シーンが醍醐味かと思いきや日常系?!
SFであり、アクション物であり、推理モノでもあり、ハードボイルド、そしてヒューマンストーリー。
個性豊かな登場人物たちが、作者の紡ぐそれぞれの口調と話し方のクセで生き生きと読者の想像の世界を動き出します。
緊迫した場面が多いかと思いきや、そのどれも小まめにほっこりとした日常の一場面で〆る緩急自在な構成に、ライトノベルの様相ながら内容としては一般的な文学作品のどちらにもなりえるだろうと予測するのは、私だけではないような気がします。
様々な要素とジャンルを詰め込んでなお、その真ん中にいつもあるのは、「ヒト」がヒトたる所以を読者に投げかけ、真摯にあたたかみのある表現で紡ぐ作者の姿勢と見ました。
色々な「ヒト」が登場します。時にはヒトに見えない「ヒト」も、「ヒト」に見えてそうでなさそうなヒトも。
主人公が生きてゆく理由を与えられ、見出し、また誰かに与えて生きてゆく過程を作者は「成長」と表していますが、別の言い方をすればこれが「ヒト」の「所以」であるのではないでしょうか。
どんな人でも、この小説の中で、見過ごしておけない人にきっと出逢えるはず。