『食べられません』(課題:復讐)2016/4/26
『食べられません』
人物
山岸瞬(11)小学生
山岸恭一(17)瞬の兄。引きこもり
山岸洋子(43)瞬の母
金木正也(10)レオの飼い主
金木華(36)正也の母
◯金木家・外観
庭の広い一戸建て。
◯同・庭
山岸瞬(11)が塀の上から顔をだしている。その手には双眼鏡。
◯路地裏
瞬がゴミ箱のポリバケツに乗って、背伸びして塀につかまっている後ろ姿。
◯金木家・庭
塀から顔をだしている瞬。
その視線の先には白い中型犬が伏せの格好で犬小屋におさまっている。
瞬「シロ……」
犬が瞬に気づき、小屋からでて吠え始める。
瞬「(口に指をあて)シーッ! シーッ!」
金木家の玄関があいて、金木華(36)と金木正也(10)がでてくる。
塀から頭を引っ込める瞬。
華「レオちゃん、静かにしてちょうだい。今 散歩につれてってあげるから」
正也「レオー。散歩だぞー」
塀に向かって吠え続けるレオ。
正也がリードを引っ張って、レオを引きずるように家をでる。
塀からそーっと顔をだす瞬。
◯道
正也と華がレオを連れて歩いていく。
脇の路地から瞬が現れ、さびしそうな表情で正也たちが向かった方を見つめる。
◯マンション・外観
『ペット禁止』の看板。
◯同内・山岸家・玄関
玄関から瞬が入ってくる。
瞬「ただいまー」
◯同内・リビング
山岸洋子(43)がソファでドラマを見ているところに瞬が入ってくる。
洋子「おかえりー。ねえ、瞬君、お兄ちゃん のとこにコレ持ってってくれる?」
洋子、瞬にゴキブリ駆除用のホウ酸ダンゴを渡す。
瞬「なにこれ?」
ホウ酸団子のパッケージを瞬に見せる洋子。
洋子「ゴキブリころすやつ。たぶんお兄ちゃんの部屋が発生源だから、お兄ちゃんの部屋のスミに置いといて」
◯同内・恭一の部屋前
扉には『勝手に入ったら殺す』の文字。
ドアをノックする瞬。
恭一の声「なんだクソババア! まだ腹は減 ってねえんだよ!」
瞬「……兄ちゃん、ぼくだよ」
恭一の声「なんだシュンか、入れよ」
◯恭一の部屋内
カップラーメン容器のゴミやらが大量に散乱している部屋内。ゴキブリが物陰を動いている。
PC前に座っている山岸恭一(17)。
部屋のすみにホウ酸ダンゴを置く瞬。
恭一「今度は兄ちゃんに捨て猫の里親募集の ポスターでも作ってほしいのか?」
ポスターの束を取りだす恭一。
ポスターには『捨て犬の里親募集』の文字と、金木家のレオの写真。
恭一「兄ちゃんの力作だったんだが、こんなに余っちゃったなあ。もう飼い主も見つかって必要ないのにな」
ポスターのレオの写真を見つめる瞬。
瞬「お母さんに頼まれて、そこにゴキブリころすヤツ仕掛けたから」
恭一「ほい、了解了解。瞬、なんか困ったことあったらオレに相談しろよ」
◯道
雨がザアザアと降っている。
黄色い帽子とランドセルの瞬が、傘をさして歩いている。
道路のすみに車にひかれた白い犬を見つけ、血相を変える。
傘を放りだして、犬に駆けよる瞬。
瞬「……シロ!」
◯金木家
ずぶ濡れの姿で、玄関のチャイムを連打する瞬。呼吸が荒い。
家から洋子がでてくる。
瞬、犬を見せて、
瞬「あの、この子、道で……!」
露骨にイヤそうに鼻をつまむ洋子。
華「これ、まさかレオ?」
頷く瞬。
華「死んでるの?」
瞬「うん……」
ドタドタと家の中から足音。
正也の声「どうしたの、ママー?」
ワンワンと鳴き声。
正也が玄関口にやってくる。
正也はビーグル犬を抱っこしている。
華「マーくん、見ちゃダメ。部屋に戻って」
追い返そうとする洋子の手をすり抜け、瞬の前に立つ正也。
ビーグル犬が何度も吠える。
正也「なーんだ、レオか。汚いなあ。新しくきたジョンのほうがずーっとカッコいいよ。 なあ、ジョン?」
正也の腕のなかで吠えるビーグル犬。
血の気を失う瞬。
華「うちのなかに戻ってなさい」
家の中に押し込まれる正也。
華「3日前に家出して行方不明だったのよ。それは、庭のそのへんに放っておいて。雨 がやんだら処分しておくから」
家のなかに戻る華。
悔しそうな表情でぽろぽろと涙をこぼす瞬。
瞬、雨の中、犬を抱いたまま走り出す。
瞬「うおおおぉぉ」
雷の音。
◯公園
小さな公園。
樫の木の根元に『シロの墓』と書かれた木の板が刺さっている。
その前で手を合わせている瞬。
背後にジャージ姿の恭一。
恭一「おまえ、里親探しあんなに頑張ってたもんな。なのに、悔しいよな。あの家族も ムカつくよな。さっさと新しい犬に乗り換えて過去の犬には興味ナシってか」
瞬「兄ちゃん、ぼく、アイツら許せない」
恭一「(ニヤリとして)なら、復讐してやろうぜ?」
恭一がズボンのポケットからホウ酸ダンゴを取りだす。
瞬「これって、ゴキブリの……?」
恭一「こいつを新しい犬のエサに混ぜてやるんだ」
驚く瞬。
瞬「(不安そうに)そんなことしたら死んじゃうんじゃ……?」
恭一「大丈夫、死にゃあしないって。いきなり犬が泡吹いて倒れたら大騒ぎになるだろ。 そうなりゃあの家族は大変だ。やつらをこらしめてやるんだ」
瞬「……でも」
恭一「おい瞬! 死んだシロの気持ち考えて みろよ。シロはヤツらに殺されたんだぞ? お前のシロへの思いはその程度だったのか?」
舜の背中を乱暴に叩く恭一。
興奮した様子で、手の中のホウ酸ダンゴをギュッと握り締める瞬。
◯金木家・庭
塀から顔をだして、庭を見ている瞬。
庭には新しい犬小屋とビーグル犬のジョン。
ジョンの前のエサいれにはホウ酸ダンゴが入っている。
ジョンがホウ酸ダンゴを食べ始める。
瞬「……」
恭一の声(回想)「大丈夫、死にゃあしないさ」
ジョンが吠え始める。
ジョンが倒れて、泡を吹き始める。
鳴き声がだんだん弱まっていく。
その様子を真剣な表情で見つめる瞬。
◯フラッシュ・道
『拾ってください』とかかれたダンボールにシロが入っている。
弱々しい鳴き声。
◯金木家・庭
回想のシロの鳴き声とジョンの鳴き声が重なる。
ジョンを見つめる瞬の呼吸が荒くなる。
塀から顔を引っ込める瞬。
金木家の庭に侵入して、玄関に向かう。
玄関のチャイムを何度も鳴らす瞬。
庭のジョンを見ると、虫の息。
瞬「……っ!」
ドアを乱暴に手で叩く瞬。
瞬「(必死に)だれか! だれか!」
ジョンに駆けよる瞬。
瞬の顔は涙でぐちゃぐちゃ。
瞬「死ぬな! 死ぬなシロ!」
ジョンを抱いて走りだす舜
/了(20枚)
課題:復讐
目的:復讐する動機は? 視聴者に納得できる動機づけを
なんかぼくがかく話っていつも同じっていうか、
ダメな意味でパターンがあるような気がしてきました。
今回のお気に入りは『ペット禁止』のマンションの看板ですね。
序盤に、金木家でシロとのふれあいを書いてもよかったですね。ただ見てるだけなので、本当にシロを好きだったか分かりにくいかも。
タイトルが気に入ってない。
5/3追記:タイトルを発表時のものに変更しました
2016/4/25引導
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます