【下書】開示部分――下書開示のための準備②

 回想の合間に回想が挟みこまれるのは、どうしたって仕方がない。書いた当時も混乱していた。当たり前に。そのときはもちろん物凄く。


 私は完全に取り乱していた。


 時系列順に、なるべく時間の進み具合順にコトを並べていこうとは努力した。でも、私はミズキさんと浅倉くんが何をしたのかわからなくてそこを書くのは後になった。

 入れ替えたら変だったので、書いた順に戻した。


 今になって思い出してみるとミズキさんがはじめに浅倉くんの足のあいだに屈んでその後たぶんベッドに乗ったのは間違いない。こんなことならちゃんとしたベッド買っておけばよかったとミズキさんが笑った声が聞こえたから。私に聞かせるためのものだったかもしれない。わからない。


 私は自分のことしか考えていなかった。いつもそうだ。

 いつもそう。


 いま泣いているのも自分の痛みのせいだ。


 彼らは何を考えていたのだろうと、もしかしたらそれがわかるかもしれないと思って私はこの下書を読み返し、手を入れ、どうにか形を整えようとして、出来ないまま。

 出来ないまま。


 ひとの気持ちなんてわからない。

 ほんとに、わからない。


 好きだとか愛してるとか言いながら、だって、私のことを置いていったのはあっちだ。

 私に行くなと言ったくせに。


 だからもう、私は彼らのことを書かなくてもいいのかもしれない。書いてもわからない。思い出せない。理解できない。

 愛することも、たぶん出来ない。


 ならばいっそ自分の言葉だけ書くのもそれに相応しいやり方なのかもしれない。

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